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61 奈緒子再来

チカラが使えない主人公と洋子。チカラ無しで挑んでみたが!?



 隠れる場所も一時的に身を守れる場所も何もない中央部。ここまでボク達を運んでくれたマイカーも、奈緒子の持つ刃の長い鎌で大破してしまった。その姿はまるで死神だ。


 奈緒子の持つ鎌は、柄の長さが二メートル程で、その先には長さ一メートル程の幅広い刃を備えている。これを軽々と振り回す奈緒子は、肉体強化のチカラを持っていると考えられる。


 精神効果が無ければ、戦う事も可能だと考えていたが、アレを振り回されては近付く事も敵わない。凄い風切り音を立てながら、右に左にと絶え間なく振り回されている。


 ダァァン!キンッ!……ダダァァァァンン!キン!キン!


 ゆうこさんが隙を作ろうと牽制しているが、その弾丸さえも斬り伏せてしまう。


 さすがの洋子さんの鍛えた技でも、アレには近付けない。せめてチカラが使えれば。これではただの追いかけっこだ。


 奈緒子は多分、容易(たやす)くボク達を殺す事が出来るはずだが、先程から、一定距離を保ちながら追いかけ、特大鎌を振り回しているだけだ。その証拠に、洋子さんがつまずいて、膝を地面についてしまったが、わざと速度を緩めて、距離を測っていた。


「洋子さん、マスター、ここはバラバラに逃げて隙を作るしか!」


 ボクの提案で、マスターとカズちゃん。川上さん。洋子さん。ボク。で四方向に走り出す。奈緒子の動きが止まった。

ボク達は走りながら奈緒子が誰を追うか確認する。追っているところを、一斉に背後から襲ってみようと考えていた。

勿論、前方からゆうこさんが狙撃してくれると信じて。


「ふぅ〜ん…、待ってたのよ〜ふふふぅ。一人になる〜、アンタをねぇ!!」


 奈緒子が動いた。洋子さんを目掛けて移動していく。ゆうこさんがその前方へと回り込むが、少し距離があるみたいだ。間に合えば隙が出来て、ボク達も背後から奇襲出来る。


 そういう手筈だったが、奈緒子がいきなり速度を上げ、洋子さんに特大鎌を振り下ろし始めた。ボクはそれに全く間に合わせる事が出来ない事を悟った。おそらく他の皆んなもそうだ。


 ダァァン!ダァァン!


 慌てた様子で、ゆうこさんが移動しながら狙撃したが、奈緒子は軽く首を左右に振って、それを(かわ)して見せた。最初から余裕で倒せるのに、遊んでいた事実がそれで分かった。


「もう一度〜!し〜ぃねぇぇぇ!!」  ズバン!


 洋子さんの背中から鮮血が吹き出して散っていく。ボクはあの時の様に、自分の無力さを悔やんだ。


「洋子さぁぁぁん!!」  「洋子っ!!」


 ボクとゆうこさんの声が、中央部一帯に響き渡った。


「ひゃ〜っハハハハ!次は〜ぁ、ゆうぅこぉ?ふふふぅ、裏切り者〜ぉ?しねぇ〜ぇ、死ね!」


 奈緒子がゆうこさんをターゲットに選んだ様だ。特大鎌をゆうこさんに向けて、行くぞ行くぞと言わんばかりに、腰にチカラを溜め、リズムを刻んでいる様に見える。


「ひゃはっ!た〜のしぃっ!そろそろぉ〜殺しちゃうぅ?ハハハハ…グボッ!グッ!…ガハッ…」


 ゆうこさんに狙いをつけていた奈緒子の腹部に、洋子さんの拳が突き刺さっていた。全く見えなかった。その背中は、先程斬られた時の鮮血で染まったままだ。


「稜くん、あのね、治ったの。さっき転んだ傷が治ってたから、斬られた時に集中してみたの。チカラ、使えるよ?」


 な、な、なんですと!!!


 奈緒子に拳を突き刺したまま洋子さんがそう説明してくる。どういう事だろうか。


「お、お前……斬った…ゴボッ!…なぜ生きて…グッ、ゲボッ!…。」


 気の毒な事に、奈緒子にも状況が理解出来ていないらしい。分かるよ。


「ねえ、黙っててくれない?稜くんと話してるんだから。イラっとする、どっか行って。」


 ゴボォォッ!ッッッシュゥゥゥゥゥ……キラン!


 静かな口調でそう言った洋子さんは、その言葉とは裏腹な、もの凄い蹴りを、奈緒子の土手っ腹に(はな)っていた。遥か彼方に飛んで行き、星になった奈緒子であった。

 その様子を遠くで見ていたゆうこさんが、青ざめた顔をして洋子さんを見ていた。多分ボクと同じ事を考えているはず。

(この人を怒らせないに越した事はない)


「稜く〜ん!私頑張ったよ!何でチカラ使えたのかな?稜くんは?使える?」


 そう言いながら、何の躊躇も無く、ナイフで自分を切って見せてくれる洋子さん。止めなさい。


「い、伊町さん?これで終わったのですか?……、和美、大丈夫だから来なさい。」


「お兄ちゃん、かずみ…怖くてチカラを使えなかったの…ごめんなさい…。」


 そう言って泣きそうな顔になってしまうカズちゃん。まだ子供なんだから仕方ない事だ。


「大丈夫、カズちゃんがいてくれた事が、皆んなの勇気になったんだよ。お父さんと一緒にいたかったんだよね。偉い偉い。」


 ボクはそう言いながら、泣きそうなカズちゃんの頭を撫でてあげた。後ろで川上さんのホッとした様子が伺える。ゆうこさんは再び周りの警戒に入っていた。


「ね、ね、稜くん。私は?ねぇ、私は頭撫でてくれないの?ねえ。」


 そういえば今回の功労者は洋子さんだ。ボクは素直に洋子さんの頭を撫でてあげた。しかし、まだ終わってはいないのだ。ユキの姿が見えない。


「洋子さん、まだ一人残っているはずだから、油断しないでね。」


 ボクの言葉に、その場の全員が顔を強張らせていた。どうやらユキの存在を忘れていなかったのは、ボクとゆうこさんだけの様だ。


 しかし、どれだけ探してもユキは見つからなかった。後で『絶対服従』をこっそりかけられでもしたら大変なのだが、二時間近く探して見つからないのでは仕方がない。とりあえず戻って、母と善さんに報告しておこう。


 行きは車で楽だっだが、帰りは歩きだから少し面倒くさい。ボクとマスターは、交代でカズちゃんをおぶっていた。そんな様子を見ながら隣を歩く洋子さんが、ボクを覗き込んで話しかける。


「稜くん、チカラ使えるのに、歩くのは何で?私と歩きたかったぁ、とかかなぁ。えへへ。」


「ああ!!そうだったぁ〜。洋子さんさすが!うぅ…皆さん、飛びます…『空間転移』。」



 本当にチカラが使えたのだ。確かに善さんは『封印』と言ってチカラを使っていたはずなんだけど。時間で解けたりするのかな?と考えていると、タイミングよく善さんが外に迎えに来てくれた。


「善さん、チカラが使える様になってたんですけど、解いてくれたのですか?」


「いいえ、解くも何も、『封印』なんてチカラは存在しませんよ。罰として、懲らしめただけです。」


 なんとも気の抜ける様な善さんの返答だが、確かにボクが悪い事したから罰を受けたのだ。『封印』がウソだと分かった今も、反論は出来ない。


「そうでしたか。ボクが悪いので何も言えません。これを肝に命じて、二度と考えなしにチカラを使いません。ごめんなさい。」


 心からそう思い謝罪するボクの頭を、善さんが優しく撫でてくれた。そして、爆弾発言をしてくれる。


「でも、危ないからと思い、ゆうこには本当の事を伝える様に頼みましたよ。」


 その言葉で、皆んなの視線がゆうこさんに向けられた。ちょうどコソコソと逃げる途中だった様だ。皆んなに見られていると気付いたのか、ゆうこさんがすっくと立ち上がり、謝罪の言葉を述べた。


「えー、すまねっス!忘れてぃやしたぁ。あぁ……ははは…は。…。すみません…。」


 あれだけ焦っていれば当然かもだが、確かに彼女、『チカラ使えねえだろが!』とかなんとか、言ってた様に記憶しているが。

 隣で洋子さんも、ヤレヤレと両手でジェスチャーをして見せた。


 それから後は、無事に帰って来れたお祝いと称して、またキャンプをする事に。善さんがしたかっただけの様だ。いつの間に家から出てきたのか、母が外に用意したベンチに腰掛けていた。その隣には…!?


「そいつ!ユキだよお母さん!」


「そうよ、どうしたの?さっきからいたのよ。ね、ユキ!」


 え?いや、ね、って。どうなってんの?


「大丈夫ですよ、お気に入りさん。頭の中の金具は除去しましたよ。アタシを襲おうだなんて事するから、原因を取り除いたのですよ。」


 金具って、あ、組織が操る為のチップとか言うアレ?除去出来るんだ。


「稜、お母さんが昔面倒見てた『篠田 ユキ』よ。操られていないから、大丈夫よ。ね〜ユキ。」


「愛姉さん、私もう三十二ですよ?子供の時の言い方止めて下さいよ。」


 お、おお!滑舌だ!…あ、いやいやいや、大丈夫なのか!?


 あれ程探しても、見つからない訳が分かった。ここにいたからだ。しかも意外と礼儀正しい。ボクにも軽く会釈をしてた。

その後、ユキさんに皆んなで自己紹介をして、彼女が操られていた時の記憶が曖昧で、ボクや洋子さんの事も覚えていない事が分かった。

洋子絶対絶命と思いきや、やはり洋子は最強ヒロインだったのか!という展開に。そして!探しても見つからなかったユキが自宅に!?果たして仲間となるのか!

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