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42 情報収集

待っていましたギャンブル街!が、しかし、今回人探しの為にやってきた主人公。尋ね人はいずこへ!?


 夜も休む事なく(うごめ)く街。通りには燦々(さんさん)と輝くネオン。沢山の電球が、流れる様に点灯消灯を繰り返し、見事に店名を描く。通りに落とされたネオンの光彩が、眠らない街を強調している様にも見えた。ボクは、その街灯が要らない通りを歩いて人探しをしていた。

 道行く人や、店頭に立つ呼び込みのお兄さん、店の用心棒らしき風貌の男。他にも沢山の人に尋ねて回るが、一向に手掛かりが見つからずにいた。


 ボクを探す、松林夫妻と思われる人達の様に、こちらにも写真など分かり易い物があれば、もう少しやりようがあったと思われる。しかし、無い物ねだりをしても仕方ない。ここは根気よく聴き込みを続けていくしかないのだ。


 聴き込みを続けている途中で、この街に似つかわしくない店を見つけた。掃除婦さんの話しからして、尋ねられたのがバーだと言う事から、あまり関係が無さそうだが、もしかすると…。という事も、無きにしも非ずだ。ここは聴き込みの基本通り、シラミ潰しに回ろう。桜の大門が入った手帳を懐に忍ばせた、刑事のような気分になっていた。残念だが、テーマ曲はない!


 『骨董商 銀河堂』 そう書かれた看板の、店のドアを潜ると、その正面には、いかにも!と声が聞こえてきそうな、『鎧武者』と札がついた鎧が飾られていた。

表通りとは違う、店内の薄暗さのせいで、余計に不気味だと感じる。


 所狭しと物が置かれた店内を奥に進むと、これまた骨董品とも言えるレジスターの向こう側に、頭の薄い初老の男が座っていた。

その男の目はボクをジッと見つめ、値踏みをしている様に見えた。


 お客では無いんだけどなぁ…。そんな目で見ないでよ…。


「ふん、買う気が無いなら出ていってくれんか。」


 お伺いを立てた言い方ではなく、吐き捨てる様にボクに言葉を投げた。少し苦手なタイプだと感じる。


 ホームセンターにも色々なお客さんが来るので、これでも、それなりに対応し、上手く立ち回ってきたつもりだ。だが目の前の男は、それを片手で捻り潰すぞ、と言わんばかりの雰囲気を纏っていた。基本、争い事を好まないボクとしては、この手の人間に弱い。そう、相手が攻撃的なのだ。


 ここは関係無さそうだし、他を当たるか、と、聴き込みの基本はどこへやら?の考えがボクの足を入り口の方へと向けさせる。


「アンタ…、ちょっと待て。」


 初老の男が呼び止める。その口調はやはり、命令そのものと取れるものだ。その声に従い立ち止まるボクの背中に、続けて男が投げかける。


「アンタを探している男が来た。情報を寄越せば金をやると。」


 なるほど、探していた人物がここに来ていたという事か。この男は金の為に、ボクを売ろうとしているのか。好感が持てる男では無いと思っていたが、今回はボクの感覚も捨てたものではないと分かった。


「そうですか、実はこちらもその男を探しているところなのですが、私が莫大な借金をして、お返ししようと探していたのです。そのせいで、おそらく彼は金など払えませんよ?」


 この男、まだ何か知っていそうな予感がしたので、咄嗟に考えたデマで揺さぶりをかけてみる事にした。


「ほぅ、そうかい。しかし、アンタが返せば、ワシに払う金は出来るだろうさ。」


 いい答えだ。待っていましたと言わんばかりに、既に考えてあった言葉で反撃する。


「それはどうでしょうか。ボクはこうして探してまで律儀に返す男ですが、彼は……何というか、約束を守るタイプではないと記憶していますが。」


 我ながら 、ニヒルな詐欺師を気取っている事が心苦しい。刑事から一変して犯罪者へ…。洋子さんが泣くよ。


「ほお?それはどういう事かな?」


 よし、乗って来た。 返す男の語尾が上がったのを、ボクは聞き逃さなかった。明らかに先程までとは違う口調だったと確信して、男の興味がこちらに動き出したと、山を張って勝負に出る。


「……、この話しに興味が?」


「あ、あぁ、いや、ただ聞いてみただけだ。」


 仕込みは順調だ。明らかに不意をついたボクの言葉に対し、初老の男の顔に動揺の色が伺えた。なかなか手強い爺さんだ。


「いえ、先にウッカリ、口にしてしまったのはボクですから、聞いていただけるのであれば、お話ししましょう。ただし、店主には少々損な話かもしれませんが?」


 更にソワソワして目が泳ぎ、動揺が隠しきれなくなってきた様だ。先程から、手元の眼鏡を意味なく弄り回している。やがてそれは正しく耳に掛けられ、そのレンズの向こうの目が、興味を示した色に変わっていた。


「いいだろう、アンタの話をきかせてくれ。」


 ボクの策略を見透かしたような口ぶりは、相変わらず強気なものに感じられた。プライドの高い爺さんだ。


「では、失礼して。まず、ボクがこうして探している原因は、その男にあります。金を返す日時と場所を決め、その男と約束をしていたのです。ですが、男はそこに現れませんでした。それは今に始まった事ではないのです。以前から男はそうして約束を違えるのです。」


「なるほど……。アンタの言い分は分かった。で…ワシは何を?」


 さすが爺さん。最初からなのか、途中からなのか定かではないが、知っていてワザと話しに乗ったフリをしていたんだな。何者だよ爺さんっ!


「ええ、そこで提案なのですが…。その男についての情報を、ボクがここで今!買いましょう。まだ何かご存知なのでしょう?店主。」


 初老の男がニヤリと笑った。お互いに、確信を得たり!というところだろうか?直ぐに返答せずに、ボクの目を意味深な面持ちで見据えている。


「ブワッははははは!!聞いていた話しとは大違いじゃないか!アンタ固いなぁ!柔軟にいかんと!」


 おいおい……人格が壊れてるよ?どうしたー……?


「あぁいや、すまんすまん!ワシは『松林 銀河』アンタが言う男のイトコだ!わっはははは!」


 ええええええ!?ボクの芝居がぁぁぁぁぁ……。


「ああー。笑わせてもらったわい!アンタがワシを見るなり怪訝そうな顔をするからつい…。イジメてみようと思ったんだが。うん、なかなかやりおる!」


 穴があったら入りたい…。イジメはんたーい…。


「それはそうと、智が探しているのは本当だ。あいつの組織とやらが、んー…、あれだ、潰されたっちゅうてな。チカラを貸して欲しいと言ってたぞ!」


 やっぱりボクを探していたのは松林夫妻だったのか。潰されたって、他のメンバーはどうしたんだろ?


「ああ、そうそう、これだ!連絡先のメモだ!」


 銀河さんは、骨董品のレジの受け皿から、小さな紙切れを取り出して、ボクに渡した。小さく電話番号が書いてあった。早速電話をかけてみようと、メモを片手にボタンを押していると、銀河さんが携帯に手をかざし、教えてくれる。


「今は繋がらんぞ!ここは圏外だからな。帰ってかけるといい。あと、報酬は幾らだ?」


 とるのかっ!!まんまと騙した癖に〜…。人の事言えないけどさ。


 金ー!!と叫ぶ銀河さんに頭を下げてお礼の言葉を伝えた。それでも叫んでいたが、聞こえないフリをしながら店を後にした。 とんでもない爺さんだ!



 色々あったが、無事確証も得られ、ホテルへと戻ったボクは、洋子さんに今まであった事を報告した。置いていかれた事に拗ねた様子だったが、以前の様に、キチンとバスタオルを巻いて、お風呂に一緒に入ろうと提案した途端に、上機嫌になり、ボクを引きずりながらお風呂へと向かった。


 因みに、若返った洋子さんは、肌の質が上がったと喜んでいたが、少し小さくなったかな?と胸の事をボクに聞いてきた。気のせいだとボクは思う。勿論、そう伝えた。


 肝心の電話をすっかり忘れていたのは、内緒でお願いします…。

まんまとやられた主人公!せっかくの策も徒労に終わる。次回はちゃんと電話するのか!?

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