32 マツバコーポレーション
30/6/25 今更ながらですが、真咲母親の名前が初期設定の名前のまま投稿していましたので訂正を入れました。
追われている身の主人公達を、大胆な移動手段で迎えに来た、マツバコーポレーション。着いた島とはどんな場所なのか!?
ボク達は今、島に来ている。ヘリで島の上空を周回していた時に分かった事だが、民家が見当たらなかった。島は全長二キロ程で、ゼリービーンズに似た形をしていた。分かりやすく言うと、まん丸太った三日月の形と取れるだろう。その湾曲した内側にヘリポートが見えた。他は、樹々でびっしりと埋め尽くされていて、島の素肌が全く見えなかった。
工藤さんは、巧みに操縦桿を操り、ヘリポートの外周にある海水を巻き散らしながら、見事にど真ん中に着地してみせた。本当に多彩な人だと感心した。
ここから先は、川上さんの案内で、歩いて行くと説明を受けた。待機の為に、残る事になった工藤さんにお礼を言って、川上さんの後を追った。
ヘリポートから、島の陸地へと掛けられた桟橋を渡り、コンクリートの外壁で固められた、鉄の扉の前に来た。扉の横に、電卓に似たコンソールが設置されている。
川上さんが、コンソールの数字のボタンをいくつか押しているのが見えた。パスワードだと直ぐに理解出来たので、なるべく見ない様にした。これは習慣なのだ。銀行で、前の利用者がパスワードを打ち込む時、見ない様に意識する。あれだ。
しばらく待つと、プシュッと空気が漏れた感じの音がして、扉が少し手前に開いた。それを確認して、川上さんが中へと踏み出した。中はコンクリートの通路になっていて、真っ直ぐな一本道だと分かる程、明るかった。三人の足音が響き、馬が歩く時の蹄の音に聞こえた。
どこまでも伸びている通路も、やがて終わりを迎える。大袈裟に言ってみたが、一キロ程の長さだった。と思う。進んで来た先には、入り口と同じ扉があった。ここでもパスワードが必要みたいだ。
扉の先は、巨大なホールみたいな感じで、その中には、仮設住宅の様な建物が、ズラリとならんでいた。勿論、人もたくさんいた。
「ここは組織の居住区です。右に進んだ奥が島の管理室になっています。先ずはそちらに行きましょう。」
そう言って歩き出す川上さんに従い、洋子さんと離れないようにしながらついて行く。
『コントロールルーム』そう書かれた施設の入り口は、声帯認証式の自動ドアだった。川上さんがいないと入れなかっただろう。部屋の中は、ボクの理解出来ないコンピューターでいっぱいだ。監視カメラのモニターぐらいなら分かる。そして、中央のモニターを見ていた男が、こちらに気付いて歩み寄ってきた。
「どうも!我々のマツバコーポレーションにようこそ!」
そう言って、握手を求めてくる男。
「どうも、伊町です。」
「いや、失礼。名乗りもせず申し訳ない。私はここの指導者『松林』です。よろしく。」
この組織は名乗らないのが決まりなのか?指導者がこうなら、仕方がないのかもしれない。指導者『松林』は、オールバックのヘアースタイルに、ノーネクタイのシャツ、その上にはベストを羽織り、下は少々ピチッとしたスラックス姿だ。全身が紺色で染められていた。心なしか、頭もそう見えてしまうが、黒髪だ。年の頃は五十前後とみた。
松林さんが、モニターを他の人間に任せて、コントロールルームの奥に見える、『社長室』とプレートが取り付けられたドアへと向かった。川上さんに促され、ボク達も後に続く。
社長室は物が少なく、有りがちなトロフィーや賞状も飾られていない。横に長い机と椅子。それだけだ。
『川上くん、ありがとう。しばらく休むといいよ。」
松林さんがそう言うと、浅く長い会釈をして、川上さんが退室していく。よく見る上司と部下の光景だ。ホームセンターではこんな光景は見られなかった。社長が来なかったからだ。
川上さんが退室した後、松林さんは、壁に立て掛けてあった、折りたたみ式のパイプ椅子を二脚準備して、どうぞと取れるジェスチャーを見せる。ちょうど二脚あったところをみると、予め用意してあったのだろう。ボク達はそれに並んで座った。
松林さんも、机に滑り込ませた椅子を引き出して座る。両肘を机につき、胸の前で組んだ両手に顎を軽く乗せ話し始める。
「突然接触して驚かせてしまった事、申し訳ないと思っている。キミのお母さんからコンタクトがあってね。キミ達を保護する様に頼まれた。巻き込ませたくないようだったが、既に敵がマークしていたとは。」
松林さんは尾行されてた件を言っているようだが、母の事が知りたくて、この話に乗ったんだ。肝心な事を教えてほしいところだ。
コンコン。 「どうぞ。」
松林の話しが、途切れるのを伺っていたのか?と思わせるタイミングで、ドアがノックされた。松林が短く答えると、今時アフロかっ!!と叫びたい気持ちにさせる少年が、コーヒーを持って入ってきた。
「ありがとう。あ、伊町さん、娘の梅子です。」
娘かっっ!!!!
少年にしか見えないヘアースタイルと名前にギャップを感じる。梅子さんは、何も語らず出て行ってしまった。去り際に、顔まで覆いかぶさったアフロの下の目が、睨みつけているのを見た。思考を読まれたのか!?と恐怖した。
「すみません、恥ずかしがり屋なんですよ。」
いやいや、そうは見えなかったから。むしろ怒りンボさんだよ。
「それと、キミのお母さんの事だが、ここにはいない。我々もその居場所までは分からない。だが、共通の敵がいるのは間違いない。」
聞きたかった母の事を語り出す松林さんは、コーヒーに口をつけた後、続けて語り出した。
「彼女とは、古い知り合いでね。むかし同じ組織にいたんだよ。綺麗な人だな、が、私が最初に彼女を見た時の印象だ。能力も多彩で、それを他人の為に使う彼女は、実に素晴らしかった。しかし、その能力のせいで、彼女はある女から、逃げ回る人生を強いられる事になった。『真咲 奈々子』それが彼女の名前だ。」
真咲!?もしかして、ナミちゃんの家系の人間なのか?
「キミが知っている、『真咲双子』の母親だよ。あの女は危険なんだ。巧みに男どもを操り、影で組織を動かしているんだ。最初一つだった組織に、金持ちや権力者を引き入れたのも、あの女だ。その内そいつらを操って、組織を分断したんだ。『悪』からチカラを授かりし者達を従えてね。だが、表舞台には立たないので、一向に所在が分からないのだよ。」
あの時の母親がそうか!事実を知っていれば!
ナミちゃんの母親には、病院で何度か会っている。松林さんが話してくれた事実を知っていればと、悔やまれてならない。あの母親のせいで、ボクの母は、幼いボクを置いて逃げなければならなかったんだ。あの女が、未だにどこにいるか分からないみたいだ。ボクも協力すべきだと思う。
その意思を洋子さんに伝えてみた。
「稜くんの意思なら、私の意思でもある。許可なんていらないよ。どこへだって、ずっと稜くんと一緒だもん。お互いの命を賭けてまで支え合ってきた仲じゃない。これからも一緒だよ。」
ちょ、洋子さん!松林さんが見てるって!
先程まで黙っていた洋子さんが、熱く語ってくれた後、更に熱い抱擁を求めてボクに迫ってくる。その大胆さは、二人だけの時に留めていただきたい。呆れ顔の松林さんだったが、フッ。と軽く息を吐き、苦笑いしながら言った。
「仲が良くて羨ましいよ。私もこんな綺麗なご婦人に迫られてみたいものだ。」
松林さんの言葉で、やっと我に返った洋子さんが、顔を赤く染めて、また黙り込んでしまった。
本当にこま……本当に可愛らしい人だ。
母親の敵、松林の敵、主人公達にとっても共通の敵が、彼らを引き合わせた!次回、組織の目的が!?
分かるかも?しれな〜い(by洋子)




