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53 『種』『種子』

善の説明で、誰も知る事が無かった真実が露わになる!



 ボク達が言う『種』は、善さんが説明してくれた『種子』と同一の物なのだろうか。もしそうであれば、事態は深刻だ。ボクが、『種』と『種子』を同一かと疑問を持つのには理由がある。


 青木が語る中で、奈々子が出てきて、『種を植える』と言っていた。善さんの説明で考えると、奈々子自身には、『成し得ない事』になる。それを奈々子自身が言っている事が引っかかるのだ。



 『善』と『悪』。それぞれが、同じ時代に一人ずつしか存在出来ない。では、どうやって次が生まれるのか?そこに隠された真実があった。誰も知る筈のない事だ。


 善さんが十五歳の時、その時は訪れた。彼女はまだ『普通の人間』だった。その時代の『善』によって選ばれたのだ。これは、誰しもが選ばれる事では無く、ある条件が必要となる。その条件とは、『双子』である事。そしてそのどちらもが必ず、次の『善』と『悪』を受け継ぐ事になる。


 双子のどちらかでも受け継ぐと、その時代の『善』と『悪』は、時を同じくして死が訪れ、次の双子が同時に受け継ぐ事になる。


 さて、この『受け継ぐ』方法だが、『善』『悪』どちらかに死期が近づくと、先代より受け継いだ物が体内より排出される。これが『種子』である。


 ここで分かり易い様に、それぞれに名前を付けよう。まず、現任の『善』、『悪』。そして次世代に選ばれる双子を『ぜんこ』と『あくこ』とでもしておこう。


 『善』に死期が近付く。『種子』が排出された。それを『ぜんこ』に植え付ける。これで世代交代パートワンが終了。


 パートワンが終了した時点で、『悪』にも死期が強制的に訪れる(双子故に)。そして『種子』が排出される。これは、自動的に『あくこ』に植えつけられる。

『悪』や『あくこ』の意思があろうと無かろうとだ。

 これで世代交代パートツーが終了。双子が次の世代を受け継いだ事になる。


 そして、『種子』を失って先代となった『善』と『悪』は、ゆっくりとその生涯の幕を閉じる。


 これが、遥か大昔から受け継がれてきた『善』と『悪』の儀式の流れだ。


 しかし、『双子ではない者』にその『種子』を植え付けた場合どうなるか?。これは、先代より受け継ぐ時に、この事も『口伝』として受け継ぐ事になる。


 『種子が一つ子に植え付けられし時、災いを持って彼の地を滅ぼさんとするであろう。』

 『生きとし生ける者全ての魂をもって(あがな)うべし、覚悟せよ。』


 と、この二つが『口伝』として代々伝えられてきた。未だ試した者はいないようだが。




 これが善さんから聞いた説明を、ボクなりに纏めたものだ。お判り頂けただろうか?


 ここで最初の『同一か?』という疑問に戻ると、奈々子は選ばれし者ではない。従って善さんの言う『種子』は持たない。しかし、奈々子は『種』と言っている。


 この事から、ボクが『種子』と『種』は同一では無いのでは?と引っかかっているのだ。


 さて、こうやって誰に話しかけているのか、ボクにも分からないが、多々ある事なので、気にしていない。気になっているのは、先程から後ろでウロウロしている洋子さんの行動だ。


「どうしたの?洋子さん?ここにおいでよ。」


 ボクの言葉に、ハッとした様な顔を見せたが、直ぐに笑顔になって、ボクの横にササっと来て、チョコンと座ってくれた。何だかソワソワしている様子だ。


「稜くん大丈夫なの?一人でブツブツ言ってたから、どうにかなっちゃったと思って、心配だった。」


 ちょっと危ない人みたいになっていたかもしれない。


「ごめんね、善さんの説明を整理してたんだよ。」


 ほら、彼女はどんな時でも、ボクの事を最優先に考えてくれてる。そう感謝しながら、洋子さんに説明した。因みに、ゆうこさんは、罰として、裏の畑の手入れをさせられているので、ここにはいない。


「そっか、良かった〜。稜くん壊れたりしたら、私生きていけないよ…。稜くんは私の初恋でもあり、人生で初めて大切って思えた人なんだよ。いなくならないでね。」


「ありがとう。嬉しいよ。洋子さん…。ボクは初恋じゃなくてごめんね。」


 洋子さんの想いに対して、ボクは後めたい気持ちになっていた。悪い事した訳ではないが、初恋はナミちゃんだったからだ。洋子さんではないのだ。


「いいんだよ!私が言いたかっただけだから、気にしないでね。」


 そう言った洋子さんが優しく頭を撫でてくれる。頭では理解出来ているのだ。


「私ね、記憶が曖昧で…、ほら、小さな時から自動運転みたいな感じだったでしょ?私に自我が芽生えたのは、二十歳越してからだったからさ、今が普通の人の二十歳くらいの心なの。…、て若返ったから、問題ないんだけど…。」


 何となく洋子さんの言いたい事は分かる気がした。

要するに、自我が無く過ごした二十年間は、産まれる前と同じで、後の二十年間が、洋子さんの全てだと。


 四十歳になっていたけど、中身は二十歳の洋子さんだと言いたいのだろう。だから初恋だけど笑わないでね!と、言っている様に思える。


「うん、嬉しいよ、ありがとう。洋子さん、若返ろうが、そのままだろうが、ボクの気持ちは変わらないよ。実際、若返る前に、結婚しようって言ったのボクだよ?忘れたの。」


「あ、…えへへ。うん、そうだった。覚えてるよ。絶対忘れられないもん。」


 いや、『あ、』て言ったよね?忘れてたな〜……。えへへがあったからいいか。


 凄く良い雰囲気だ。ボクは洋子さんの頬に手を添えて、洋子さんの目を見つめる。洋子さんが目を閉じてくれる。ボクの意図を理解出来る素敵な女性だと、心の中でそう思いながら目を閉じて唇を…。


「あーーー!!!もうっ!人が働いてる時に!!」


「わあっ!!」(洋子さんとボク)ゆうこさんの声に驚き顔を離す。


「あらあら、ゆうこ!せっかく良いとこだったのですよ。次は草刈りでもしてきなさい。」


 そう言いながら、いきなり姿を現わす善さん。


 姿消して覗き見なんて趣味が悪い……。チカラを使役してる。何が人助けだ! ダメだ、ここでは絶対洋子さんとキスなんて出来ない!


 二人の邪魔者に苦笑いする洋子さんと、地団駄を踏むボク。やはりまだボクはお子ちゃまだ。



 「あら?シャクシ…戻ったのですか?」


 突然そう言った善さんは、入り口の外の方を見ていた。


「はい!戻りました。戻る途中気取(けど)られましたが、痕跡を消しながら飛びましたので問題ないかと。故に遅れてしまい、申し訳ございません。」


「あらあら、シャクシの気配を察知出来るとは、『悪』もなかなか(あなど)れませんね。」


 確かに、善さんが気付いて声を出すまで、ボク達には全く分からなかった。


「いえ、それが…。人間の女でした。『悪』と話しておりました。」


「その人間の女、少々厄介な存在かもしれませんね。シャクシは二度と、その人間の女に近付いてはなりませんよ。これは命令ですよ。」


 シャクシさんが言う、人間の女に、心当たりがあったが、憶測の域なので、今は伏せておく事にする。善さんに心を読まれたかもしれないが。


「承知しました御前様。して、かの者らの話しですが、『種』とは、『種子』ではありません。『悪』が既に女に与えたと思われます『傀儡芽(くぐつのめ)』が『種』にございます。女がそのように申しておりました故、間違いございません。」


「そうでしたか、しかし、その女は油断なりませんよ。『悪』に『傀儡芽』を差し出させる程、狡猾(こうかつ)な人物ですからね。シャクシ、もういいのですよ。お帰りなさい。」


「はい。では失礼させて頂きます。」


 そう言うと、またシャクシさんは消えてしまった。しかし、ボクの考えていた通りだった。『種』と『種子』は違った。そして、シャクシさんが言う女が、その事を話していたのならば、ほぼ間違いなく、『奈々子』だ。



今回は勘が冴えていた主人公!悪の元で奈々子は何をしていたのか!?

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