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サラチア王国物語集

そのファイル、部外秘につき

作者: 天青

やあやあ皆さん、こんにちは?それともこんばんはかな?どうも、語り部だよ。名前はまだないよ。今作は、筆者が「ソラとカーレスの二人組」を書けと神様に言付(ことづ)かったそうなんだ。ただ六人に数字当てはめて賽子(さいころ)振っただけだけどね。え、何?初っぱなからメタいって?言いっこなしだよ。あ、そうそう、今回は…というか今回も、僕が語り部を務める訳じゃないよ。それなら語り部って名乗るなって?なら、新しい名前をおくれよ。まあそれはともかく、実は新魔法を開発したんだ。この魔法を使えば、その人の目線で記憶を見ることができるよ。ま、つまり筆者が一人称の小説を書きたくなったってことだけど。ついでに色彩描写の練習もしたいらしいよ。え、メタいって?うーん、今更だよね。今回はソラの視点に入ってもらうよ。筆者が一番書きやすいんだってさ。え、メタ(ry…また省略されたね。まあいいや、いくよ!時空魔法、スクロース!さあ、下へどうぞ。あ、ちなみにスクロースって砂糖の一種なんだよ。



まずいな、遅刻した。今私は緋色の絨毯が敷かれた寮の廊下を全力で走って…いや、速歩きしていた。走ることは禁止されてるけど、速歩きは禁止されてないし。競歩のルール的にも、両足が同時に浮かなければいいらしいし。うん、セーフセーフ。ちなみに遅刻したのは、課題が終わらなかったせいである。非常に申し訳ない。階段を、リズムよく駆け下る…いや、速歩きで下りる。それにしても。私、カーレスに呼び出される用事なんかあっただろうか。机の上に、「第三談話室に16時!」としか書いていない紙を見つけたときは果たし状かと思って思わず愛用の刀に手を掛けてしまったけども。裏にカーレス、とあったから呼んだのはカーレスなんだろうな。流石にカーレスは決闘したい訳じゃないだろうから、刀は短刀しか持っていない。まあ最も、敵は何処にいるか分かったもんじゃないから短刀でも十分戦えるけどな。一応決闘の可能性も捨ててないし。そんな訳で、今の私は白の胴着に瓶覗(かめのぞき)の袴の剣術スタイルだ。普段の服装では、懐に短刀が入れられないんでね。本来は袴は濃紺らしいが、別に試合に出るわけでなし、構わないだろう。ちなみに瓶覗というのは、やや緑がかった薄い藍色のことである。…誰に説明してんだろうな。そこまで思考をつらつら並べたところで、(ようや)くセピア色の扉に到着する。扉を開けると、予想通りカーレスがいた。

「悪い、待たせた!」

開口一番、謝罪を述べる。カーレスは此方側を向いたソファーに座っており、机で勉強しているようだった。サフランイエローのミニワンピースを着ているあたり、決闘ではなさそうだ。よかったよかった。カーレスが此方を向き、ぱっと破顔する。近寄ると、カーレスがしているのは先程私が提出したものと同じ課題であることが分かった。提出期限まであと2時間である。しかし、カーレスは課題を手早く横に片付けてしまった。

「ええよええよ!なら始めんで…第一回!ルーチェのファイル見よう会議開始や!」

「…はい?」

「あの皆が見せてくれへんファイル、見たくない?」

「ああ…あれかぁ…」

カーレスの言うファイルには、私も心当たりがある。ルーチェが書いたイラストをまとめた水色のファイルのことだろう。ルーチェは誰にも見せていない訳ではなく、カーレスと私を除いた三人…ハル、ウィンディ、クロスはよく見せてもらっている。その度に一同は顔を手で覆い、お互いの肩を叩き合っているのだからなかなかに異様である。あれがきっと「尊い」という感情なのだろう。私にはよく分からないが、よく端末を見ては「尊い…!」と言っているカーレスは、その感情も分かるらしい。

「私やって大体の尊さは分かるし、偏見もないし!なんで見してくれへんねんって話や!」

「あーおう、まあ、せやな。」

とは言ったものの。

「私、あれにそんな興味ないんやけどなぁ。」

別に人の秘密をわざわざ暴きに行く趣味はない。ああでも、見るなって言われると見たくなるって心理現象あったな…えーっと、カリギュラ効果だっけ。そこまで思考を回した後、カーレスに視線を戻す。思考があっちゃこっちゃへ飛ぶのは悪い癖だ。カーレスは私の言葉に少し不服そうだったが、暫くするとその綺麗な目がきらきらと輝きだした。何かろくでもないことを思いついたらしい。この目も瓶覗色だな、そういえば。きらきらした目のまま、カーレスが口を開く。

「皆に悪戯(いたずら)できるって言っても?」

「オーケー分かった何をすればいい?」

我ながら見事な手のひら返しであった。


第二回の会議は、第一生物器具庫で行われることになった。私も第二回があるとは思っていなかったが、第一回の後半で、カーレスが課題を終わらせていないことを二人同時に思い出したのだ。残り時間は一時間を切っていた。顔を青くしたカーレスが課題を終わらせたのが締め切り七分前、部屋を飛び出したのが締め切り六分三十秒前。廊下を全速力で速歩きして提出したのが締め切り五秒前であった。ダルダ学園はなにせ広い。とてつもなく広い。ここまで広いことを恨んだことも数知れずだ。しかし、広くていいこともある。例えば、生物器具庫が二つあることだ。第一器具庫には様々な…本当に様々な生物が居て、第二器具庫にはきらきらと輝く実験用具が置いてある。一応数少ない研究者なのでどちらもほぼ自分の部屋のようなものになっている。だから私はどちらで会議をしてもよかったのだが、第二器具庫だとカーレスがガラス器具に見とれてしまって会議にならないので第一器具庫を指定した。土魔法使いの彼女のことだ、作ろうと思えば自分で作れるだろうに。まあそんな訳で、私は器具庫でハイトの頭をぽよぽよしながらカーレスを待っていた。白イルカの頭にはメロンと呼ばれる音波発信・受信装置がある。メロンの中身は脂肪なので、触り心地がいいのだ。しかし、それを踏まえてもクロスは触りすぎだと思う。クロスの使い魔もいいと思うけどな、羽根ふかふかだし。そんな思考を中断させるかのように、扉がスパーン!と開いた。

「ごめん、待たせた!」

「ああ、ええけど。課題やったか?」

「やった!」

前回とは立場が逆である。ああ、でも私も課題は終わらせたからまるっきり逆な訳でもないか。今日のカーレスはピーチ色のシャツで、下は(あんず)色のスカートを穿いていた。ピーチ、というと桃色を思い出すけれど、実はピーチ色はごく薄い橙色を指す。最初に知った時は少し驚いたっけな。

「はい、じゃあ第二回…なんやっけ?」

「ルーチェのファイル見よう会議!」

「を、始めまーす。」

こうして、第二回…えーと、ルーチェのファイル見よう会議が始まった。


その後も会議は続き、結局四回行われた。そして、ついに今日が決行の日となっている。まあとはいえど、決行時間までは暇なのでハルで遊ぶことにした。今日は休日なので、ハルと私を含めた六人がルーチェの部屋でくつろいでいる。よく考えたら…いや、よく考えなくても王女様の部屋でくつろぐのなんか言語道断だろうけど、気にしたら負けだ。カーレスなんか、無断で窓を開けて「やっほーっ!」と叫んでいる。それを横目にソファーに座るハルの隣に座り込み、頬をつつく。つついたり、時折引っ張ったり。ハルの頬の感触はハイトのメロンに似ている。私はハイトのメロンが好きだからハルの頬を弄るのが好きなのか、ハルの頬を弄るのが好きだからハイトのメロンも好きなのか?どっちなんだろうな。ふとハルの方を見ると、ハルが苺色の目を細めて此方(こちら)を見ていた。じとーーーーっという音が聞こえてきそうだ。ハルは目で感情を表すのが上手い。こうやって細められると「不快です」という感情が全面に出てくるし、見開かれると怖い。私が頬を弄っている時の反応は大体その二択である。もっとこうニコニコしようよ。なあ?そんな思いをこめてほっぺたごとハルの口の端を無理矢理持ち上げてみたけど、ハルの目はそのままだった。んー、残念。そうこうしているうちに、鳩時計から飛び出してきた木彫りの鳩が14時を告げる。ぽっぽー、ぽっぽー、ぽっぽー…鳩が鳴き止んだら、作戦開始だ。

「あ、せや研究行かんといけん。ハル達も来る?」

まず、親友達を部屋の外に出さねばならない。彼女らが生物第二器具庫の美しい器具を好いているのは知っていた。

「あ、じゃあ私も行く!」

「私も!」

「私もー」

計画通り、全員が釣れた。しかし、それだけではまだ甘い。姉様は隔離しておかないと、少々不安が残るからだ。その辺も、きっちり根回し済みである。

「あ、せや。姉様私の短刀見たいって言っとったやろ?ハイトに預けといたから見てええで。今は多分中庭にいるわ。」

「マジで!?行ってくる!」

姉様はなかなかに攻撃的なので、短刀には興味があるだろうなと思っていた。ついでにハイトも付ければもう完璧だ。悪いな、ハイト。ちょっと姉様と遊んでやってくれ。代わりにこの任務、成功させるからな…!

「あ、ファイルどうしよ…」

「カーレスも一緒に来るし、置いてったら?」

「せやな。」

味方のふりをして誘導する。こうして、ルーチェの部屋には誰も居なくなった。…一匹の侵入者を除いては。


わいわいと話をしながら、生物器具庫へ向かう。第一器具庫と第二器具庫は隣あっており、外からは見分けがつかない。私が覚えているので問題ないが。

「ソラー、道具のある方どっちやっけ?」

「ああ、そっちやで。」

案の定質問してきたウィンディに、私は「第一器具庫」を指差した。ウィンディ、ルーチェ、ハルが中に入る。中にはあらかじめ牧草をばらまいてあった。皆が入った瞬間、私は鋭く

「GO!」

と叫ぶ。その途端、隠していた羊達が飛び出してきた。

「わー!??」

「なにこれ!?」

うちの羊は、世にも珍しい「待て」ができる羊である。先輩の研究により開発された。頭もよく、人間や物を傷つけることはない。皆が羊に囲まれてわたわたしている隙に、私とカーレスは扉を閉め、カーレスの部屋へ走った。もはや速歩きではない。全力疾走である。カーレスの部屋では、ファイルを咥えたセナが待っていた。

「ようやったな、セナ!」

実はカーレスが窓を開けて叫んでいたのはこの為だった。セナは蛇なので、多少のでこぼこがあれば壁も移動できる。戦闘は苦手でも、隠密は得意だ。ついでに言うならセナは水属性なので、私とも相性がいい。セナにファイルを運んで貰ったのは、少しでも時間を稼ぐためだ。

「よーし、じゃあ早速…わっ!」

「避けろ!」

扉を開けたのは姉様だった。誰かが端末かなにかで連絡したのだろうか。もしくは使い魔を派遣したのかも知れないが…よりにもよって一番厄介な人が来たな…!

「オラァ死ねぇ〜!」

死ね、といいつつ撃ってくるのは気絶させるための魔法である。それでも油断してはいけない。即死魔法より効力が弱いため、連発できるのだ。右、右、左、右…桔梗(ききょう)色の魔法を、一つずつ回避していく。カーレスも回避しているが、ファイルを持っているため辛そうだ。私は普段から姉様に魔法を連発されているため、ファイルがあってもまだ平気かも知れない。

「カーレス!パス!」

「パース!」

ファイルが宙に浮いた、その刹那のことだった。セナが入ってきてからも開けっ放しだった窓から黒い物体が飛び込んで来て、ファイルを(さら)って行ってしまったのだ。

「「は!?」」

「ダーネス、ナイス!」

なるほど、(わし)か。姉様が自分の使い魔とも仲がよかったようで何より…とか言ってる場合じゃねーなこれ!?気絶魔法の強襲は、まだ止まらない。

「ちょ、姉様もういいだろ!?」

「いいや許さん!気絶しろ!」

かくなるうえは…!

「ハイト!ちょっとカーレスの部屋の窓へ来てくれ!」

ハイトに飛び乗れば逃げられるかも知れない。そうして(しばら)くするとハイトは姿を見せたものの、一向にこちらへ来てくれない。あ、もしかして。

「いじけてる!?いじけてるねお前!ちょっと!」

どうやら姉様に売ったのがまずかったようだ。全身から不機嫌ですオーラが溢れている。なら、この手は使えない。回避の合間にどうにかカーレスを見ると、こちらもセナを探しているようだった。しかしセナはとっくに逃げてしまったらしい。まあ戦闘向きじゃないしな。

「よそ見してる暇あるんかオラァ!」

「あ。」

目の前に、魔法。


「…ん?」

「あ、起きた?」

「ああ、おはよ…」

目を開けると、アップルグリーンの目が此方を覗き込んでいた。ウィンディだ。どうやら私は気絶していたらしい。…そりゃ気絶魔法喰らったからな、当たり前か。

「カーレスも起きたで。」

隣でカーレスを覗き込んでいたハルが報告する。開口一番、カーレスはクロスに文句を言い出した。

「クロス何してくれてんねん!」

「え?気絶魔法ぶつけただけやけど。」

「いやそりゃ知ってるけど!」

カーレス、起きたばっかでも元気やなぁ。あ、そうだ。

「ウィンディ、あの羊達可愛かったろ。」

「ああ、せやね。食べ終わったらすーっと戻っていったわ。頭ええな。」

「もふもふやったなー。」

横からハルも口を挟む。

「それは、お気に召したようで何より。」

「でも、もうあれは止めてな?」

そう言うハルの顔は、目元はそのままに口だけが弧を描いている。これはこれで怖いな。ここでふと自分が寝転がったままなことに気づき、身を起こす。すると、部屋の端、少し遠くにルーチェが立っているのが見えた。ファイルをしっかりと抱えている。

「なぁルーチェ、それの中身なんなん?」

「秘密やで。」

「まあせやろなぁ。」

そんな簡単に知れたら苦労はしない。同じく起き上がったカーレスがルーチェを指差して叫ぶ。

「次こそは絶対見たるからな!」

ああ、これはまた私も付き合わされるパターンだな。カーレスの言葉に言い返す姉様やルーチェ達がわちゃわちゃしだしたのを眺めながら、私は次の作戦を考えるべく思考を回し始めた。

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