Go over 100%! ―100%を超えろ!―
これを自分も着るのだ。本戦に出られれば、の話だが。
龍一自身は、いつものTシャツでなく、それなりの装いはした方がいいかなと、黒いポロシャツを着ていた。
フィチをはじめとするウィングタイガーの面々は、ディスプレイ越しに笑顔をこちらに向けている。
男性の方はいたって普通の装いだが、女性は、背はアジアの女性としては高めで、背中まで伸ばしたストレートヘアを金髪に染め。さながらK-POPアイドル然とした溌溂さも醸し出していた、
「처음 뵙겠습니다.안녕하세요(チュオンぺッケスミダ。アンニョンハセヨ)」(はじめまして。おはようございます)
女性が先に口を開き。龍一も、慌てて、
「あ、アンニョンハセヨ」
と答えた。フィチは微笑み。
「はじめまして、おはようございますって言ってるよ」
と言おうと思ったら。女性が口を開くのが早く。
「水原龍一さん。はじめまして。オーナー兼チーム監督のチョ・ソキョン(曺小絹)です」
と、笑顔をより明るくして、日本語で言った。
(あれ、上の人女の人だったっけ?)
メールをよく読んでいるようで読んでなかったことがわかって少し恥ずかしくなる。
ぱっと見自分と変わらないくらいの年齢の印象だが、実はアラサーなのかもと、少し(?)失礼なことを考えてしまった。
先を越されたフィチは苦笑しつつ頷く。
「あ、あー、えーと、カムサハムニダ」
母国語の日本語さえ咄嗟に出せそうもない感じだから。外国語はなおさら咄嗟に出ず。そう言うのがやっとだった。
ソキョンはそれからフィチに何か言う。
「まだ日本語は完全に出来ないから、ここからは僕が通訳してだって」
「う、うん。いいよ」
それから、他の二名の男性スタッフも自己紹介をし、フィチがこれを訳し。龍一は無理をせず日本語で挨拶を返し、これをまたフィチが訳した。
「突然の話なのに、決心をしてくださり、ありがとうございます。私たちチームウィングタイガーは水原龍一さんを歓迎します」
「ああ、いえ。こちらこそ、ありがとうございます。がんばります。……ところで」
「はい?」
「皆さんがいるのは、どこですか?」
「ここはチームの拠点です。ビルの一室を借りて活動しています。コロナ禍でなければ、このチーム拠点にあなたをお招きしたかったのですが」
ソキョンは残念そうな面持ちで言い、それをフィチが訳す。
AVP Gamingがメインスポンサーなだけあって、機器は全てAVP Gaming製なのは言うまでもない。
ここはオフィスと練習場兼用で、ミーティングや必要な事務処理や手続きもしているという。




