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77 影の正体

せっかくの新婚旅行も、一時中断の様子。つまらない…



※本日大切な用事で投稿が遅れました事、お詫び致します。ごめんなさい。


※4/13 誤字、段落等の訂正を入れました



「……が分かったの、今からそこに行ってきてくれる?」


 少し不機嫌さを感じる母の電話で、ボク達の新婚旅行は後日延期となりそうだ。


 宿での食事を終えて、夜の繁華街を散歩でもしようかと考えていた時、ボクの携帯に母からの、新たな『文献』の手がかりを掴んだので、今から行けと言う内容で依頼が入った。


 この情報元は、善さんらしく、彼女達が『善』と『悪』になる前に住んでいた『村』に、その文献らしきモノがあったはずだという曖昧なものだった。それと、母の不機嫌の原因だと思われる話しも聞かされた。


 ボク達もずっと心配していた事だが、善さんの死によって『種子』が失われてしまった事に関係している。本来ならば死を迎える前に、次の代の『善』または『悪』を決めて、『種子』の受け継ぎをしなければならないとされている。


 しかし、今回はその受け継ぎが成されていない。そこであの『口伝』が思い出されるのだが、まだどうなるのか分からないと言ったところだ。


 母と善さんの解釈では、受け継ぎの条件である双子ではない者が、『種子』を取り込んだ時、と伝えられているのに対し、今回の善さんの死が、『種子』を失っただけ。という、言い伝えと状況が違っている為に先で何が起こるか分からないという事だ。


 簡単に言うと、『種子』の受け継ぎが行われず、これまでの様に『善』と『悪』が存在する世界とは、違う世界になってしまうという事だ。それが『口伝』により、世の中にどう影響してくるのかが分からないという事だ。


 そこで、今回の依頼が来た。という訳なのだ。母と善さんは、そこにあるかもしれない文献に、その事が書かれていると信じたい様子だった。

 そしてその『村』があった場所というのが、以前ナミちゃんの手がかりを探していた時に、『真咲 和枝』の名前を見つけた、あの廃屋辺り一帯がそうらしい。


 洋子さんにもその内容を伝えて、二人でそこに向かう事にする。


「あんた達、なにいつまでもイチャイチャしてんのよ?さっさと着替えて行くわよ!」


 突然離れの部屋に入ってきて、そう言ったのはゆうこさんだ。イチャイチャというが、二人でお互いを着替えさせていただけだ。仲がいいと言ってほしいものだ。似たようなモノだが。


「な、なんでゆうこがここにいるのよ!?」


 今の状況を邪魔されて怒っているのか、洋子さんが少し強い口調でそう尋ねていた。


「稜くんの母親から先に依頼されてたのよ。あんた達も行くから一緒にって、さっき携帯に連絡があったの。」


 どうやら母は、ボク達に気を使ったのか、先にゆうこさんに依頼していた様だ。


 それならゆうこさん一人でも十分だと思うけど?なぜボク達まで行く必要があるのかなぁ?


 そう考えていたボクの事が、理解出来たのかどうかは分からないが、ゆうこさんが続けてその理由を教えてくれた。


「その様子じゃニュースも見てないのね?最近あの辺りで人が何人も襲われているのよ。パトロールの警官までね。その内二人が死んで、後は重傷らしいわ。それ見て心配したんでしょうね、一人で行くより三人でって、備えあれば憂いなしとか言ってたわよ?」


 新婚旅行に来てまでテレビは見ようとも思わなかったが、まさかこれから行く先で、殺人事件とは物騒な話だ。確かに、能力が使えるこの三人なら、余程のことがない限り大丈夫だ。


 お互いの着せ替えが終わったボク達は、ゆうこさんと共に、宿を後にした。指摘されたのも気にせず、話しを聞きながら洋子さんと着せ替え合っていたボク達を、ゆうこさんが冷ややかな目で見ていたのは言うまでもない。

新婚恐るべし!とか思ったに違いない。



 行く事に不満は無いのだが、オートバイに三人乗りというのは、法律に反していると思う。しかも、ボクがゆうこさんにしがみつくのが嫌だと言う洋子さん。一番後ろに乗ると言うと、危ないからダメだと。


 で、なぜボクは、二人に挟まれて、最後尾の洋子さんと向き合って乗らなければいけないんだ?前が見えなくて怖いんだけど…。


 運転しているゆうこさんも呆れ顔で『どうでもいいから乗ってよ』と諦めた感じの口調でそう言っていた。


 しかし、怖いながらも、洋子さんと向かい合って、抱きしめた状態で移動というのは、とても幸せなのであった。後は、警察官に捕まらない様に祈るだけだ。(良い子は真似しないでね!)


 途中で休む事もなく走り続けるゆうこさん。お陰で思ったより早く着いたのだが、ボクはもう少しあのままでも良かったと未練が残る。ショボンとしていたボクを気づかい、洋子さんが耳元で励ましてくれた。


「帰ったら、またオートバイごっこしようね。ゆうこ抜きで。うふふふ」


 その言葉で元気を取り戻し、無言で激しく首を縦に振る単純なボクがいた。


 そんな緊張感の無いアホなボク達を置いて、ゆうこさんが先に行ってしまった。ボク達は顔を見合わせ、クスクスと笑いながら後を追った。


 相変わらず丈の高い草が多い道無き道を進むと、あの廃屋が見えてきた。その手前で、しゃがみ込んで様子を伺っている感じのゆうこさんを見つけた。ボク達も腰を低くしてその後ろに身を隠す。


「誰かがいる気配は感じないのに、危険な匂いがプンプンするわよ。何かしら?」


 ボク達に気付き、辺りを警戒したまま、そう言ったゆうこさん。ボクには何も感じられないが、後ろでボクの肩に手を置いた洋子さんの手に力が入るのを感じた。洋子さんも何かを感じ取っている様子だ。


 シュッ。 シュッ。 シュシュッ。 シュッ。


 そう考えながら様子を伺っている時、風切り音とも取れる妙な音が聞こえてくる。廃屋の方を注意深く見ているが、音の正体が分からない。

ボクがそうやってキョロキョロしていると、ゆうこさんが小声で話しかけてきた。


「二人共、あそこ…。何か来た。」


 そう言いながら、廃屋の右側の草むらを指差して教えてくれる。よく見ると丈の高い草が音に合わせて揺れているのが分かる。しかし、姿は見えない。


 シュッ。 シュシュッ。 シュッ……。


 急に音が聞こえなくなった。ずっと見ていたが、廃屋の脇にある草むらが揺れて、それっきり草むらはどこも揺れていない。


「稜…くん……うしろ…。」


 緊張で強張った感じの声をかけてくる洋子さん。うしろという言葉に反応して振り向くと、そこに音の正体が立っていた。


「洋子さん!こっちに!」  ガバッ!  シュオッ!


 そう叫ぶと同時に洋子さんを強引にこちらに引き寄せ、その正体めがけて『瞬足』の蹴りを放った。しかしソイツは、瞬間移動でもした様に、二、三メートル程後方に下がっていた。


「ありがとう稜くん!…クッ、動けなかった!」


 洋子さんがお礼と共に、悔しそうにそう言っていた。洋子さん程の戦闘のエキスパートが動けないなんて、余程の強敵だと感じた。ボクは洋子さんを傷つけられるのが大嫌いだから、その一念で動けただけだ。その証拠に、手の震えが止まらない。


「このっ!お前誰だっ!姿を見せやがれよ!」


 正体が分からないソイツに、ゆうこさんが怒鳴りつけた。そう、先程から姿は見えるのだが、全く顔が見えないのだ。


 しかし、ゆうこさんの言葉に反応したのか、ソイツがこちらに歩み寄ってくる。ボク達は少しでも距離を取ろうと、廃屋まで移動した。


 ソイツは、先程の様な瞬間移動をする様子も無く、ゆっくり歩いて近付いてくる。そして一言『影纏解除』と、呟いた。それが聞こえる程近付いてきて、だ。


 すると、先程までの姿も、見えなかった顔も、全てがハッキリと目視出来る様になっていった。呟いた言葉通り、纏っていた影を脱ぎ捨てた様に見えた。


 そしてその姿を見て、ボク達は驚愕した。それが、あの緑の髪の女、『ミドリ』たったからだ。


「やっぱりお前は敵だったのか!ミドリ!お前が善さんを殺した!ボク達はお前を許さない!」


 ボクが言い放った言葉に、ミドリが笑い出し、その後にこう言った。


「ふふふっ、久しぶりに会ったのに〜っ、連れないこと言うのね〜ぇえ。そうよぉ〜、善を殺したのは〜ぁ、わたし〜ぃ。でもねぇ〜、名前を忘れてるって〜ぇどう言うこと〜?ミドリって〜ぇ誰だよっ?」


「な、なにっ!お前…その話し方…、もしかして、奈々子か!」


 そうだ、明らかにその口調は奈々子のものだった。しかもミドリという名前に聞き覚えが無いといった様子だが。ボクは非常時だと言うのに、確かめずにはいられなかった。


「もしもし!母さん?急いでるんだ!ミドリはそこにいるかい?」


「何?どうしたのよ?ちゃんと文献はさが」


「はやくっ!!」


「んん?あ、あぁ、ここにいるけど?それがど……ププーッ、プーッ、…。」


 そう、ミドリが家にいるかを確かめたかったのだ。母に携帯で確認したら、確かにそこにミドリがいた。あの妙な音声で『豆』と言っているのが聞こえた。


 間違いない、目の前のこいつは奈々子だ。



突如姿を現した影の正体は!?本当に奈々子なのかっ!

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