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44 新居、歓迎

組織の心臓部へと来た、主人公達だか、奥から智がやってきて…



※ 少し、いやかなり遅れての投稿になりました。


 『中央指令センター』そう書かれた看板の下を潜り抜け、正面にあるセキュリティゲートに向かう。てっきりそこでボディーチェックでもされるのかと思っていたが、智さんが奥の方から出てきて、そのまま外に連れ出されてしまう。


「すまないね伊町くん。ここに組織外の人間を入れる事は出来ないんだ。そういう規則なんだよ。」


 そう告げる智さんは、相変わらず全身紺色のスーツで、ノーネクタイだ。


「構いませんよ。行くあてが無かったので、協力者として、街に招いていただき助かってます。それだけで十分です。」


 その言葉に、少し申し訳なさそうに俯く智さんが、これからしばらく住むボク達の家を、案内すると言って、停まっていた車を呼び寄せた。



 ボク達を乗せた車は、中央指令センターから、元来た道を居住区へ向けて走り、途中から左手方向へと進路を変えた後、しばらくそのまま真っ直ぐ進む。車窓から見えていた家も、段々まばらになってくる。

 この辺りは、居住区の開発がまだ完全では無いようで、完成した家もまばらに建っている為、とても閑散とした場所だと感じた。


 『伊町宅予定地』の木札が立つ場所で車が停まる。ここは予定地となっているが、その木札の後ろには、他の家と大差ない大きな家が建てられていた。この家が完成した状態に見える事から、表に立つ木札は、恐らく、ボク達が訪れた時に分かるように残されたモノだろう、と推測出来る。


 屋敷とも呼べる家は、ボク、洋子さん、ゆうこさんの三人で住んでも、まだ部屋の空きが残る程広くて大きい。一応、屋根裏部屋を入れた三階建てとなる。


 ゆうこさんは、静かな部屋がいいとの事で、三階に当たる、屋根裏部屋に決めていた。ボクも自分の部屋を決めようと思い、二階部分の各部屋を見て回った。和室が無いのが少し残念だ。

 因みに、一階の家具は完備されていて、二階の各部屋にはクローゼットが一つ必ず置いてあった。ベッドがある部屋は限られていて、シングルが二部屋にそれぞれ一つずつ、ダブルが一部屋となっている。


 ここが、ボク達の住む家として建てられた事を考えると、ダブルの部屋は、洋子さんとボクの寝室だと、最初から決められていた様なものだ。部屋を決める楽しみが無くなった。

 しかし、洋子さんと離れて眠るのは、最早考えられない程、当たり前の事になっていた為、家を用意してくれた方々に感謝して、素直にダブルの部屋に決めた。洋子さんは満足の様子だ。


 言い忘れていたが、家には漏れなく車が一台ついています!と智さんが言っていたので、後で確認する事にしている。先ずは部屋の模様替えと、荷物の整理が先だ。

 荷物とは、ボク達のリュックの中身の事ではなく、マツバコーポレーションからの支給品の事だ。中身は日用品だが、一緒に入れられていたカタログに載っている物なら、何でも用意出来るらしい。しかもタダ!



「稜くん見て!ほらこれ!ね、見てってば〜、もぅ。」


 荷物の整理をボク一人にさせておいて、カタログを見ていた洋子さんが、『ペット』のページを開いて見せてくる。先程からずっとこうだ。

 正直、いつまでここにいるか分からないし、洋子さんが欲しがるペットは犬だし、あまり乗り気になれないでいた。犬が嫌いな訳ではない。人より寿命が短い為、別れが辛いのが嫌なのだ。


「もう!もうもうもうもう!稜くん!怒ったからね!もう!」


 いやいや、そんなに可愛く怒られても……。洋子さんが喜ぶならそれもいいかな…。


 若返ってからの洋子さんは、以前に増して凄く可愛く見え、つい甘くなってしまうのだ。


「分かった、洋子さんの笑顔が見れるなら、好きにしていいよ。」


「わぁ!ありがとう!稜くん大好き〜!笑顔見せるよ〜、ほらほら〜。」


 笑顔を近くで見せようと目前まで迫り、片付けを邪魔している洋子さん。笑顔は嬉しいのだが、手伝ってくれたらもっと嬉しい。そう思いながら片付けを進めるボクに、容赦なく頬をグリグリ押し付けてくる。


 洋子さん……犬じゃないんだから…。


 洋子さんがカタログで、これから増える家族を選んだら、ウチには犬が二匹になる様なものだ。と、またアホな事を考えてしまった。


 やっと片付けが終わり窓の外を見ると、夕方になっていた。支給品は結構な数の日用品が用意されていた。それらを仕分けして各部屋に置いて回ったので、時間もそれなりにかかった様だ。


 一息ついていると、一階から洋子さんがボクを呼んでいる声がした。疲れた身体にムチ打って立ち上がり、一階へと向かった。声がする方へ向かうと、二枚ドアが開かれた玄関に川上さんが立っていた。珍しく私服姿の様だ。


「こ、こんにちは!片付けは、お、終わりましたか?」


 青が色褪せた感じの細いジーンズに、おヘソが見えそうなシャツ、その上に皮のジャンパーを着込んだワイルドな感じの川上さんが、いつものクールさのカケラもなく、モジモジといった仕草を見せながら、そう尋ねてくる。


「はい、今やっと終わらせたところでした。どうぞ中に入りませんか?」


 玄関で立ち話をするよりも、中でゆっくり話でもと思い誘ってみた。


「い、いえ!その、しょ、食事を用意しましたので、その、一緒にどうかと、その思って。」


 どうやら食事のお誘いだったみたいだ。これから作ると遅くなりそうなので、申し出を受ける事にする。


「凄く有難いですよ。これから作ると大変ですからね。川上さんの手料理も楽しみだし、是非お伺いさせていただきます。」


「本当ですか!ありがとうございます!私の家は、すぐ近くなので、歩いて案内しますね!」


 ボクの返事にお礼を言ってくれる川上さん。お礼を言うのはこちらなのだが……。


 屋根裏部屋にいる、ゆうこさんを連れて、洋子さんが戻って来るのを待ち、揃ったところで川上さんの案内で彼女の家へと向かった。


 思っていた通り、彼女の家の造りもボク達の家と変わりなかった。間取りが広いキッチンのテーブルの上には、既に幾つか料理が並んでいた。


 適当にテーブルにつくように言い、オーブンの中身を取り出しに掛かる川上さん。両手で引き出された大きな皿には、映画のクリスマスシーンに出てくる、『鳥の丸焼き』みたいだ。シチメンチョウなのだろうか?

 その大皿は、テーブルの中央に置かれ、川上さんが切り分けて配ってくれた。全て自分で用意したんだと言っていた。


 本日のメニューは、シチメンチョウの丸焼き、あさり貝のクリームソースパスタ、ミートボール、野菜サラダ、カボチャのポタージュ、バケットにチーズフォンデュ。思いつく限り作りました!と聞こえてきそうなボリュームある食卓だ。


「凄く美味しそうですが、一人で大変だったでしょう?」


「いえ、伊町さんのこ…あ、えと、伊町さん達の歓迎会をと思ってましたので、料理も楽しかったです。」


 ボクの(ねぎら)いの言葉に、嬉しい返答をくれた川上さんが、少し照れている様に見えた。褒められたのが嬉しかったのかもしれない。そう感じていた時に、洋子さんがワインを開け、それを、本日一番の功労者である、川上さんのグラスから順に注いでくれる。


「えと、伊町さん達ようこそ!『松林半島』へ、歓迎いたします!カンパーイ!」


 その川上さんの音頭で、皆んなで乾杯して、食事をいただいた。どれもお店で食べるより美味しかった。中でもシチメンチョウの丸焼きは最高だった。


 食事が済んだ後、川上さんの誘いで少しお酒を飲む事になったのだが、洋子さんはワインで既に酔っていた様子で、川上さんが勧めた『ブランデー』一杯で、ベロベロに酔ってしまった。


 食事もいただき、夜も遅くなってきていたので、洋子さんを連れてお(いとま)する事にした。

ご馳走してくれた川上さんにお礼を言い、ボク達は新居へと戻った。


 酔った洋子さんを二階まで運ぶのには、かなり苦労させられた。酔っているから仕方ないのだろうが、やたらと絡んでくるのは止めてほしいものだ。大半がヤキモチからの愚痴だったが。

 川上さんは確かに綺麗な人だが、このボクの洋子さんへの想いを、もっと信じてほしい。


 やっと眠ってくれた洋子さんを見ながら、二度と深酒させない!と心に誓う。しかし、ボクも少し飲みすぎたみたいだ。喉がやけに水を欲しがっている。


 キッチンへと下りていき、冷蔵庫にあったミネラルウォーターを飲む。お酒の後の水は、いつもと違い、美味しく感じるのは、ボクだけだろうか?

 そんな事を考えつつ、部屋に戻ろうと階段を上がる途中で、ゆうこさんが下りてきた。すれ違いざまに、喉が渇いたの?と聞いてみたら、『音がしたので様子を見に来た』と答え、すれ違うボクの後ろから抱きついてきた。


 ちょ!ゆうこさん!?えええっ!?



主人公に付き纏う女難は未だはれていないのか!?

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