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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
27/99

Go over 100%! ―100%を超えろ!―

 ともあれ、優佳の言う通り、AIカーはえげつなくも、妨害や巻き込みクラッシュなんでもござれで徹底的にプレーヤーを打ち負かそうとする。

 ミスがない走りとえげつない妨害の組み合わせに泣かされたシムレーサーは数知れず。

「こんな初っ端からリタイアをするようでは、率直に言って、心配です」

 ソキョンは苦笑交じりに言い。それを優佳が通訳する。龍一は気まずいばかりだ。

 これがプライベートならご愛嬌で笑って誤魔化せるが。プロとしての活動の第一歩なのだ。

 はっ、と今になってそれに気付いて。自分の甘さを強く感じ、恥ずかしくなってくる。

「……。そうですね、もう一度お願いします」

 言われて龍一はレースをリスタートさせた。フィチも同じようにポーズからリスタートさせた。

 やはりスタートダッシュで先行された。

(慌てるな慌てるな)

 さっきみたいに無理に仕掛けず、今度はじっくり追走し、じっくり機会をうかがう。

 さすがに2周目でクラッシュリタイアという無様なことはなく、淡々と周回をこなしてゆき。ソキョンや優佳らはじっとその様を見守る。

 が、しかし。

 9周目の連続S字区間の入り口。ブレーキング。

「!!」

 龍一は咄嗟にフルブレーキを掛ける。あろうことか、AIカーは必要以上に減速し、追突させようとするではないか。

 どん。

 という鈍い音がした。フロントノーズから追突し、空力をとらえるフロントスポイラーが破損してしまった。

 AIカーは、ざまあ見ろと言わんがばかりに、何事もなくそのまま走り去ってゆく。思わず手がポーズボタンに行きそうになる。

(くそ!)

「ポーズせずにレースを続行してください!」

 ソキョンは咄嗟に言い、それを優佳が訳す。

(そうか、オレはプロに挑戦してるんだ)

 プライベートならともかく、これはプロになるための挑戦なのだ。安易なやり直しは許されない。

 イライラを禁じ得ないが、レースを続行し。ピットに入れば。マシンのフロントノーズを交換する場面が映し出された。雨の中メカニックは必死に作業をこなす。CGながら迫真の映像だ。その間にもAIカーは難なく走り、差を広げる。

(焦るなよ、焦るなよ)

 龍一は自分に言い聞かせる。

 作業が終わり、コースイン。

 短いコースだ。作業中にAIカーは2周先行したので、龍一は2週遅れだ。それでもレースを続行する。

 ソキョンらは顔を見合わせて微笑み合った。

 フィチも自分のレースをこなしながら様子を伺い微笑む。

「あ、そうか……!」

 何か閃いて、龍一は自分の思ったことを言えば。

「そうです! よく気付きましたね」


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