飛蝶、萌ゆ?
ざわ……ざわ……。
群衆の大挙する、百貨店の催事場――。
飛蝶は民間人に紛れ、そこにいた。
なぜか? そんな野暮なことを聞く者はない。
彼女の正体は『量産型アンドロイド【諜報・暗殺型Sinobi】』。この場へも使命を帯び、参上した。
彼女の目的はただ一つ。
目的の物を入手し、無事に主へと送り届ける事。
その使命を胸に抱き――決戦の場へ!
「それでは! 本日の目玉商品【ゴデバの凄腕ショコラティエ厳選・チョコレートの宝石箱】販売開始とさせていただきます! なお、数量は先着二十名様とさせていただいて――」
店員のアナウンスが流れると同時に、群衆が目的の店舗へと殺到する!
その勢いや象の群れが如く、見るものを圧倒する!
それもその筈だろう。
ゴデバの限定チョコレートには、魔法がかかっているという。
技術が発達している現代において、何を幼稚なと言う者も多いだろう。
だが。
願いを叶えたい女性たちには、正に宝石箱の如き代物なのだ!
十秒もかからず、先頭にいた女性が一箱目を入手する。
まずいな。
飛蝶は焦りを感じていた。このままでは、自分の番が来る前に売り切れる。
相手は素人だからとなめ切っていた。
普段任務ばかりで世俗に疎い彼女には『開店待ち』という概念はなかったのである。
とんっ――。
床を蹴り、宙へ舞う。
その姿、まさに『飛蝶』!
ふわりと舞う姿に、刹那誰しもが目を奪われた。
くるりと体をひねり――。
弾ッ――!
勢いよく天井を蹴る!
シュッ!
会計に金を投げると、呆気に取られた店員の手から品物をかすめ取る!
そして、飛蝶は会場から疾風の如く走り去る。
「な、何……?」
後の者は、あっけに取られるのみであった。
その後。
彼女たちの主の机には、箱が置かれていた。
それを見て、主は呟く。
「生きて、帰れよ」
自小説のセルフパロディ?です。
如何屋サイと様の掌編祭投稿の為に書き下ろしました。