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79 組織の企み

以前の担当医師、藤永に案内された部屋で…



 スライド式のドアに、白いシーツが掛けられた簡素な造りのベッド、円形のクッションが乗せられた椅子に、書類が散乱している白い長机。これらは全て病院で見られる物の様だ。ボク達が案内されて来た部屋は、こんな感じの診察室の様な場所だ。


「さて、どこから話そうかな?」


 そして今ボク達に語りかけたコイツが、医師そのものである為、ここが診察室である事を、意識せざるを得ない状況にさせる。『藤永 護』以前ボクの担当医師だった男だ。隣には、ボク達の家に現れた『ミドリ』にそっくりの奈々子が、いつの間に着替えたのか、ナース服姿で立っていた。


 素直な感想を聞かれるなら、迷わずこう答える。『気持ち悪い』


 赤い目のナースが病院にいたら、健康な人でも病気になる。そのレベルの気持ち悪さだ。戦いで勝利出来ないボクは、心の中で奈々子を散々けなす臆病者だった。


「話すとは?何をアンタが話してくれる?ヤボ医者が!」


 いや、ゆうこさん?それヤブ医者では…?


「おや?しばらく会わない内に、随分と乱暴な言葉を使う様になったんだね?ゆうこくんはもっと賢い女性だと思ったんだけどね。」


「あの、そんな話しどうでもいいんですけど、なぜボク達をここへ?」


 ゆうこさんが話し出すと、どうも会話が変な方向に向かっていくので、そこに割り込んでみた。


「いいね。真っ直ぐ私に飛び込んでくるところが気に入ったよ。」


 コイツも大概なアホだ。気持ち悪い。お前の評価などに興味はない。先を話せよ。


「端的に言おう!私の配下になるんだ!勿論、三人でだ!」


「いや、そういう事を端的に言われても困るんですが?理由を聞かないと…。」


 少し苛立ちを感じながらも、奈々子がこっちを見ているみたいなので、臆病風が吹き、尻すぼみな要求になった。


「分かった。正直に言おう。君達が敵になると邪魔なんだよ。その理由もちゃんとある。君達の家にいるだろう?ほら、奈々子と同じのが。アレを連れて来てもらいたいんだよ。アレは私のなんだ。」


 言っている事の意味は直ぐに分かったが、『ミドリ』をどうするのか聞く必要がありそうな気がする。コイツらは、絶対に何かを企んでいるはずだ。自分達の利益にならない事はしないのが人間だ。特にコイツらは。


「断ったら?実際『ミドリ』にはボクの言葉が通じませんので、簡単にはいかないと思いますが?」


「ふぅん、困ったね。ではどうやって受け入れたんだい?『ミドリ』を…、フッ、そう呼んでるのかい?アレはボクのなんだ。勝手に名前をつけられてもねぇ。」


 名前などどうでもいいのだが、カズちゃんが付けた事は言わない方がいいだろう。標的にでもされると厄介だ。そう考えたボクは、嘘でごまかす事にした。


「アイツが勝手に来て居座った。それだけの事ですよ。本人がいたいなら、そうさせておけばいいのじゃないですかね?しかも、物扱いするなんて。」


「何を言っているんだ!アレは私が回収して作ったんだぞ!」


 少し意地悪な言い方がカンに触ったのか、藤永が感情的になり、回収した事をポロリとこぼす。


「回収ですか?拾ったとでも?どう見ても元は人間ですよね?誰なんですかあれは。」


 ボクの言葉に不意をつかれたのか、藤永が明らかに同様した顔を見せている。そんな藤永を見てか、隣にいた奈々子が代わりに語り出した。


「アナタぁ、もういいわよぉ。…、どうせ貴方達はね〜ぇ、従うしかうないのよ〜ぉ。ンヒャハハハ!いいわぁ、教えてあげるぅ。アレは」


「分かった奈々子!お前は下がっていろ。私が組織の指導者だ!私が話すから…。下がっていろ。」


 どうも会話の内容からして、奈々子と藤永はデキているらしい。結婚してる?とは思えないが、そういう仲である事に間違いなさそうだ。あの強敵であった奈々子が、軟弱そうな藤永の言葉に従い、部屋から出て行った。


「悪かった、正直に話すよ。アレは奈々子の双子の妹である『和枝』なんだよ。奈々子が『悪』から貰ってきた『傀儡芽』を改良した物を与えた。『虚無』の空間に連れて行ってね。」


 その言葉にボクは驚いた。この男の口から『虚無』が出てくるとは、思いもしなかった。ボクはそれをどうやって知ったのか尋ねてみたくなった。


「その、『虚無』というのは?どこでそんな事調べたのですか?『傀儡芽』とは?」


 少し白々しく聞こえたかもしれないが、隣にいる洋子さんもゆうこさんも、表情一つ変えないので、多分藤永には、ボクが知っていて聞いている事はバレていないはずだ。


「教える義理はないけど?…まぁいいだろう。奈々子が言う様に、キミ達に選択肢はないのだからね。」


 まるでボク達が絶対に、奈々子に勝てないと分かった様な口ぶりだ。悔しいが、間違ってはいない。しかし、こうもペラペラ喋る男が、組織の指導者とは聞いて呆れる。


 そして更にペラペラと喋ってくれる藤永の話しをまとめるとこうなる。


 母が仕入れた情報通り、ここにはその文献があった。それを藤永が手に入れ、組織をここに築き上げた。そして奈々子を組織に引き入れて(結婚した)、『悪』から貰った『傀儡芽』を死んだ橋本で実験させた。その時のグルが青木医師だ。


 その後橋本の状態の経過をデータ化して、『傀儡芽』の改良にかかる。これには『不死化』の効果があるそうだ。


 改良が終わった『傀儡芽改』を再度橋本に使用。変化が見られなかった為、そそのかされた青木医師が犠牲になる。安定性が無い事が分かり、文献にあった『虚無』に放り込む。

この理由は、『虚無』が稀に変異体を生み出す。と文献に記されていたから試したそうだ。


 これが成功を収めた。そこで藤永が『傀儡芽改』を使用した、変異体を使っての計画を立てた。


 それは、恐ろしい計画に思えた。『傀儡芽改』を使用して『虚無』に送り込むと、不死の変異体になる。いわゆる奈々子がその結果だ。それを『善』と『悪』に仕立て上げ、永遠に使役する。という計画だった。


つまり、死ぬ事がない為、『種子』を植えつければ、永遠に死なない『善』と『悪』の出来上がり!という事だ。能力を自分達の為だけに使い、世界を我が物にしようとする魂胆が見え見えだ。


 これでなぜ奈々子と和枝さんを変異体にしたのか分かった。双子だけがその条件をクリアしているからだ。更に、奈々子が藤永を裏切れない理由もありそうだったが、そこだけは頑なに口を閉ざしていた。付け加えて言えば、『虚無』への転送方法もだ。


 善さんが命を奪われた時の事も聞いた。『絶対服従』がかかっていた奈々子を、藤永が連れ去り、一度命を奪って『傀儡芽改』を与え、『虚無』に送り、変異体として生まれた奈々子が、飢えを満たす為に、善さんの『種子』を体内に取り込んだ。という事らしい。


 そして『虚無』には時間の概念が無いという事。だから時間をかけて育った筈の奈々子が、一瞬にして現れた様に見えたのだ。更に言うと、和枝さんは逆に、中々出て来なかったそうだ。ボクの家に現れた時が、初めて外に出た時らしい。

 カズちゃんと仲が良いのも納得出来た。姿変われど親子なのだ。



「さて、話せる事は話したつもりだよ。キミ達も約束を違えない事を祈ってるよ。裏切ればどうなるか…、分かるよね?」


 ペラペラ喋るとは言ったが、藤永が今言った様に、ボク達はこの情報の為に、『ミドリ』を引き渡す事を条件として、約束させられていたのだ。しかし、収穫はあった。


「もちろんです。しかし、先程も言った様に、話が通じませんので、一週間程お時間を頂ければ…。」


 そう言ってみたが、勿論、引き渡すつもりなどさらさら無い。


「…、まぁいいでしょう。どのみち逃げられはしないのですから。いいですか、覚えておいて下さい、これは私の情が深い証なのです。穏便に済む様にと配慮してあげてるのですからね。」


 そう釘をさしてくる藤永が、スライドドアを開けて、もう出て行けと言わんばかりの態度を示している。


「分かっています。まだ死にたくはないので。では、これで。」


 ボクもそれらしい事を言って、アホ面の藤永の施設を後にした。廃屋辺りまで戻ってきた時、ずっと黙っていた洋子さんが、ボクに尋ねてきた。


「アイツ凄く頭にくる言い方だったけど、稜くん、あんな約束して良かったの?何か考えてるとは思っているけどね〜。ダーリン!」


 最後はわざとらしいイタズラな言い方だったが、ボクを良く理解してくれている洋子さんが、またまた愛おしくなり、抱きしめてしまった。


「ちょっと勘弁してよ〜アンタ達!私にも男紹介してからにしろよ…。」


 いつもの様に呆れて文句を言うゆうこさんだが、さり気なく彼氏募集中をアピールしていた。無視するのも失礼なので、帰ったら寺ッチでも与えておこう。うん!




変異体『ミドリ』を交換条件として、ペラペラ色々聞かせてくれた藤永たが、主人公はどう対処していくのか!?

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