34 大暴走!
協力すると言っても、全くする事がない主人公達。こんなんで組織を倒せるのか!?
さぁ、しつこいようだが、居住区で初めて迎えた朝。ここは太陽が見えないので、朝日は拝めない。外に出る事は出来るみたいだ。
居住区の奥に行くと、左側に港を思わせる、船着場がある。そこから船で水路を通り、島の外に出て、左手に少し行くと、砂浜があるらしい。そこで日光浴が出来ると聞いた。ヘリでは見えなかったのか、見てなかったのか、記憶にない。
洋子さんと行ってみたいと申し出たら、今朝は海が荒れているから、また今度。と、断られてしまった。
外に出られないと聞いて、やる事が無くなったボク達は、船着場で釣りの真似事をして過ごした。ここの住人の話だと、たまに大きな魚が釣れると言っていた。少し期待はあったが、結局釣れなかった。洋子さんと色々話せたので不満はない。
その洋子さんが話してくれた、父親が指導者だった頃の組織の話で、少し気になる事があった。
あの屋敷で、色々な研究が行われていたが、あの場所で、何かを完成させるのではなく、実験で得た結果をデータとして保管。月に一度だけそのデータと、結果を出した材料を、トラックで運び出していた。というのだ。これは、隠された研究施設を匂わせる話しではないか?と感じた。
早速ボク達は、智さんの元へ向かった。が、自動ドアが開けられない事を忘れていた。声帯認証式だ。ガックリしているところで、自動ドアが突然開いて、智さんが出てきた。ちょうど良かったと思い、先程の話しと考えを、聞いてもらった。
「なるほど、もしかしたら、何かが分かるかもしれないね。よし!あそこを出る、全ての車に監視をつけよう!ありがとうキミ達!あ、ところで、入ってもいいんだよ勝手に。遠慮はいらないからね。」
そう言ってくれる智さんに、認証式のドアの事を話したら、『あーあれは、川上くんが私に名前を言ってから、入ってきただけだよ。律儀にね。』と笑いながら教えてくれた。
紛らわしや…川上さん。
話す事も話したし、やる事がまた無くなってしまった。ここの住人は、いつも何して過ごしてるのだろう?そんな事が頭に浮かんだ。チラホラと人影はあるが、大半が自宅の中にいるみたいだ。
ボク達も自宅に戻る事にした。帰る途中でアフロ娘を見た気がしたのだが、手持ち無沙汰の洋子さんが、『だ〜れだ!』とか言いながら、目隠ししてきたので、どこに行ったかは確認出来なかった。
二人で歩いてたのに『だ〜れだ!』って……。可愛いからいいが。
自宅に着くと、川上さんがちょうど訪ねてきたところだった。何か出来る事が!と、思ったら、彼女も暇を持て余して、遊びに来たらしい。川上さんがパズルを持ってきてたので、それで時間潰しする事になった。
パズルと言ったが、文字や数字を書き込む、あのパズルではなく、五千ピースもある、はめ込み式のあのパズルの方だ。それにしても、凄い数のピースだ。川上さんの趣味らしい。一人で黙々とやっている川上さんを想像すると、口数が少ないのも納得できる。
こういうのは、基本角からだ!と自己判断で、勝手に始める。絵柄は、水辺から飛び立つ白鳥の写真。ピースが入ってた大きい箱に、その写真がプリントされていた。これを見ながらはめ込んでいくらしい。
ボクも無口になるほど、ピースを探しては、はめ込み。を、黙々と繰り返していた。時間潰しにはもってこいだ。時折、同じピースを取ろうと、川上さんの手とぶつかる。その度に、顔を真っ赤にする彼女。洋子さんの方が可愛らしいが、川上さんもなかなか可愛い。そんな彼女の様子を見て、たまにクスッと笑いが出る。どうやら、それが洋子さんは気に入らなかった様子だ。頬をぷうっと膨らませ始めている。
危ない、危ない。気をつけないとまた拗ねるからね。
そう思い、なるべく川上さんが、ピースを取った後に手を出すようにした。パズルって…疲れるものだ。そんな事を感じながら、手に取ったピースを、思ったところに持っていくが、向きを変えても合わない。違うところかな?と、ピースを摘んだまま、右に移動させた。
ドン。 「きゃっ!」
川上さんも同じ事をしていたようだ。肩がぶつかり、驚いて、互いに向けた顔が凄く近い。至近距離で見つめ合った状態になるボク達は、突然の事で、少しの間、そのまま動けなかった。
その様子を見ていた洋子さんが大爆発した。
「もーー!!なによ!!あんた!稜くんまで!もーーーー!!!」
まずい!こんなに怒ってる洋子さん初めてだ!
最初は、それくらいにしか思ってなかったのだが、何だかいつもと様子が違う事に気付く。しかし、少し遅かったようだ。冗談では済まない程に、洋子さんが能力を駆使して暴れ出した。
本来、敵用の監視システムが、洋子さんの大暴走で反応したらしく、居住区に緊急警報が鳴り響いた。当然の如く、家は全壊した。ボクは咄嗟に川上さんを抱き上げ、外へと連れ出していた。
その後、暴れ回る洋子さんを鎮めようと近付き、とんでもない威力の蹴りをくらい、居住区の端辺りまで吹き飛ばされてしまった。通常の人なら即死だ。
島内警報の原因となる、場所がコントロールルームで確認出来たらしく、智さんが近くまで来ていた。川上さんが事情を話しているようだ。ボクも急いでそこへ向かった。
「伊町くん、彼女がいきなり怒りだしたんだって!?ちょっと気になる事があるんだが、組織から連れ出した後、何か……、前と変わった事ってないかい?」
洋子さんが可愛い?いやいや、そんな事じゃない!あー、怒りっぽくなってたな!
些細な事だが、その事を智さんに伝えてみた。
「うん……。聞いた話しですまないが、組織が能力者を黙らせる時に、小さいチップ、あるいは電気信号を発する細いヒューズみたいなモノを頭の中に埋め込むらしいんだ。その副作用として、性格というか、本質が変わるらしい。という確信がない話しなんだが、考えられなくもないよね?」
確かに、考えられなくは無いが、少しこじつけに聞こえてならない。万が一そうであっても、どうやって取り出すか?だが。正直、黒いモヤも見えないので、考えにくい。
「伊町くん、すまない!ここを倒壊させる訳にもいかないんだ!今は彼女が、そうなっていると判断して、近寄れない以上、頭を撃たせてもらうよ!」
そう言いながら、後から駆けてきた男が持つ、ショットガンを指差した。
「冗談じゃない!!彼女を撃ってみろ!お前ら全員こ」
そこまで叫んでいた時、視界が一瞬で閃光に包まれた。
「おやおや、本当に貴方達は。どうしてアタシを困らせるの?お気に入りさん?」
この声は!『善』さん!?
「さぁ、場所を移しましょう。あまり時間を止めておけませんからね。」
『善』さんがそう言った一瞬後、再度閃光が襲い、再び目を開けた時は、あの藁葺き屋根の家の中だった。ボクは入り口の土間に立っていたが、『善』さんは、以前話していた時と同じ場所に座っていた。ボクが座っていたところには、先程まで暴走していた、洋子さんが横たわっていた。
「洋子さん!!」
無事を確かめに駆け寄り、首元に手を当ててみる。脈がある。一気に緊張が解け、その場に座り込む。
「まあ、その子が羨ましいですね。アタシも百二十ほど若ければ。」
ボクのその様子を見て、『善』さんが冷やかしたように見えた。慌てて、ズボンについた土間の泥を払い、上り口の端に腰掛けた。
「余計な事だったかしら?ふふふ。でも頭を撃たれたらね。この子の頭には、そんなモノはありませんよ。原因は、貴方かもしれません。」
え!?ボクが何かしでかしたのか!?何だろう?
洋子暴走の中、再度現れた救世主!いったい何故暴走を!?




