5 絶える事無き葛藤と忍び寄る影
相変わらずタイトルに苦悩しておりました。本文作成と同じくらい時間をかけたかもしれません(笑
※ 4/18 一話から少しずつ読み易く訂正を入れております。表現が少し変わるだけで、ストーリーには影響しないように気を付けております。
「初めて恋をしてます!好きになって下さい!あっ、違う…、お付き合いして下さい……さい。」
彼女の歯切れ良い?告白が、ボクの頭の中を真っ白にする。返す言葉が見つからない。こんな事人生で初めての経験だし、どうしていいのか解らない。
しかし、年若き女の子が頑張ってくれたのだから、年上の、しかも男であるボクがしっかりしないと。気を取り直し、会話の基本から始める事にする。
「突然でびっくりしたけど、まずは自己紹介をさせてね。伊町 稜といいます。二十二歳会社員です。」
思いのほか上手く話せた。出足は好調だ。ハッとした表情を見せ、襟を正しながら彼女が答える。
「ごめんなさい、私は、真咲 奈美恵です!十八になりました!ずっと見てました!」
告白した事で、タガが外れたのか、ヤケにグイグイ押してくる。勿論、嫌な気持ちにはならないし、むしろ幸せだ。
こんな美人さんに告白されたら、大半の男は舞い上がるだろう。しかし、ずっと見てたと言っていたが、やはり病院でだろうか?そうであれば、冷たい男だと思われて当然なのだが。
理由は、誰にも手を差し伸べず、ずっと無視してきたからだ。
冷たい男が好きなのか?理由はどうあれ、ボクみたいな男を好きになる時点で、彼女は変わり者だ。とても嬉しいが。
「あの……。どうされました?」
いかんいかん、あれこれ詮索するうちに黙り込んでしまっていた。彼女の言葉で現実に引き戻された。
「ごめんごめん。聞いてるよ。ずっと見てくれていたの?変な事してなかったか心配だよ。」
少し茶化し気味になりながらも、何とか答える。
「ずっと…、と言っても、お家まで尾けたりはしてませんよ、ふふふ。」
彼女も調子を合わせ答えてくれる。これが何だか楽しいと感じていた。しかし、本当に聞きたい事を、まだ聞けずにいた。彼女の全身に見える、黒いモヤが気にかかる。病気である事は間違いない。しかし、ストレートに、『病気なの?』と聞いてしまうほど、デリカシーの無い男ではないつもりだ。ここはひとつ、自分の事から話す事にしよう。
「ストーカーをする人には見えないから、それは心配してないよ、ハハッ。」
少しでも和むようにと笑って見せて、彼女が微笑み返すのを確認して、話を続ける。
「いつも水曜に、診察に来てるんだ。子供の頃に、何度か意識を失い倒れたからね。もしもに備えて、定期的に診てもらっているんだよ。」
「私は……、」
何かを言おうとして、彼女が口ごもる。少し表情が硬くなった感じがする。
「そうだ、これから呼ぶ時は、何て呼んだらいいかな?ボクの事は、稜と呼び捨てで構わないよ。」
彼女の困った顔にいたたまれなくなり、慌てて話を逸らしたのだが、ニュアンスとしては、お付き合い前提の会話が成立してしまった事に……。悪い気はしないし、これから彼女を知っていけばいいか。
「え…?あ、はい!では稜君と!私は、その……、な、ナミちゃんと、えへへ…」
ボクの反応が意外だったのかな?少し驚いた表情も可愛らしくて良かったのだが、その後の、照れて微笑み返す彼女……ナミちゃんも、凄く可愛い。
こういう事は、後で誤解を招くから、ちゃんと言葉で伝えておかないと。真剣な雰囲気を出しながら、ナミちゃんの目をしっかり見据える。
「勇気を出し、伝えてくれてありがとう。ボクからも一言。お付き合いお受けします!こちらこそ宜しくお願いします!」
緊張して、気合いが入った口調になってしまう。が、気持ちは伝わったようだ。両手で鼻と口を覆い、ボクを見つめる瞳からは、止め処なく涙が溢れ出している。
あいにくとハンカチを忘れたボクは、探す仕草を見せた後、彼女を引き寄せ抱きしめた。言うまでもないと思うが、ハンカチはちゃんと後ろのポケットに 入れてある。
しばらくそうしていたが、風も冷たくなってきたので、彼女を病室まで送った後、ボクは病院を後にした。
アパートに帰る道すがら、今後の事を思案する。勿論デートの事だ!と言いたいが、そうではなく、黒いモヤが出ている以上、どうしてもナミちゃんの病気が気にかかる。
改めて、ボクの能力の説明を……。まだ詳しい事は言ってなかったが、見える事に関しては、病気の人に限り、その疾患部分から黒いモヤが噴き出している様子が見える。
治癒能力に関しては、怪我や、内臓、骨など、見えていようがいまいが、その疾患部分、もしくは怪我の部分を、直接『肌』の上に手を『載せて』、治癒する。これは過去につよし君と色々試した結果だ。
つまり、治すにしても、直接肌に触れる事が必要なのだ。男性相手ならば、躊躇する事は無いだろうが、女性相手であれば、問題は多々ある。シャツの上から試したが、どんなに薄くても効果は無かった。
ナミちゃんの病気を治すなら、直接触れる必要がある。彼女の場合、全身からモヤが噴き出している為、根本的に何処が悪いのか?どんな病気なのか?全く見当もつかない。全身というのは、モラルの問題も有り、かなり気がひける。
若い女性の肌を触りまくる『変態』には思われたくない。
しかし、それよりも、ボクの頭を悩ませるのは、封印を解くのか?だ。また良からぬ結果を招くのではないのか?本人の人生は勿論、それに関わる周りの人まで変えてしまうだろう。
死ぬ時は死ぬ。今まで全ての生き物が、そうやって生きてきたのではないのか?だとしたら、この能力は使うべきではないのでは……。
大切に思う人が、心傷付くのはもう見たくない。今はまだ、能力を使うのがいい事だとは思えない。
〜 自宅アパート 〜
お世辞にも綺麗とは言えない部屋。一応掃除はしているのだが、元が古いせいか、華やかさに縁がない様に思える部屋だ。先程から、この部屋には似つかわしくない音楽が流れている。
乱暴に流した頭には、まだシャンプーが残っているが、今は流れる音楽の根源へと急がねばならない。滴る水滴も気にせず、テーブルの上のソレを拾い上げる。パカッ、ピッ!
「ごめん、お待たせしたね!お風呂だったからごめんね。」
言い訳がましく電話に出たボクに、苛立つ様子も無く弾んだ声で、『掛け直しますね』と答えてくれる彼女。通話が切れた携帯を見ながら、ナミちゃん専用の着信音をダウンロードした自分に、称賛を贈った。
お察しの通り、掛けてくれたのがナミちゃんだと解るように、着信音を購入したのだ。彼女とのお付き合いに対して、控えめに喜んでいたボクだが、行動がそれに伴わないでいた。
明らかに浮かれ過ぎだ。ボクもただの男に過ぎないのだと理解した。今更。
髪も乾かし、清潔なパジャマを着て、就寝準備万端の姿勢で携帯を耳にあて、ナミちゃんの声を待つ。色々思うところはあるのだが、今は距離を縮める事に専念しよう!
しばらく鳴らすが、一向に出ない。三度程繰り返し、しつこいのも嫌われると判断したボクは、明日にでも掛け直そうと、潔く床についた。
突然鳴り出す着信音で飛び起きたが、枕元に置いていたので無理もない。携帯の着信相手を確認すると同時に、画面上の時計に目をやる。『三時十五分』夜中だと気付く。
こんな時間にどうしたんだろうと、疑問を持ちつつ携帯を耳元へやる。繋がったと思ったら電話の向こうが騒がしく、相手の言葉がうまく聞き取れない。
それがナミちゃんの声ではない事は分かっていた。嫌な予感がしてならない。思わず何があったのか聞き返す声にチカラが入る。すると、少し騒音が和らいだ。
「奈美恵が倒れました!貴方を呼んでます!迷惑かと思いますが、直ぐに病院の方へ来て頂けますか!」
「もしもし、落ち着いて下さい、一体どう……プーッ、プーッ、プーッ…」
通話は途中で切られたみたいだ。落ち着くのはボクだ!とにかく急いで病院へ行かなくては!
恋愛シーンは苦手でありまする。ストレート過ぎて面白みに欠けているかもしれません。此度も読んで頂き感謝します。