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27 帰還祝いと憶測

無事帰還を果たした主人公達。今夜はお祝いだ!


 『本日貸し切り』


 マスターの喫茶店で、帰還を祝う事になり、喫茶店親子と洋子さん、ボクの五人だけの食事会のような事をしている。貸し切り。と、札を下げているものの、組織の襲撃で、あちこち修理が必要な程、酷い状態なので、営業再開はしばらく後になりそうだ。その店内の比較的壊れていない場所を、少しばかり手直しして、テーブルを()えている。灯りは無事だ。


「では、洋子さんとかずちゃんの帰還を祝って!」


「カンパーイ!!」(全員)


 かずちゃんのテンションが凄く高い。先程から、マシンガントークが披露されている。小さい頃から、組織の事があった為、頻繁に引っ越していたそうだ。その為、友達が(ほとん)どいないらしい。家族以外の人間が加わったこの食事会が、余程(よほど)嬉しいのだろう。洋子さんも、そんなかずちゃんを見ながら、楽しそうに笑っている。


 本当に、二人共無事で良かった。またこうやって洋子さんと笑い合える。もうあんな思いはしたくない。だが、今の洋子さんを、どうこう出来る人間がいるだろうか?ただでさえ、組織の精鋭部隊として強かった洋子さんだが、今はそれに加えてパワーが 桁違(けたちが)いに上がっている。

 しかし、何がそうさせたのか?ボクが離れた空白の時間に、何が起きたのか?だが。


 そういえば、ボク達は、実験材料行きと言われ、その後、あのゴミ捨て場に投げ捨てられた。もしかして、実験材料の段階で、何か…『薬』とか?投与された可能性も考えられるな。


「もう!稜くんってば!こっち向いてよ!」


 しまった、また考え込んで、ボーっとしていたようだ。洋子さんが頬を膨らませて、怒った顔をして見せているのだろうが、こんな可愛らしい顔で、怒ってるつもりみたいだ。その様子に思わず笑うと、頬をつねられた。手加減してください。パワーが違いますから。


 楽しい時間にも終わりは来てしまう。だが生きていれば、この先また楽しい事もある。話し疲れてそのまま寝てしまったかずちゃんを、奥さんが抱きかかえて奥へと連れて行く姿を見送りながら、そんな事を思っていた。洋子さんも少し眠そうだ。ボクの肩に寄りかかり、ウトウトしだしている。


「松田さん、よかったら妻に聞いて、奥の部屋で休んで下さい。今日はここに泊まるといいですよ。」


 マスターが、ウトウトしていた洋子さんにそう勧めた。


「はい、ありがとうございます。でも…稜くんから離れないと誓ったので。」


 だ!恥ずかしいけど嬉しい!くぅ〜っ。


 そう言って、洋子さんは、座っていた長椅子の上で横になって寝てしまった。ボクの膝枕が活躍している。言葉にすると、恥ずかしくなるが、洋子さんが言うように、今はお互いが見える距離を保ちたい。


「後でご案内しますね。……、それから…」


 マスターは、そこまで言って言葉を切ると、洋子さんをテーブル越しに覗き込んだ。


「大丈夫ですね。」


 マスターの言葉からして、洋子さんが眠ったかを確認していたようだ。そして、続けて話を切り出してきた。


「あの後、何が起きたのか、話してもらえませんか?伊町さんが、松田さんの父親を倒した後です。」


 正直、思い出しながら話すと、洋子さんのあの時の姿も思い出されて嫌なのだが、情報屋のマスターの事だ、洋子さんに何が起きたのか、手掛かりを見つけてくれるかもしれない。


 思うところはあったが、筋肉爺さんの後、『橋本』が指導者になった事、ゆうこさんの様子がおかしかった事、ゴミ捨て場で『奈緒子』と『絶対服従』を使う『男の子』に襲われた事など、覚えている事を、出来る限り話してみた。そして、洋子さんが息を吹き返した理由と、規格外のパワーについて、何か思い当たる事がないかを尋ねてみた。


「理由…ですか……。今のお話からは、何とも。組織が何かしたのなら、地下のゴミ捨て場になんて、捨ててしまわない筈ですから。何かこう…他に無いですか?些細(ささい)な事も、解くキッカケになったりするものです。」


 些細な事と言われても、洋子さんの事以外、何も考えられずにいたので、周りの事など覚えていないが。


 ゴミに?いや、う〜ん、奈緒子が現れた時はまだ……う〜ん。あん?あぁ!


 些細な事だが、思い出した事を、残らず伝えてみた。


「なるほど……。それかもしれないですね。」


 え?どれだろ?


 マスターの答えの意味が理解出来ず、唸ってしまう。


「あ、断定は出来ませんが、想定は出来ます。あくまで可能性の問題です。」


 マスターが唸るボクに、そう前置きをして、続けて話した。


「伊町さんの『血』ですよ。聞いた話の中では、彼女が伊町さんの『返り血』を浴びていたと、おっしゃいましたよね?恐らく、その血が、酷く損傷した彼女の身体に付着した事により、伊町さんの能力である『治癒』が発動して、細胞が再生したとか、そんな事が考えられますね。」


 なるほど。しかし、『治癒』は、死んでしまったら、効果を発揮出来ないんだけどなぁ。細胞の再生ね〜、あ!そうか、再生か!いやいや、再生したとして、命まで戻るのか?


 ボクは、過去の記憶から、能力『再生』が発動したと思われる出来事を、手繰り寄せてしまった。さすがボク!

 作業現場で店長と小田に襲われた時の事だ。


 洋子さんが隠し通路にボクを隠した後、ボクは、手がどうなろうと構わず鉄の扉をこじ開けた。その結果、指がどうなったかだ。そう、爪が剥がれてしまったのに、爪が元通り『再生』していたのだ。その能力は既に持っていたのだ。あの時は、洋子さんが心配で気にしなかった。


 しかし、『再生』したからと言って、魂まではどうかと思う。『治癒』も、死んでたらダメだ。


 あ!そうか!『死んでる人に、ボクが使う』治癒が効かないんだ。洋子さんの中に、ボクの血が入り、洋子さんが、『ボク』になったら、どうだ!?ボクは死ねない。身体の一部が無くなっても再生して治る。いわゆる『不死身』だ!洋子さんは、ボクの血液を吸収して、ボクと同じ『不死身』になったんだよ!


 長い妄想から現実に戻り、その様子を根気よく見守っていてくれたマスターに、今、考えていた事を話す。


「確かに、それはあり得るかもしれませんね。今のところ、有力ですね!」


 マスターの意見も、同意的なもので安心した。だが、この強引な説は、この後打ち砕かれる事になる。



 洋子さんのパワーについては、どう考えても分からなかった。話も行き詰まったので、マスターに部屋へと案内してもらった。抱えあげた洋子さんは起きる様子も無く、案内された部屋で、ベッドに下ろしても、そのまま眠っていた。

 離れていた時間が、凄く長く感じたが、寝る前に携帯を見て驚いた。最後に一緒に眠った晩から、まだ二日しか経っていなかった。それは、二日が長く感じる程に、この女性を大切に思っている証拠だ。



 また夢を見ている。しかし、知っている夢とは違っていた。あのゴミ捨て場だ。嫌な夢だ。違う夢が見たいが、自分で決められるモノじゃない。


「無事で安心しました。突然でごめんなさい。」


 聞いた事のある声だ。薄暗いので、どこにいるのか分からない。


「ごめんなさい、今回は少しチカラが届きにくいのです。あの少女のチカラが、少し影響しているみたいね。大変でしたね、母親としてチカラを貸したかったけど、今はまだ動く訳にはいかなかったの。でも、貴方と、貴方の大切な女性について、説明する事は出来ますよ。」


 姿は見えないが、間違いなく母の声だ。あの湖で警告を受けた時以来だ。


「あ、お母さん、少女のチカラって、かずちゃんの『音壁』の事?」


 少し気になったので聞いてみた。


「かずちゃんというの?そう。可愛い子ね。『音壁』と言うかは私も知りませんが、彼女の能力は、緊張感や危険を察知して、勝手に見えない壁を創り出す能力です。まだ子供だから、制御が出来ないで、今もそうだけど、無意識のうちにチカラが漏れているのよ。」


 確かにあの通路では、後ろからの敵の攻撃を、振り返らず防いでいたな。


「今回も時間が限られているから、説明に入りますね。」


 今回もゆっくり話す事が出来ないらしい。聞きたい事がたくさんあるのだが、こうやって、また話せるのなら、またの機会を楽しみにしておこう。

またしても時間がない母親との会話は、一方通行で終わりそうだ。次回は洋子のチカラの謎が!?

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