表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/102

65 説得

とうとう痺れを切らした奈々子が『悪』を倒そうとしているらしい!?それを聞いた善の反応は…。



「シャクシ、元々あの女性は『悪』の所に通っているのですよ。それを今更、貴女らしくありませんね。」


 慌てて駆け込む様にやって来たシャクシさんを、善さんがそう言って、軽く叱った様に思えた。


「ご、御前様!…。恐れ入りますが、そうではないのです。既にチカラを授かった者、また遺伝により受け継いだ者等、多勢にて攻め入ったという事でございます。」


 善さんのお叱りで、少し落ち着いた口調に戻るシャクシさんだが、言っている事は、落ち着いていられない状況である事が分かる。


「仕方のない事ですよ。アタシはソレを止める義務を感じませんよ。『種子』を受け継いだ時から、そうなっていくものですよ。ソレは人助けにはなりませんよ。」


 『悪』が倒されれば、善さんの命も尽きるはず。この期に及んでまだその『人助け』というしがらみの為に、意地を張ると言うのか。ソレを黙って見過ごす程、ボクは腰抜けでも薄情でも無い。


「善さん、話してる時にごめんなさい。ボクのお願いを聞いてくれるかな?」


「あらあら、お気に入りさん、水臭いですよ。」


「じゃ、遠慮なく。ゆうこさんにも、能力を授けて下さいませんか?」


 大切な話の最中に、自己都合にも聞こえる申し出をしてみた。シャクシさんが険しい顔でボクを見ているのが分かる。少し心苦しいが仕方ない。


「…。ゆうこには心に深い闇が見えましたから、授けていなかったのですよ。…しかし…、お気に入りさんがその過去を払い除けてくれたのですね。では聞きますが、何故ゆうこに能力を?無益な戦いの為でしたら、授ける事はしないのですよ。」


 さすが善さん。一筋縄ではいかない様子だ。ここは嘘やごまかしは通じないだろう。善さんは思考を読んでいる筈だから。


「善さん、人を殺める為に、ではありません。ボク達に善さんを守らせて下さい。」


 とりあえず直球を投げておく。


「ソレをアタシが望んでいる様に見えたなら勘違いですよ。」


 そう言って横を向いてしまう善さんに、ボクは距離を詰めて善さんの手をとった。


「違います。ボク達が人助けをするのです。善さんだって人に変わりはありません。それとも善さんは、助ける人を選べと仰るのですか?悪人であってもその命を助ける善さんが?」


「口がお上手になったのですね。しかし、相手はどうなるのでしょうね。相手にとって助けにはなりませんよ?」


 中々意地悪な返しをしてくる善さん。だが。


「相手も助かるのですよ。ボク達は善さんの子供と言っても過言ではないでしょう?その教えを違える事はしないですよ。『悪』も救えて、『悪人』も助けるのです。決して殺めたりしません。」


「ですが、その後が大変ですよ。無殺を貫けば、相手は永遠に襲ってくるのですよ。」


 少し変化球でも投げてみようと試みる。


「そこなんです!善さん、悪者は決して休日を作りません。例えボク達が今、奴らを殺めたとしても、また第二のそういった輩が出てくるでしょう。相手が諦めない限り、ボク達は戦うより道は無いのです。これは人助けです。」


「それがどう助けてると言うのか、アタシには分かりませんよ。」


「まず、殺めたりはしません。話しの例として言った事ですが、失言だったと先に謝っておきます。…話しを戻しますが、ソレをボク達が何もせずに、見過ごしたとしたら、この世界はどうなりますか?そこに住む大勢の人の命は?これを助けずして何としますか?」


 少し困った顔を見せる善さん。先程とった手はそのままボクの両手の中にある。少しギュッと握り、ボクは話しを続ける。


「善さんの言う通り、無殺であれば、戦いは永遠と呼べるものになるでしょう。奴らの目的は、この世界を思うがままに支配する事だと、ボクは考えています。これまでの組織のやり方から見ても、人々に人道的な扱いをするとは到底思えません。未然に防いで、大勢を救うのです。ボク達が生きている限り。」


 この会話が少し苦しくなってきた事は否めない。


「しかし、それではお気に入りさんが救われないですよ。」


 やはりそうきた。善さんが一番気にかけているのはボクだ。今の会話で、ボク一人を限定表現してきた事から、それが伺える。


「では、善さん。助けて下さい。ゆうこさんに能力を授ける。それこそがボクの願いであり、救いに繋がります。善さん自身が人助けをする。という事になりませんか?何より、ボクは善さんのお気に入りです。凄く光栄に思います。そのお気に入りのボクのお願いです。善さん。」


「とてもズルいいい方ですよ。…、もう。分かりました。…ゆうこ、チカラを正しく使いなさい。」


 やりました!皆さん!決め球の使いどころが無かったですが、善さんが折れてくれました!ハハハ…、ん?折れて?


「お気に入りさん、条件があるのですよ。」


 また誰に話しかけているのか分からないボクに、善さんが条件という、少し不安を感じさせる言葉を投げてきた。ここから善さんの変化球なのか?受けてたとうではないか。


「は、はい…、ボクに出来る事でしたら。」


「良い返事ですよ。…よ、洋子。お気に入りさんを、い、一日でいいのでアタシに…か、貸しなさい。」


 条件ってそれかっ!!色々心配して損したわ!いや、心配なのは変わらない。


「り、稜くんが、それで大丈夫なら。でも、一日だけです!後は私の稜くんです!」


 う〜…貸し借り可能なモノ扱いされている様な…。


 ボクと善さんのやりとりを、この場でずっと静観していた筈の皆んなの視線とヒソヒソ話が、ボクを更にやるせない気持ちに追い込んでいった。


 マスターだけは味方だと思っていたのに〜。若い嫁さんに既に尻に敷かれてるんじゃないか?


 どうでもいい事だが、マスターは四十五で、川上さんが二十八という年の差婚だ。何より川上さんにカズちゃんがベッタリだそうで。それで結婚話しを持ちかけたと、マスターが皆んなに語っていたが、ニヤケ顔からすると、カズちゃんより嬉しそうに思えたが?


 吊るし上げはここまでにして、亡くなられた奥さんの遺言でもあるそうだ。

『もしも自分に万が一の事があったら、男手一つで子育てするよりも、和美の為にも良い人を見つけて下さい。』と。



 ボクがそんな事を思い起こしている間に、能力は既に、ゆうこさんへと授けられた様だ。ゆうこさんが善さんにお礼を述べた言葉が、ボクの耳に飛び込んできた。

 ハッとして我に返ってそちらに視線をやると、善さんの前にユキさんが立っていた。


「ユキさん、貴女にも闇は見えますが、ゆうこのソレとは違うモノの様ですね。お気に入りさんと行動を共にし、チカラのあり方を学ぶのですよ。そして、これを…。貴女が然るべき時にお使いなさいね。『還りの鈴』という、若返りを含めた、過去の記憶を返してくれる鈴ですよ。音色を響かせた者のみにしか効果を発揮しませんから、十分お考えになって使うのですよ。」


 さすが善さんだ。ちゃんと作ってくれていた様だ。『還りの鈴』をユキさんに手渡した後、善さんがユキさんの顔の前に手のひらを(かざ)す。光の演出でもあるのかと思ったが、目視出来る事は何も起こらず、そのまま終了となった。


 これで、ゆうこさんもユキさんも、能力を授かった事になる。これから覚悟を決めて、乗り込むとしますか!


「シャクシさん、案内、お願い出来ますか?」


 ボク達の話しを聞いていたと思うのだが、キョトンとした表情を見せるシャクシさん。こういう表情も新鮮でいいかも!と、久々にアホな事を考えてしまうボク。


「あの…、案内とは?」


「え?…、あのほら、『悪』のところに…。聞いてましたよね?さっきの…会話。」


「ええっ!?行って…行っていただけるのですか!?うぅ…うっ…。」


 聞いて無かったのか!?それより、なぜ抱きつく…。ただでさえ洋子さんの機嫌が…。


 ボクの言葉で、善さんとのやりとりがようやく理解出来たのか、全く聞いておらず、今理解したのかは定かではないが、とにかく分かって貰えて良かった。

良かったのだが、善さんの先程の条件に、機嫌が悪い様子を見せている洋子さんの前で、ボクに抱きつくのは遠慮願いたい。美女だから嬉しいが、怒られるよ?


「シャクシ!!稜くんに、さ わ る なーーー!!!」


 ほら…。



強引な主人公の説得に応じた善。ちょっとした下心は感じられたものの、ゆうこ、更にユキにも能力を授ける善。少しおとぼけキャラのシャクシだが、案内を頼み、いよいよ敵との総当り戦だ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ