8 労働意欲無き看護師とウソ
4/6 訂正報告。当初、即席で作った為、矛盾が生じておりましたので、洋子の病院就任年数と、主人公の学年を照らし合わせた箇所を訂正致しました。これまで読んで下さった方々、誠に申し訳ございませんでした。
やはりミステリー?というより、サスペンス要素が顔を出してきました(笑
今更ながらキーワード追加であります!
今回は、緩い感じで追ってみましたです!
「え?な〜に行ってるのよ!アハハ、年上からかうなんて、趣味悪いぞ〜。たしか……、二十二だったと思うけど?そこらへん?十七じゃないわよ〜、ハハッ。」
ボクに奢らせた、缶コーヒーを飲みながら笑う看護師さん。名前を聞いたら『松田 洋子』さんというらしい。よく笑う人で、気さくな話し方が硬さを感じさせなくて、とても好感を持てる女性だ。
退院したナミちゃんの話から、こういう会話になっている。ナミちゃん自身の口から聞いた事や、母親が言っていた事。どちらも洋子さんの話と食い違う。
看護師という立場からして、洋子さんがウソを言っているとは思えない。という事は、ナミちゃんと母親がウソをついている?そうなるのか?だとしたら、何の為にウソついたのかが謎だ。お互いメリットは無いと思うが。
「どうしちゃったのよ?おばさん相手じゃ楽しくないの〜?」
またボクは考え込んでしまっていたらしい。悪い癖だ。誰かと話してる時は、ちゃんと相手に集中しないとダメだ。ボクはごまかすように缶コーヒーを傾け、一気に飲み干す。それから笑って、洋子さんに謝りながら、ナミちゃんの事を更に聞き出す。
洋子さんが教えてくれた事で、少しひっかかる事があった。ボクが聞いた内容を整理すると……。
洋子さんが、この病院の看護師になったのは、今から十四年前、ボクがまだ小学二年生の頃だ。そして洋子さんがこの病院で二年目を迎えた年にナミちゃん一回目の入院。半年後、退院予定だったが、そのまま入院。
しばらくして退院したが、それから後は、通院しながら学校に通っていたらしい。
そして今年、病状が悪化して、入院しての闘病生活が始まったらしい。そこに、昨日の治癒能力で完全に治したナミちゃんが、今朝、医師の診察を受け、検査をしたところ、異常無しでめでたく退院。
簡単にまとめると、こんな感じだ。本当の事を話してくれても、問題ないとおもうが?しかし、ボクと同じ歳だとは思わなかった。しかも、ボクの横ではしゃいでいる洋子さんが、四十だなんて……。どう見ても、二十代後半か三十ちょいにしか……。
イテテテテテテ!!頬に急に激痛が!!!
「こぉらぁ!今何か私の事、悪く考えてたでしょ〜!もう話してあげないぞ〜!」
絶対にボクはこの人にオモチャにされてる……。
しかも話してあげないというが、先程全て聞いたと思うんだが?他にも何かあるなら聞いておきたい。
ボクは、ごめんなさいのジェスチャーをして見せ、離してくれと目で訴えてみた。目は口ほどに物を言うからね。
少しスネて見せる洋子さん。三十前後ならばストライクゾーンなのだが!歳に合わないスネた仕草が可愛らしい。
やっと解放してくれた洋子さんに、更に拝む仕草で話してくれと頼む。最初の離してくれとは目力で差をつけてみた!つもりだ。どうでもいいが。
「冗談よ!稜くん可愛いから、ちゃんと教えてあげるってば。じゃあ、今夜色々教えてあげるね!」
テヘッと言わんばかりのお茶目な洋子さんの頭に、容赦なくスペシャルチョップをお見舞いする。それほど痛くはないだろうに、大袈裟に頭を押さえて、泣き真似までして見せている。呆れた人だ。
ジト目で洋子さんを見下ろしているところに、背後からパタパタと足音が近づく。
「も〜!またサボってる!探したんだよもぅ……。あれれ?お邪魔だった?」
「イエイエ……。」
そういう関係であれば、この絵図はおかしい……。年上にチョップかまして、威張る若造。頭痛がしてきたので早退したいのだが。
頭を抱え込むボクを他所に、先程来た看護師さんと洋子さんがじゃれ合う様に言い合っている。お暇したいんだが、二人の間に、割って入る言葉が見つからない。
「あー、そっか、奈美恵さんの話ね。彼女良かったよね、アレは奇跡だよ。普通ならあり得ない事だからね〜。あ〜、私ゆうこね、ヨロシク!」
「あ、はい、よろしくお願いします。」
違う!帰るんだ!この二人に関わったら、本当に夜中まで帰してくれなさそうだ!帰る。
「へぇ〜、洋子とはコーヒー飲んで、お話しまでして楽しそうにしてたのに、私が来たら帰るんだ〜、へぇ〜、中々いい度胸してるね、アンタ。あぁ〜ノド乾いた〜!死ぬ〜!」
怖い!小芝居で脅迫されてる……。チャリンチャリン……ガコン!身体が勝手に動いてしまった。ボクには、生まれながらのパシリ病でもあったのか?反射的に身体が動いた。
缶コーヒーで、ご機嫌なゆうこさんと洋子さん。この人達……仕事はいいのだろうか?
さて、色々あったが、収穫もあったし、ヨシとしよう!二度と関わり合いたくない人達だったが、ナミちゃんの事を更に聞けたので、缶コーヒー二本は安くついたと言うものだ。
探し物というのは、探している時は見つからない!というが、本当に見つからないものだ。帰ってから、押入れを散々探しているんだが、アルバムはどこへしまったのか、出てこない。卒業アルバムはあるのだが、それは目的から外れるから違う。もしかして、という気持ちもあり、お世話になった児童保護施設にも連絡して、探してもらったのだが、ボクの荷物は残っていないとの連絡がきた。もう確認する術は残ってないのか?
でも、洋子さんが言っていた、退院後の学校って……。
そこまで考えて、見落としていた事に気付く。この街の事、そこにある病院。ボクはなぜここに来たのか?そう、『ボクを知る人間がいないから』この街に越してきたのだ。通っている病院も、前いた街の病院の医師から紹介された病院だ。ここである仮説が成り立つ。
前に住んでた街の学校で、女の子が病院に運ばれて、何らかの理由でボクみたいに、この街の病院を医師から紹介してもらい、入院した。その後、通院が必要だった為、転校。それがナミちゃん。
少し強引だが、今ある情報からは、こう考えた方が、辻褄が合う。気がする。しかし、どう考えても、ボクにウソをつかなければならない、理由が解らない。本人と話せたらいいのだが、電話もずっと電源が入っていないようだ。
ナミちゃんが悪い事する人間には、到底思えないし、余程の理由があるのかもしれない。一応、無いとは思うが、もしもまたナミちゃんが病院に来たら、連絡を貰える様にと伝えておいた。不本意ながら、電話番号を交換した相手は『洋子さん』だ。
しかし、せっかくボクにも春が訪れたのに、早くも連絡取れずに、捨てられた感がして、地味に辛い。
う〜ん、この後の展開、どうなるのでしょうか?というのは冗談です!ごめんなさい!お試しの読み切りにしようと思っていましたが、私が意地悪な為、主人公に波乱万丈の人生を歩ませる事に……。実は、やっとこれから中盤に突入であります!内緒ですが……。