24 かけがえのない人よ……
※ 少し短めになりました。3/29 14:35 爺さんのセリフの場面に誤字があったので訂正しました。ご指摘ありがとうございます。
いよいよ洋子との再会!連れ帰る事が出来るのか!?
カタカタカタカタカタカタ……キィィ……
水槽が隣り合うその隙間から、昔、祖母が使っていた、『足踏みミシン』の様な、音が聞こえてくる。そう、確か似た音が、自転車のタイヤを支える軸の部分が、油ぎれで、タイヤが回る度に軸と擦れ合う乾いた金属音に似ている。音が大きくなるにつれ、近付いて来ているのが分かる。ソレの予想はついている。
部屋の灯りが水槽の中の赤い液体を突き抜け、姿を露わにした洋子さんを赤く染めている。そのままこちらに近付く速度に合わせて、赤色の灯りが通路の床に落ちていく。滑る様に近づいてくる洋子さんは、『車椅子』に座り、見知った顔に後ろから手押されていた。腰元から膝掛けが、足元を覆うくらい被さっている。立って歩けない程の重症である事は間違いない。
「連れてきました。」
見知った顔、『ゆうこさん』が、冷たい機械の様な声で、筋肉爺さんにそう伝えた。死んだと思っていたが、生きててくれて内心ホッとしていた。しかし、あのゆうこさんでは無い様に思えてならない。
「そこに下がって待て。」
ゆうこさんがその言葉に反応も示さず黙ったまま一歩下がった。さっきから気にかかっているのだが、ゆうこさんの頭に、薄いモヤが見える。頭痛だろうか?
「貴様に、逆らった者の末路を見せてやる。だが勘違いするな、ただの見せしめに、お前の為に用意した余興だよ。本来なら即刻、実験材料行きだがな。コレも後でそうなるから、心配いらんぞ!死ねば必要ないからな!!」
そう言いながら、筋肉爺さんが、洋子さんの膝掛けを剥ぎ取ってしまう。
「よ、洋子さん!!」
その姿に思わず洋子さんの名を叫んでしまう。
「ごめん……さい……稜くん。もう私守ってあげる……事、できない……」
俯いて首を振りながら、声をひねり出すように洋子さんが語りかけてきた。そんなになってまでボクの心配してたのかと思うと、心が凄く痛く感じる。どんな姿でも連れて帰る!
そうだ、ボクへの見せしめの為だけに、この男、洋子さんの父親は、娘の『両足』を切断したんだ!絶対にコイツだけは許さない!コイツはココで倒す!!
「大切な人をここまで傷つけたお前に従うワケないだろうが。ボクが命を賭けて、お前の全てを否定してやる!」
そう言い放ち、筋肉爺さんに飛びかかって行く。避けるつもりはないらしく、両腕を広げ真っ向から受ける構えを見せている。ボクは忍ばせておいた洋子さんのナイフを、爺さんとの距離を一気に詰めながら、引き出して顎の前で構える。その距離を待ち構えていたかの様に、ブンッと唸らせた両腕を伸ばしたまま、手のひらでボクの頭を押し潰さんばかりに叩き閉じた!が一瞬早く反応したボクは、その閉じた腕の下をしゃがみながら掻い潜り、丸見えになっている爺さんの顎目掛けて一気に伸び上がる!右手をナイフの柄に、左手はそれを押し上げる様に下に添えている!
ズズン!!パキィィィン!!
一瞬だ!一か八かだった!突き刺したナイフを両手で握り込み、一気に斜め上に押し折ったのだ!洋子さんの仇だ!
筋肉爺さんも顎は鍛えていなかったようだ。爺さんは崩れる様にその場に倒れた。素早く飛び退いて下敷きになるのを躱したボクは、そのまま洋子さんの元に駆け寄った。
「洋子さん!大丈夫だよ、ボク守ってもらえなくても戦えたよ!一緒に帰ろうよ。」
必死過ぎて、自分でも何を言っているのか分からなくなる。
「うん、見てたよ。ありがとう稜くん!カッコいいよ!」
そう言ってくれた洋子さんの言葉が凄く嬉しかった。しかし、洋子さんがまた俯く。
「あのね、私……こんなになっちゃったし、自分で歩く事も……出来ない……ん、だよ……。歳だって……こんな離れて…、うっ、うっ……だから…ヒグッ…稜くんは、ちゃんと…イイ人…うっ、ヒッ……イイ人見つけて…ね…うぅぅっく、ひっく……」
そんなの気にしてないと言いたいが、ボクも涙で言葉が出てこない。肝心な時に情けない。
「おやおや?爺さん死んだ?じゃ次オレぇ?指導者なんて面倒だよ〜。でもいいか〜。」
安心しきっていた心身が、ドクッと大きく脈を打つ。コイツを知っている!
「あ?久しぶりだね〜稜くん。お礼を言わないと!あ、爺さんの事じゃないよ〜。ともこの事さ〜!せっかくぶっ刺したのにね〜、治しちゃってさ〜。邪魔してくれてありがとう〜。」
そう、コイツは、ともこ先生をあんな目に合わせた男!逃げていった旦那だ!こうも仇が次々と現れても困るのだが。武器も折れたし、どうして倒すか。
ドスッ!!
え?あ……うぅぅぅ……。
突然背中に衝撃と痛みが走った、前のめりに倒れる。
「よくやった、ゆうこ。コイツら実験材料行き〜。捨ててこい。」
「かしこまりました。」
薄れていく意識の中で、ともこ先生の元旦那『橋下』とゆうこさんのやりとりが聞こえた。
凄い雨が、顔を叩きつける感覚で目が覚める。強烈な異臭が漂っている。辺りを見回すと、ドロドロした塊がそこら中に転がっていた。異臭の元はコレみたいだ。最後に橋本が言っていた実験材料の事を思い出した。しかしこれは、どう見てもゴミだ。しばらく考えて、納得が行く。僕自身は、能力のお陰で死ななかったんだ。 でも、洋子さんはどうなったのだろう。コイツらと言っていたはずだ。辺りをフラフラしながら探してみる。
あ!あれは洋子さんの……。
間違いなく、洋子さんの膝掛けだった。その側には熊のキーホルダーがあった。ゆうこさんの物だからと言って、修理に出す時に、オートバイのキーから外して洋子さんが預かっていた物だ。もしや?と思い、辺りをくまなく探す。そして……。
「そんな……洋子さん…。ダメだ、違う、洋子さんは死んだりしない!そうだろう?ねぇ!何とか言ってよ!洋子さん!!」
痛々しい洋子さんの変わり果てた姿に、ボクは彼女じゃない!と、抱きしめながら、何度も何度もそう叫んだ。大切な人が、またボクの前から消えていく……。
必死に洋子の為に戦った主人公。その結末は、あまりにも凄惨なものだった。
が、しかし!……次回はどういう展開に!!!!




