表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/102

64 お帰り、結婚、危機

前回に続き、ゆうこの説得に当たる主人公。ゆうこの心を掴む事が出来るのか!?



 「ゆうこさん、過去に何があったのかは聞いたよ。話したがらない理由も分かった。でもね、思うんだ。ボク達は子供時代に幸せを感じた事がない。洋子さん、ゆうこさん、ボク。それぞれ環境は違うし、苦しんだ度合いだって違うと思う。でも、その想いを胸にしまったまま出会ったよね。相手の事なんて全く分からないまま、ボク達は友達になったよね?」


「所詮組織繋がりだ…。何の不思議もねぇだろうが。」


 話しを聞く気になってくれたのか、落ち着いた口調で答えてくれるゆうこさん。


「そうかな?最初はそうだったかもしれないけど、組織の理不尽に立ち向かい、命まで落としそうになった洋子さん。ボクを助ける為だったとはいえ、自分の意思でした事だよね。じゃあ、ゆうこさん?何故あのホテルでボク達を助けたの?組織の命令だったの?」


 ボクの問いかけに、口を開こうとしないゆうこさん。その様子を洋子さんも心配そうに見ていた。


「多分、自分の意思だよね。組織の命令だった暗殺に従わず、それどころか、同じ組織の人間を裏切ってまで助けてくれた。どうしてなの?友達だと思ってくれていたからじゃないの?その後は?あの廃棄された作業現場、自分を囮にしてまで逃してくれたよね。何故?仲間だと感じたからじゃないの?」


「うるせぇ!うるせぇうるせぇうるせぇ…ぇぇぇぇぇ…。お前らが…羨ましかったんだ…よぉ。自由なお前らがぁ…。私もそこに行けば…自由になれると…。」


 やっと少し本音を聞けた気がした。ゆうこさんが遠くを見る様な目をしていた。先程までの威圧感は消え失せていた。


「ゆうこさん…今自由じゃないか。」


「違う…、違うんだょ…。アイツが、善さんのところで、久々に見たアイツが…怖ぇんだょ…。今でも頭ん中でアイツが……、自由じゃねぇんだよ…。」


 やはり善さんの言っていた通り、過去のトラウマに囚われてしまっている様子だ。


「ね、ゆうこさん。ボクと洋子さんを見て。ボク達さ、自分を犠牲にして…、死ぬかもって分かってても、それぞれの命をかけて、互いに助け合ったじゃないか。支え合って来たじゃないか。いつも三人でそうして生き抜いてきたじゃない。もう…一人じゃないでしょ?奈々子との戦いでも同じだよ。ボクも洋子さんも、命をかけて、仲間を支え、支えられて戦い、勝つ!でしょ?」


 ボクの言葉を聞いて、目を閉じて黙ってしまうゆうこさんだったが、ゆっくり目を開けて、ボクを見据えながら口を開いてくれた。


「分かってる…、でも…お前達二人の場所に…、私の居場所は…。」


「洋子さん、ゆうこさんを離してあげてくれるかな?」


 ボクのお願いを、少し戸惑いながらも聞いてくれる洋子さん。ゆうこさんがゆっくり上体を起こした。そして、ボクはゆうこさんを強く抱きしめ、言葉を伝える。


「ゆうこさん、大好きだ……。洋子さんもボクと同じ気持ちだ。彼女の事は愛している。同時に、仲間として大好きだ。ゆうこさんも同じだ…大好きだ。だから、ボク達から遠ざかって行かないでくれよ。」


「……うっ…うぇぇぇぇぇぇえええん……ぁぁあああああ……」


 良かった…ゆうこさんの心の声がやっと聞けた。 「ゆうこっ!!」


 ボクがそう感じるのと同時に、洋子さんがボクごとゆうこさんを抱きしめてくれた。



 相当なプレッシャーとストレスによるものだろう、ゆうこさんは泣き疲れた様に、その場で眠ってしまった。善さんがそのまま転移で部屋まで運ぶと言って、風の様にゆうこさんを連れていってしまった。


 おかえりなさい、ゆうこさん。




 実はあの後、ボクと洋子さんも、寝不足と緊張が影響してか、家に入るなり物凄い睡魔に襲われてしまい、部屋に入るとその場で眠ってしまった。

ベッドが砂漠のオアシスの様に見えたが、アレはきっと蜃気楼だ…。

 これが最後の記憶だ。


 夜に起きるのは、少し変な気分だ。しかも、部屋の床にそのまま寝ていたものだから、身体中が痛かった。過去形なのは、ボクの『治癒』が勝手に痛みを治してくれたからだ。本当に自己満足なチカラだ。


 いつもの家とは違い静かだ。他の皆んなはもう寝てしまった様だ。ボクは、寝ぼけた洋子さんをおぶって、キッチンへと下りていった。電気の灯りが恋しくなる程暗い。


 キッチンに入ると、昼間と同じ姿勢で、窓枠に腰掛けているゆうこさんが視界に映る。同じなのは姿勢だけで、空を見上げて、月明かりに照らされたゆうこさんの顔は、穏やかになっていた。


「ゆうこさん、起きて大丈夫なの?」


 ボクの声に驚いたのか、少し肩がビクッと震えた様にすぼまり、片手にカップを持っているのが見えた。


「あ、あぁ。うん。稜くんもソレ、大変だな。」


 少し戸惑いを感じられる表情だったが、ボクの背中で寝ぼけている洋子さんをソレと呼び、笑顔を見せてくれた。ボクはゆうこさんの言うソレを、隣のリビングのソファに下ろす。


「稜くんさ、…ありがとうな。好きって言ってくれて。私さ…生まれて初めて、大好きって人に言われたんだ。あ、意味は理解してるよ、大丈夫。嬉しかったんだ…、二人と同じ場所にいていいんだって…思えてさ。チカラ、貸してくれよ。アイツと戦う時。」


 初めてこんな風に、ゆうこさんの気持ちに向き合って、話したんじゃないかと思った。


「もちろん!ボク達三人は、一連托生(いちれんたくしょう)だ!覚えておいてね。」


「ああ、ハハハっ、分かったよ!」


 ようやく出たいつものゆうこさんの笑顔が、今夜は特別嬉しい気分にさせた。



 全く眠気がこないまま、ボク達三人は朝を迎えた。誰かが起きてくる前に起きているのは、ここ最近では初かもしれない。ボクは、朝の歯磨きでもと思い、キッチンから洗面所へと向かう。


「あ、伊町さんおはようございます。今日は…早いですね。」


 洗面所へと向かうボクに、挨拶をしてくれたのは川上さんだ。


「あ、おはようございます。たまにはね、へへへ。」


 その挨拶に対して、早起きでも何でもない事が、ボクを少し後ろめたい気持ちにさせる。


「えっへへ、おはよ!お兄ちゃん!」


「お、カズちゃんおはよ!元気だ…ね?あれ?お揃いのパジャマなの?」


 川上さんの後ろから、元気に挨拶してきたカズちゃん。その二人のパジャマがお揃いだった。何だか親子みたいで微笑ましい。


「あ、伊町さん、おはようございます。」


 この家で、唯一ボクと同じ男であるマスターの声で、階段の更に上を見上げると、なんとマスターもお揃いのパジャマだったのだ。


「お、おはようございま、す。アハハ…、皆さんお揃いで。」


 いやいや、ダジャレのつもりはない!しかし、皆さん、黄色いパジャマがお似合いです事。オホホホ…ホ。


「あ、あの!伊町さん!その、軽いと思わないで下さい!わ、私達、け、結婚する事になりました!」


 えええええええええええええええええええ!!!!!


 突然の結婚宣言!しかも大声でだ。それは皆さん、起きてくるでしょう。


「川上さん!マスター!おめでとう!!」(一同)


 正に、全員集合だ。これからまだ戦いが続くかもしれないが、幸せそうな三人を、祝福しない者は誰もいなかった。


 という事で!これから結婚式を挙げたいと!という訳にもいかないので、戦いが終わったら結婚するんだ!と、フラグでも立ちそうな雰囲気だが、後日に。

ボクと洋子さんで守り抜いてみせる!


 女性が多い所帯なので、色々と質問が飛び交っている。川上さんも嬉しそうに話して聞かせている様子だ。


「御前様!大変でございます!あのおなごが『悪』の根城に踏み入っている様子!手を打たねば御前様のお命が!」


 皆んなが川上さんと、マスター親子を祝福している中、慌てた様子で現れたシャクシさんが、善さんに物騒な内容の報告をしてきた。



突然の結婚報告!突然の危機報告!?『悪』が危ない!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ