ルート分岐の可能性その1
F-13という型番を見て、何を思い浮かべるでしょうか?
もしかしたら、本作「令和時獄変」がいきなりB-29が東京を空襲してくるという話ですから、写真偵察機型のB-29と思い当たるかもしれません。実際この写真偵察機が、このルートの鍵を握っています。
東京空襲を目的とするミーティングハウス2号作戦が、5機しか戻らなかったという異次元の失敗をした後、米軍はどう対応するか。その回答として、とにもかくにも情報収集に当たるというのは一般的かと思われます。
その情報収集の一環として、写真偵察機型のB-29を飛ばし、東京上空および後に異変が確認される硫黄島上空、可能であればそれ以外の日本上空を空撮させようとすると考えられます。低高度爆撃が大失敗し、異様なほどの損害が出た以上、この任務に志願する者は相当な命知らずとなりそうですが、高度1万メートルから侵入する分にはまだ大丈夫かも、と考えるかもしれません(航空自衛隊相手では全然大丈夫ではありませんが)。
早期に連合国に令和日本の存在を伝達するには、この写真偵察機に日本を撮影してもらい、帰ってもらう必要があります。無論、写真偵察機がすぐ飛んでくるとは限りませんので(割と早く飛来すると思いますが)、それまで待たなければなりません。
その間にまた爆撃されたらどうするとか、なかなかリスキーです。流石に原子爆弾はまだ開発されておりませんので、偵察機だと思ったら原子爆弾を投下してきた、ということはないのが救いでしょうか?
写真偵察機らしき機体が飛来したら(単機が高高度侵入するので爆撃目的の機と多分区別できます)、機銃の届かない程度の距離にF-15やF-2を配置してガッチリ囲み、下手に動けないよう警戒しつつ、発光信号を用いるなどして任務継続を指示しましょう。翼に星の在日米軍機の方が、母国の新兵器? と勘違いしてくそうなので、この任務には適任かもしれません。
そうして写真偵察機が帰還すると、大急ぎで写真の現像が行われ、爆撃隊司令部が唖然とするでしょう。
何かの間違いではないか? 写真機に故障があったのではないか? そうした判断から2度、3度と偵察任務が行われるでしょうが、やはり東京があるはずの場所にとんでもない大都会(今の東京ですが)があって、流石にここまで来ると誰もが現状を認めざるを得なくなりそうです。
ともかく大事なのは、「正規の任務を遂行した結果」として、日本本土の異変に気付くという点です。他者がどれだけそれらしい情報を送ってきても、特に戦時中は謀略で片付けられてしまいがちですが、部下が任務を遂行した結果は信じないといけません。
情報伝達の速度などを考えますと、大統領の下に正確な情報が届き、判断が可能となるまで、最短1週間ほど必要と思われます。
その間にも、商船を狙った潜水艦が撃沈される、爆撃隊がまたも全滅する、第58任務部隊が誘導弾攻撃を受けて撤退する、といった当時の米軍にとって理解不能な損害が続出することも予想されますが、これも日本本土に確認された異変と関連付けて考えることは可能でしょう。
そうした時期を見計らい、混乱するマリアナ諸島の基地などに航空機(在日米軍機がよさそうです)を送るなどします。本作の2、3章では高リスク過ぎるとして否定されたやり方ですが、既にこの時代の米軍の認識が大幅に変更された状態ですので、こちらのルートであれば看過するべきリスクとなる可能性が高いと言えます。
そしてようやく、連合国側に令和日本が突然やってきてしまったことが伝わる……というのが本ルートです。
実は第8話で早急な反撃が進言され、自衛隊がマリアナ諸島の航空基地の破壊へと迅速に動いた結果、このルートは消滅してしまいました。F-2の活躍によって航空基地が使用不能となってしまい、写真偵察機を飛ばすこともできなくなっていたのです。
せめて硫黄島の偵察を……となるかもしれません。ルメイを乗せたC-47が離発着した点からして、P-38を改造した偵察機(サン・テグジュペリが乗っていたようなのです)で硫黄島で何があったかを調べようとするかもしれませんが、突然の攻撃で爆撃隊の司令部も吹き飛んでいます。しかも硫黄島はマリアナ諸島への反撃、それから後の「ピース・メイカー」作戦の拠点となります。爆撃されたらたまらないので、飛んできた機体は全て撃墜してしまうでしょう。第58任務部隊も似たような理由で追い払われています。
ただ突然の爆撃を受けた直後であり、早急にマリアナ諸島の航空基地の無力化が求められる状況なのも事実です。
その上、特異的時空間災害と東京空襲で日本国中が大混乱に陥っており、対処すべき課題が山積みとなっています。そうした中で、写真偵察機の日本本土への飛来を待つという、再度の空襲の懸念に国民を脅えさせる選択が、どれほど取り得るかというと……かなり怪しいと考えられます。そもそも事態発生から12時間以内くらいの間に、この案を誰かが思い付き提言する可能性自体が、相当に低いと見積もられそうです。
あり得るかもしれない流れとしては……憲法だの専守防衛だのといた議論で時間を無意味に潰していたら、写真偵察機が飛来したのでなし崩し的に偵察させたというものでしょうか?
とはいえ当然ながら、連合国側が令和日本の存在を認識したとしても、その先の保障はある訳ではありません。
令和日本が昭和20年の世界の石油生産の半分ほどを、また凄まじい量の石炭、金属資源、食糧等を必要とする事実は変わりません。突然の空襲によって命を奪われた日本国民が大勢いるという事実も変わりません。和平が成立しても国家として生存不能であれば意味がありませんので、恐らく対米和平条件に関しても本作2、3章の内容とほぼ変わらないでしょう。
突然首都を爆撃して大勢の命を奪った米国のため、日本国民が困窮、下手すると飢餓に耐えねばならぬ理由などありません。昭和20年のそれでは全く対処不能の軍事力を有している以上、"アメリカ占領"計画は確実に政府内で持ち上がり、かつ国民もそれを支持するという構図は容易に完成してしまいます。
一方でホワイトハウスにしても、いきなり神話生物が運転する黒塗りの高級車に追突してしまったようなものですが、すぐに和平条件を呑めるかというと、これまた大変難しそうです。何せ勝利が目前の状況で、しかも連合国の盟主ですから。
もっとも本当にやばい連中を爆撃してしまったという認識だけはしそうです。令和日本の存在が米国のどの辺りまで周知されたかにもよりますが、作戦の見直しを急いだり、少しでも令和日本に関する情報を収集しようとして大ポカをやったり、とにかく時間稼ぎに終始したりはするでしょう(資源面での不安を見抜いて敢えてやるかもしれません)。
無論、ここで国内の石油消費等を回すなど我慢してでも、令和日本の懐柔を図る……というルートもない訳でもなく、かつそれは空前の利益を米国にも齎すでしょうが、そこまでの巨大な投資を行い得るメンタリティは、特に国内世論を納得させる等の面でやはり困難極まりないと言えるでしょう。
そしてその辺りが上手くかみ合わないと……硫黄島で化学兵器が使用されたなどとは言い出したり、日本と宇宙人が手を組んだと思い込んだりはしなくなるでしょうが、結局のところ4章以降の流れとあまり大きな差が出ないのかもしれません。