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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
26/99

Go over 100%! ―100%を超えろ!―

 まったく隙を見せず、どこで仕掛けて抜くかという、とっさの判断が出来ないでいた。

(ここは無理せず、機会をうかがうしかないか)

 45週の長丁場だ。

 だが龍一は仕掛ける。

 第1コーナーで食らいつき、第2の右直角コーナーでインをうかがう。

「だめ、無理しないで!」

 ソキョンは思わず韓国語で口走る。フィチは自分のレースに専念し、通訳どころではない。他のスタッフも日本語はだめだった。だから龍一には意味は通じなかった。

 AIカーはコーナー入り口で減速し、龍一は咄嗟にインに飛び込み。連続S字入り口で頭ひとつ抜けだそうとするが。

「!!」

 急にマシンはオーバーステアを出してスピンしようとする。ミスった、のではない。AIカーが相手のリアを小突いたのだ。

 小突かれバランスを崩した龍一のマシンはスピンし。その間にAIカーに抜かれて先行され。

 さらに運の悪い事に、スピンの勢いが強く、そのままフェンスに激突し。破片はバラバラに飛び散る。

 画面に「Fatal damage!」(致命的な損傷)の表示が出る。クラッシュでリタイヤということだった。

「STOP!」

 ソキョンは英語で言い。フィチもハンドルのポーズボタンを押す。龍一はリタイヤで、リセットを余儀なくされる。

「……」

 龍一は気まずそうに黙っている。

 というとき、ビデオチャットに新たに入った人がいる。ショートカットで眼鏡をかけたOL風の女性だった。

「遅れてすいません。江洲葉優佳です」

 本来なら最初からビデオチャットに参加するはずだったが、別件の仕事が残っており。それをどうにか終わらせて、やっとビデオチャットに入れた、入れたのだが……。

 なんだか様子がただならぬ感じなのを察して、黙り込んでしまう。彼女のパソコンのディスプレイには、双方の様子が映し出されているが。チャットに入ると同時に龍一らしきマシンがクラッシュリタイアしてしまっているではないか。

 男性スタッフが優佳に事情を話す。彼女も韓国語で返す。

 龍一は気まずそうに右手を頭に乗せて、ノートパソコンに向け、

「すいません……」

 と謝罪の言葉を口にした。意味は解らなかったが、状況から察するに無理をするなとかだったのだろう。

「あー……。AIはなんでもやっちゃいますからねえ」

 優佳はぽそっとつぶやく。それから龍一は優佳に気付き。互いに挨拶をする。優佳はしっかりした真面目そうなな第一印象を受け、いい意味で龍一より年上に感じられ。これなら困ったときも頼れそうと思えた。

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