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37 島へ

またまた舞台は島の居住区!?しかしそこは……


 〜島 居住区〜


 『善』さんの元でお世話になり、五日目の朝を迎えた時。島の皆んなに事情を話し、きちんと謝罪をする事を決めた。洋子さんもすっかり元気になり、あの時の、自分の失態と向き合う覚悟が出来たと、言ってきたからだ。その意向を『善』さんに伝え、島に送ってもらったのだが、島の様子はあれから一変していた。更に酷い状況になっていた。


 さすがにこれは、洋子さんが暴れた、では説明がつかない。しかし、洋子さんは自分がやったのかもしれないと言って、ボクの話しを聞こうとしない。


 居住区は、ポッカリ空いた天井から覗く、太陽に晒されて、その倒壊振りを露わにしている。不幸中の幸いだと思ったのは、人の姿が何処にも無いからだ。

 先程から瞑想しているような状態の『善』さんが、浮かんだまま、こちらに滑るようにして近づいて、唖然とするボク達に、状況の説明をし出した。


「いくつかの、能力の痕跡を感じますよ。そして、『悪』の気配が少し。あの目立ちたがり屋が、一人で暴れた可能性もありますが、あの子もそこまで馬鹿ではないでしょう。直接人を傷つけたりはしない筈ですから。」


 まるで知り合いを語る口ぶりで、『善』さんが『悪』を擁護しているように聞こえた。説明から考えられるのは、橋本が率いる組織の仕業。としか、今は考えられない事になる。何の為にここまでやるのだろうか?邪魔者を片付けるにしては、大雑把な仕事だと思うが。


 おそらく侵入経路は空から。というより、ただ爆弾を落として穴を空け、次々と同じ位置に爆弾を投下した様にしか見えない。しかし、能力の痕跡があると言っていたし、爆発する能力?もあり得なくはない。


 『善』さんは、確かめたい事が出来たと言って、一旦あの場所に戻ると言い残し、消える様に去っていった。ボク達は、自宅があった辺りに向かい、自分達の荷物を回収する事にした。


 荷物といっても、着替えや洗面用具といった、日常のものだ。また買い揃えるのは面倒だ。洋子さんは、ボクのリュックに自分の物まで詰め出した。え〜!と駄々をこねていたら、その辺りに散らばって落ちてた武器を拾って、自分のリュックに詰め込んでいた。

 このリュック、ボクのは、洋子さん救出の時に購入したものだが、洋子さんのは、二度目に訪れた宿の街で購入したものだ。ボクとお揃いがいいとワガママを言って、お店の人が使用していたのを、無理に譲ってもらった物だ。ボクが『赤』で洋子さんが『茶』だ。因みに、缶バッジもお揃いの、『猿』が笑っているアニメ顔がプリントされたものだ。


 支度が終わったボク達は、『善』さんの迎えを待っていた。この島にいると、本当にやる事がない。と感じる。元自宅のドアの残骸が、ちょうどいい具合に倒れていたので、そこに並んで座った。

 そうやって、改めて周りを見渡すと、燃えた痕跡が無い事に気付いた。目の前の倒壊振りを見る限り、爆発したとしか思えないのだが。洋子さんも気付いたようで、何でだろう?と尋ねていたが、答える事は出来なかった。


 あれから一時間経ったが、迎えは一向に来ない。というか、迎えに来ると言ってなかったが、ここに放っておかれたのだろうか?

洋子さんと、この事を話し合って、『もしかしたら、桟橋に船が残ってるかも!?』と、言うので、何もやる事が無い今は、確かめに行くのは全く問題無かった。


「洋子さん!あったよ、あれ見てよ!洋子さん凄いね!」


 この桟橋は、居住区の端にあるので、大丈夫かもしれないとは思っていたが、本当に船が残ってるとは、凄くツイている。褒められた洋子さんは、『えへへ。』と笑いながら、ウネウネしていた。


「洋子さん?もしもーし?これ運転出来る?」


 自分の世界に飛び立っていく洋子さんを引き戻し、船の操縦が出来るか聞いてみたら、大丈夫!と親指を立てていた。この世の中で、乗れない物の方が少ないらしい。さすがだ!


 桟橋から見える、外へ続く通路の入り口へと、洋子さんが船を走らせる。オートバイの時もそうだったが、急発進が好きな洋子さんだ。

通路はぐねぐねと曲がって伸びていて、川上さんの案内で通ってきた最初の通路と全く違う。船が通るだけあり、天井も高い。勿論、コンクリートで出来ていて、アーチ状のトンネルになっている。


 洋子さんが走らせる船が、スポーン!という感じでトンネルを抜ける。急に明るくなった視界が白く霞んだ。ドラマで見るような海鳥が鳴きながら、海上をフラフラ旋回していた。余談だが、この海鳥は、堤防で釣りをしていると、たまに釣れるらしい。さしずめ、川釣り、海釣り、空釣り?だろうか。


「だーっっ!!洋子さん!ほらほらもぅ〜!」


 気持ちよさそうに向かい風を受けている洋子さんだったが、今日は膝あたりでフワフワしている『スカート』だった。風に煽られ、盛大に丸見えになっていたので、慌ててボクが押さえたのだ。


『えへへ、ごめん〜。でも稜くんしかいないよぉ?」


 いや、そう言う問題じゃありません。羞恥心を持ちなさいよ。……。今日は白か……。


 日増しに成長する破廉恥病が、今後最大の敵かもしれない。ところで洋子さんは、どこに向かっているのだろう?風が気持ちいいのは分かるが、行き先を決めずかっ飛ばすのはどうかと…。


「ところで稜くん、どこに行く?」


 うぅ…キミは『善』さんかっ!心を読んだのか?


 そんな事はあり得ない。相思相愛のボクらが生んだ以心伝心である!という事にして、とりあえず、島に戻り、周囲の探索をしてみよう!と提案した。その提案に、親指を立てる洋子さんが、舵を勢いよく回し、急旋回する船。その弾みで船の端まで転がるボク。押さえが無くなりはためくスカート。運転も、見えてるアレも豪快だ。


 かなり島から離れていたので、少し時間が掛かったが、島の沖合い二十メートル手前、といったところだろうか?その距離を保ちながら、周囲を緩やかなスピードで巡回する。その船の、後部にある座席に座るボクは、鼻血が止まらず、鼻ティッシュでフガフガしていた。いやいや、転がった時に打ったからだ。打ったのだ。


「稜くんあれって、動くかな?」


 鼻ティッシュのボクに、洋子さんが尋ねてきた。その姿を見上げると、船の先端の方を指差していたのが分かった。転ばないようにと、腰が引けてるが、慎重に立ち上がり、その指が指す方を見て見る。


「あ!そのままだったんだ、あのヘリ。」


 そこに見えたのは、工藤さんが操縦していた、『ただのヘリコプター』だった。

洋子さんに、そこに行ってくれるようお願いする。近くまで行くが、ヘリポートは意外と高く、船からは届きそうにないので、島の陸地近くで、船から飛び降りる羽目になった。

 陸地に着いたが、ずぶ濡れになったので、周囲を一応確認して、背中合わせで急いで着替える。


 ウィィィィ…ヒュンヒュンヒュン……キィィィィ……ン…パタパタパタパタ…


 操縦席に座る洋子さんが、パチパチと小さい何かのスイッチレバーをいくつか弾き、甲高い音と共に、エンジンが始動する。既に勢いに乗ったプロペラが、空を切る断続音を響かせている。いかにも早く乗れと言わんばかりの、けたたましい音だ。


 洋子さんの横の席に乗り込むと、大きなヘッドホンを渡された。指示に従い装着すると、ヘリの音がかなり遮断されたのが分かった。顎先に伸びるマイクで会話も出来るようだ。ヘッドセットだったと知る。映画のワンシーンに出てくる、脇役俳優の気分が味わえた。カッコいい主役は洋子さん。


 途中、誰かの声が聞こえてきたが、洋子さんは、許可が無いから、適当な場所で乗り捨てると言って、ボク達は、マスター達と出会った、道路沿いの休憩所近くにある砂浜に降りた。誰かが来る前に逃げようと、洋子さんに引きずられる形で、砂浜を後にした。遠くには、パトカーのサイレン音が聞こえていた。



『スーパーヘリ』ではなかったが、主人公達は見事島を脱出!これからどうする?

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