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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
19/99

Battle against myself ―自分との戦い―

 ビスケットをつまみつつ、ぽそっとつぶやく。それでも、前半のほぼノーミス状態は唸らされるものだった。

(今度の試合で、このふたりとやりあわなきゃいけないんだなあ)

 いや、それに加えて世界中の強豪たちと試合をしなければいけない。いかにタイム表でトップ5に入れているフィチでも、身震いするものを禁じ得なかった。

 タイムトライアルでいいタイムを出せたからといって、スプリントレースで勝てるとは限らない。

 さてワールドレコード更新だが。

「Oh」

 ゴールラインを抜け、赤いタイム表示を見て。ヴァイオレットガールはため息交じりに、ハンドルのポーズボタンを押し。タイムトライアルを終了し、メニュー画面に戻った。

 時を同じくして、レインボー・アイリーンも、

「Dam」

 とつぶやいて、タイムトライアルを終了し、メニュー画面に戻った。

「今日もだめだったか」

「そうだね。なかなか難しいね」

 龍一とフィチはボイスチャットで更新ならなかったのをやや残念がった。引き離されるのは悔しいが、その一方で、やるか? と期待する、相反する気持ちがあった。

 なにより、フィチは日ごろ付き合いがあるから当然ではあるが、龍一も内心親しみを覚えていた。自分の書き込みこそほとんどしないが、フィチのみならずヴァイオレットガールとレインボー・アイリーンのSNSを見るのは楽しみのひとつだった。

 レインボー・アイリーンは思わずあくびをした。ニューヨークはまだ朝の5時前だ。寝付けないから気まぐれに始めたのだが。レコード更新ならず、気が抜け睡魔に襲われたようだ。

「あら、みっともない」

 自分に苦笑しつつ。

「観てくれてありがとう。じゃあね」

 と、愛嬌ある笑顔を向け手短に挨拶をして、ライブ配信を切った。くるくるマークが表示されて。龍一とフィチもブラウザを閉じた。

 もう一方のヴァイオレットガールといえば。

「今日もだめだったわ」

 と少し悔しそうに頬を膨らませていたが。すぐに愛嬌たっぷりの笑顔になって。

「これから勉強するの。頑張って海洋学者になるわ」

 と言い。フィチが通訳する。

「まったく、すごいコだなあ」

 ヴァイオレットガールはプロゲーマー、もといプロシムレーサーでもあるが。同時に学生でもあり。海洋学者の夢も持っていた。

 両立は大変そうだが。充実しているのは、その笑顔を見てわかった。

「世界は広いというが、すげえヤツがいるもんだ」

 もう感心させられっぱなしだった。

「じゃあね!」

 と、ヴァイオレットガールもライブ配信を切り。くるくるマークが表示され。ブラウザを閉じた。

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