35 大暴走の訳
突然現れた善が語る暴走の理由!?主人公はどう受け止めるのか!
原因がボクにあるとして語る『善』さん。ボクが何をしたのか悩んでいると、思考を読んだと思われる『善』さんが答えた。
「ふふふ。原因の一つ…かもしれないでしょう。しかし、予兆はありました。アタシが与えたチカラは、本来、『悪』が人々に与えているものです。同じチカラなら、『悪』が与えても、アタシが与えても、後で起こる影響は、良くも悪くも、何ら変わりないのです。大切なのは使う時の心構えですよ。」
影響? 確か、『悪』に授かったチカラの影響が、その人を攻撃的な性格にさせる。と母が言っていたアレの事か。
「そう、この子は、貴方を危険に晒した組織、何より父親を憎んでいました。その気持ちのままチカラを使い戦えば、こうなってしまうのです。しかし、この子には、貴方がいました。護るという心が、それを抑えていたのです。」
そうだったのか。理解は出来たが、洋子さんはこれからどうしたらいいんだ?また戦う度、憎しみが出ないとも限らない。
考え込むボクに『善』さんが問いかけてきた。
「貴方が覚悟を決める必要があります。この子の心がいつも叫んでいたのをアタシは知っているのですよ。」
覚悟とはなんだろうか。洋子さんを命がけで守る覚悟は出来ている。
「そうではありませんよ。この子がああなったキッカケは何でしたか?」
ええ?あぁ、川上さんとボクの様子が気に入らなかった…から?
「ええ、そうですね。何故気に入らなかったのかしら?」
何故? その問いに思考を巡らせる。そういえば、川上さんに申し出を受けた時、洋子さんに『あの子を好きにならないで』と約束させられた。好きになったと思われていたのかな?違うのだが。
「多分、ボクが川上さんを好きになったと思ったから?だと思います。」
思考ではなく、今度はちゃんと自分の口で答えた。
「好きになったと思い、何故怒るのでしょう?」
ぐわぁ、何だか尋問されてる?えっと……。不安に…なる?
「そうですね、貴方が不安を与えているのですよ?でもね、二人の間に確かなものがあれば、その不安は感じなかったり、和らいだりするものです。今回の事は、先の戦いが、既にこの子を蝕んでいたのでしょう。先程のこの子は、ヤキモチから、あの女性に憎しみに似た心を抱いてしまいました。そこで…ですが、この子の気持ちは知っていますね?それに貴方は応える必要があるのですが、その覚悟がありますか?」
あ……そうか。ボクはまだ、洋子さんの気持ちに応えてないや。それが不安にさせているのか?そしてその不安が、組織や父親に対して生まれた『憎しみ』という気持ちに拍車をかけた。という訳かぁ。最近怒りっぽかったのは、そのせいだったのかなぁ?
確かに口にして、気持ちを伝えた事が無かった。救出した時の洋子さんに聞かれた時は、突然過ぎて、言葉が出てこなかったのを覚えている。
洋子さんも口に出してた事は無いはずだが、こういうのは男が先に言わないとダメな時がある。洋子さんは、ボクの言葉を待っているのかも知れない。
「確かに、まだ伝えていません。だけど、今はまだ戦っている最中だから、落ち着いてからと……。」
正直なところ、戦いが終わらないと、落ち着いて話せない。それどころでは無いと思う。
「貴方の意見も最もだと思いますよ。そうではなく、安心させてあげなさい。約束でいいのです。無理強いはしませんが、そうしないと、先程の様な些細な事で、いつまたこうなるか分かりませんよ?」
なるほど、ヤキモチでまた豹変されても困るしね。
つまりこういう事か?この戦いが終わったらオレ…みたいなやつだな。
うん、ボクは死なないし、大丈夫だ。
「ふふふ、決まったようですね。この子を起こしますよ?いいですね?」
もう迷う事は何も無いので、黙って頷いて、覚悟を見せた。
「では、フラグが立ったという事で。」
『善』さんがそう言った後に、洋子さんの身体から、小さな光の粒が弾け飛び消えていった。
自分でも分かってますが……フラグとか…やめてください。
「う……、ん……。あれ?ここ……何だか見た事が……。」
『善』さんが、起こすといっていたが、能力を使って何かしてたのだろう。光の粒が消えた後、洋子さんが普通の状態で目覚めたのがその証拠だ。不思議なチカラを持っている人だな『善』さん。
「洋子さん、気がついた?身体は大丈夫?」
話しを切り出したいのだが、上手くそこに持っていけない。月並みな言葉を吐いてしまった。何が言いたいのか、自分でも分からなくなった。
「り、稜くん。…あ!私……島で…。」
「うん、洋子さん、島は大丈夫。ボクは洋子さんが無事ならそれで…。」
島の居住区での事を覚えている様子だが、どこまで覚えているのかは見当がつかない。そんな洋子さんに、またもや切り出せずに口ごもる。今更気付いたのだが、『善』さんの姿が見当たらない。洋子さんに姿を見られると、何か都合でも悪いのだろうか?
「うん…ありがとう。りょ、稜くん。おウチ、ごめんなさい…。」
家を壊してしまった事は覚えているみたいだ。謝罪の言葉が重く感じる。洋子さんが、俯きながらも続けて話し出す。
「島の人達…怪我してないかな?その……川上さんとか…。」
「うん、彼女は直ぐに連れ出したから、怪我はないよ。安心して。」
彼女の心配をしてる言葉だと判断して、助け出した事を伝えたが、洋子さんが小さく肩をビクッとさせ、正座した膝の上で組んだ両手を解き、左右の手をそれぞれ握り込んでいる。
「り、稜くん…。あの、彼女……、か、川上さんの事……好き…なの?」
そう言った洋子さんの目が、力強く閉じられていた。ボクがどんな答えを出しても、ちゃんと聞く。という覚悟がみえた。応えないと!その気持ちに。
「よ、洋子さん!」 「はい!」
覚悟して言おうと名前を呼んだら、力強く返事をされ、驚いて言葉が切れた。
が、頑張らないと!
少し間が空いて、その為か、洋子さんの緊張感がいっぱいいっぱいの様子だ。
「あ、あのね…、ボクがごめんだよ!」
だーー!!何言ってんだボクは!!意味分からないじゃないか!
「それは、川上さんが……その…。」
ほらみろ!洋子さん誤解してる!早く言わなきゃ!
「ち、違う!洋子さんに、い、今まで、ちゃんとボクのき、気持ち伝えていなかったから、ご、ごめんなんだ!」
「え?…稜くんの気持ち?」
「う、うん。その、ボクは、えっと……」
あーー!!あのそのやめろボク!!
「うん、ボクを助ける為に、地下通路に隠してくれたよね。あの時から、ずっとずっと、洋子さんが大好きだ!」
洋子さんの顔は驚いてるが、ボクの言葉を待って、ずっと見つめてくれていたその瞳には、涙が溢れそうなくらい溜まっていた。そして、その涙が溢れ出すと同時に、ボクに語りかける。
「でも、でも、グスッ、年が離れてるよっ、ふぇっ、うぅ、おばさんだもん…グズッ…」
途中、嗚咽につっかえながら、不安だったんだろうなぁ、と思わせる様な言葉をボクにぶつけてくる洋子さん。拗ねてる様にも聞こえてしまう。
あぁ、やっぱり大好きだと、心から思った。
「洋子さんは、その辺の二十二歳より綺麗だし若いよ。気にしないよ。」
「ヒグッ、うぅ、でも、でもね、私が六十になったら、グスッ、稜くん…うっ…離れるよ。」
う〜……。どう言えば伝わるんだ?あ、『善』さんが言ってたフラグか!
あ、いやいや、約束だ!
「洋子さん、今は戦いが優先されるけど、それは、敵なんか気にせず暮らせるようにだから!よ、洋子さんと!!だ、だから、それがちゃんと終わったら、け、け、結婚しよう!!」
フラグ確定。 チーン。
更に驚いた顔の洋子さん。涙が止まる程驚いた様子だ。あ、また涙が。
「稜ぐーーーん!!ワァァァァン!びぇぇぇぇっん…」
凄い泣き崩れ様で、勢いよく抱きついてくる洋子さん。オッケーととっていいのかな?と自分で納得して、洋子さんを抱きしめながら、なだめる。ボクもやはり貰い泣きしてしまった。覚悟して告白する!と決めていたせいか、緊張が勝って、涙が遅刻したのだ。
今更の告白!?原因は主人公に。 次回は隠された洋子の過去が!?




