41 女難の相と方言情報
善から人の為ならず!と説明を受けた主人公。繰り返し考え自分に結論を出した。と思った矢先に、災難続き!?
夜中に呼び出され、説明された後、『善』さんから結構本気で怒られた。洋子さんだけでなく、ゆうこさんまで助けたのに、感謝の言葉はおろか橋本の事で文句まで!と、礼儀を欠いていた自分が情けなくなった。
確かに、『善』さん、『悪』は、人々に能力を与え、それを見守るだけの存在なのだ。しかし、そこを曲げてまで、ボクに協力してくれた『善』さんに、失礼な態度だったと改めて反省した。そして、その能力を授かった人間は、その使い方に注意を払わなければならない。組織が悪い手本だ。
ここまで、ピンチの時は、何かと『善』さんに頼ってばかりだった。自分達でちゃんと解決していかないと。
朝になり、夜中に『善』さんが言っていた事を、洋子さんにも伝えておいた。『善』さんの解釈で言うと、犯罪者であれ、善人であれ、その人の為にならない人助けはしない事。今回の件は、組織を潰す事は組織の為ならず、我関せずだと言っていた事だ。あと礼儀を欠いた事。
ボクから話しを聞いた洋子さんは、かなり反省していた。そういえば、普段の洋子さんは、他人に対して礼儀正しかったと、病院での事を思い出していた。仕事柄そういうものなのかもしれない。
ゆうこさんが目を覚ました。お昼過ぎにやっと起き上がれる様になったみたいだ。『還りの鈴』を使ったのに、襲ってきた先の戦いは、記憶にないと言っていた。ただ、洋子さんの屋敷での事は、何となくという感じで、ボンヤリと覚えている様子だった。
それと、若返った洋子さんを見て、凄く懐かしんでいる。ちょうどその事を今話しているようだ。
「ちょっと洋子、稜くんが好きなのは分かってたけど、自分だけ若返って、しかも婚約だなんて!言っておくけどね、昔は私の方が……。」
違った…。ゆうこさんが懐かしんでたのは、目の前の洋子さんに、若かりし自分を見たんだ。それを懐かしんでたようだ…。今の会話がその証拠だ。まだブツブツ言っている。
が、しかし、久しぶりにこんな二人を見るなぁ。とボクが懐かしんでどうする。
「えへへ。過去の話しでしょ?わ、た、し、今若いもん!」
あ〜、洋子さんがそんな言い方するから。ゆうこさん顔真っ赤にして怒ってるよ?
「ふん!洋子!あんたなんて、お、こ、ちゃ、ま、よ!稜くんだって私みたいな歳上がいいのよ!」
おいおい……。巻き込まないでよ…。ほら、洋子さんが…。
「りょ、稜くん!!おばちゃまゆうこより私よね!?おばちゃん黙っててよ!」
「な!なによ!?ガキンチョ!すっこんでなさい!」
ぐわぁぁ!巻き込まないでくれ〜…。女性の喧嘩は壮絶だぁ…。今のうちに……
「稜くん!!」(女性二人)
逃げ出す事が許されなかった…。たすけて…『善』さん…。
逃げ出そうとしたボクに対する、二人のすごい剣幕に、ボクは既に『善』さんのお説教を忘れ、助けを求めてしまっていた。う〜。そういえば、『善』さんも女性だ…。女難の相でも出てるのか!?
何とか女難の相を振り払いながら、こうして夜を迎え、豪華なお風呂に……お風呂に?
「わっ!!洋子さん!?えええ!?」
いつの間に入ってきたのか見当もつかないが、洋子さんの事だ、忍びの技でも使えるのではないだろうか?と、そんな事気にしている場合じゃないのだ。ちゃんと隠すとこ隠してくれてるけど…
水着だと思ったら、それ!?下着じゃないか!!洋子さん!!!もぅ…。
「婚約したもんね〜。若いし!」
婚約したらこういう事していいの!?いやいや、いくらこの歳で、経験がないボクでも、それくらいの常識分かる!!それに、若いし!じゃないよ!!余計ダメだよ…。
「稜くん、もしかして……経験ないの?」
だーー!!!『善』さんかっ!心読んだ!?違うよね!?
「な〜んだ!アハハ、私もだよ〜。えへへ。」
一緒かっ!!意味ありげに聞くなっ!でも…えへへ。は反則だ…。
結局湯船から上がれずに、ボクはベッドへと運ばれていた。素っ裸でだ。朦朧とする意識の片隅で、洋子さんとゆうこさんのはしゃぐ声が聞こえた。ような気がする。
それからしばらく、ボクはお守りを持って行動する事になる。勿論、女難の相から身を守る為だ。意外と効果はあった。
そのお守り、売店で買ったのだが、売り子さんが『どれにしますか?』と聞いてきたので、カラフルなお守りの中から、赤いのを選んだ。赤いのがお守りだ!という、固定観念からだ。それをポケットに忍ばせておいたら、トラブルが減った。という事だ。因みに、そのお守りに、『安産祈願』と刺繍が施してあるのを、随分後で知る事になった。
「しっかし、あんたもオメデタイよね〜!ぷっ!『安産祈願』だって!ぷぷっ!気が早いっての!」
う〜…。この、口が悪いのは、ゆうこさんだ。ボクが気付いて嘆いた時から、ずっとこれをネタにイジメてくる。
「いいの!稜くんが私の為に買っておいてくれたのよ。」
そう言いながら、手の中にあるお守りを、眺める洋子さん。
失態をごまかす為に、洋子さんが言ってるような事をほのめかして、お守りをあげたのだが、ずっと肌身離さず持っている。取り出してたまに、ああして眺めているようだ。その度にゆうこさんが毒を吐くのだ。
言っておくが、ボク達二人はまだ…未経験だ。
こんな感じで、ボク達は比較的のんびりと過ごしていた。ゆうこさんの記憶がハッキリとするまで、組織がどこで暗躍しているか分からない。動きようがないのだ。
しかし、洋子さんは毎度の事だから慣れたけど、ゆうこさん?何も洋子さんと張り合い、貴女まで下着姿でウロウロしなくても……。それを洋子さんが気にしていないのは、意外だったが。
このホテルにも、随分馴染んできた。ここに来てから、既に半月程になる。毎朝十時頃に来る、掃除婦さんには何か誤解されている。『二人も連れ込んで』とか、何やらブツブツいつも言っている。勿論、ボクの目の前では愛想がいい。さすがだ!
そして、その掃除婦さんが、ギャンブル街に詳しくて、色々聞かせてくれるのだ。大半は自分が大儲けした話しが多いのだが、今朝聞いた話は違っていた。
「間違いないんですか?」
掃除婦さんの話しを聞いて、念を押す様に聞き返す。
「ええ、間違い無いなかとばい。兄さんの写真ば持っちょらしたばい、そいで名前ば聞きよらしたばい」
言葉が方言で、少し聞き取りにくかったが、どうやらボクを探している人物がいるみたいだ。ボクは、その人物の特徴を覚えていないか聞いてみた。
「んー……。顔は覚えちょらんばってん、女ん人やったばい。あ!バッグからお菓子ば出して、ごっとい食いよったよ。」
わ〜お!凄く難易度が高い方言だ〜。ん?バッグ?お菓子?
「あー!そうそう、横に男もおったばい!紺色のごたる男やったばい。」
聞き慣れない方言だったが、何とか理解できた。簡単に言うと、『良く食べる女』に『紺色の男』そこから導き出される答えは、松林夫妻か!やっぱり生きていた!
掃除婦さんにお礼を言って、洋子さん達にこの事を伝えに行く。
洋子とゆうこ。一緒にいる限り、主人公の勘違い女難の相はなくならない!それを知らぬは主人公ただ一人!気付く時がくるのか!そして、松林が探す理由は!?




