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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
10/99

Battle against myself ―自分との戦い―

 シムリグに身を預けた。

 成り行きとはいえ、気晴らしの外出も出来て、少なくなったビスケットの補充も出来た。

 シムリグ用で室内用のレーシングシューズを履き、レーシンググローブも嵌めて、気持ちも新たに、

「さあ、やるか!」

 と、Forza Eのタイムトライアルモードを再開し、我がゴーストを追う。

「1分30秒の壁も越えられたら」

 ディオゲネスのワールドレコードはヴァイオレットガールの出したタイムだが。彼女もまた、同じように1分30秒の壁を越えようとしている。

 SNSでは、タイムトライアルにいそしむ様子を配信し、アップロードしているが。なかなか自分にも勝てず。やむなく諦めて。

「Oh my god!」

 と、肩をすくめる仕草をして、観る者に色んな意味での笑いを誘った。が、それで本当に諦めるわけでもなく。

「次こそやるよ!」

 と、カメラ目線で愛嬌ある笑顔で言って。配信を締めるのであった。

(彼女は寝てるのか、まだプレイしてる様子はない。今のうちに更新できて、驚かせることが出来たらいいな)

 再開する前に記録表を見たが、まだ更新されていない。チャンス! とばかりに、ディオゲネスのコースを攻めた。

 コースレイアウトはシンプルで、Forza Eの電動マシンも扱いやすく最高速も控え目。だからこそ、突き詰めるほどに難しくなってくる。

 鋭いモーター音が耳を突くのが心地いい。ディスプレイの中のヴァーチャルマシンと、シムリグを通じてリンクする。

 ちなみに、ボイスチャットは切ったまま。集中したいから。それでもヘッドセットをするのは、自宅とは言え音が漏れて母に迷惑を掛けたくないから。

 モーター音はエンジン音に比べて静かとはいえ、集中していると、目に見えない針金で耳を突くかのごとく耳を貫いてきて、ハートにいたり、気持ちが昂る。やっぱり、何かしらの音がある方が気分も上がるというものだ。

「……」

 無言。集中。

 ちらつくゴースト。

 ディスプレイの中の街の景色は吹き飛ぶように流れてゆく。

 右直角の最終コーナー、ちらつくゴーストより遅めのブレーキングはせず、基本通りの早めのブレーキング。ゴーストに引き摺られて下手な遅めのブレーキはかえってタイムロスになる。

 コーナーを抜け、立ち上がり、フルスロットル。モーター音も甲高くなる。ゴーストは見えない。

(どうだ!)

 ゴールラインを越えれば、タイムは緑色の表示。しかし。

「だめだ」

 漏れる声。

 タイムは、1:30.760。

 わずかコンマ002秒の更新。順位も変わらず、もちろん30秒の壁越えもならなかった。

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