表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/102

22 デート、誘拐、決意

主人公初のデートは!?


 デートと言っても小さな街なので、直ぐに終わると覚悟を決めたのだが、意外と時間が経っていた。最初は面倒だと思っていたのだが、いつの間にか洋子さんのペースではしゃいでしまっていた。


 街の中央にある公園のベンチで、ソフトクリーム食べながら、洋子さんの仕事の失敗談義を聞いたり、ちょっとしたゲームセンターでプリクラ撮ったり、格闘ゲームで対戦したりと、結構楽しかった。今まで女性とデートなんてした事なかったから、イイ経験になった。


 中でも、写真館ってところで撮った写真が良かった。お互い貸衣装の着物を着て撮ってもらったのだ。小道具で刀まであったから、つい悪ノリして、時代劇風になったのだが、洋子さんが楽しんでくれていたから、ボクの初デートは成功だと言えるだろう。


 デートも終わり、修理が終わるまでの宿を探しに色々回ったのだが、短期間の賃貸アパートや、カプセルホテルみたいなとこも無かった。仕方なく、昨日泊まった宿に行ってみたが、ここも予約でいっぱいだった。

 仕方がないので、ワゴン車での泊まりになる。幸いにも、後部のシートを全て倒すとベッドになるタイプだったので、そこに安物の布団を敷く事にした。お風呂は、入浴のみも大丈夫との事で、昨日の露天風呂を利用した。食事はコンビニ弁当で、安く済ませた。


 洋子さんが、お金の心配は要らないと言ってたが、ボクだって貯金はしてる。病院意外に使う事無かったし、まだ余裕はあるのだが、この先どうなるか分からない以上、無駄遣いは厳禁だ。


 宿の女将さんに許可をもらい、駐車場の端の方を使わせてもらう。結構遅くまで外が騒がしかったが、十一時を回る頃には静かになっていた。工事現場に遠くから来た人や、海釣りのお客さんが多い宿だと女将さんが言っていた。夜遅くまで酒盛りでもしてたのだろう。


 今日は遊び回ったから、洋子さんも疲れていたのだろう。外の騒がしさを物ともせず、先に眠ってしまっている。ボクはと言うと、夜、静かになると、やっぱりナミちゃんを助けられなかった事を、悔やまずにはいられなかった。この日の夜も、なかなか眠れなかった。


 朝、周りの車が次々に動き出す音で目が覚めた。携帯で時間を確かめてみたら、六時を少し過ぎていた。現場の朝は早いんだなぁと感心する。洋子さんは相変わらず、騒音の中、まだ眠っている。


 外の空気を吸おうと外に出てみた。秋も終わりに近いし、朝はさすがに少し肌寒い。久々にラジオ体操をやってみたが、ラジオが無いと、意外と順番が分からなかった。運動もして、少しお腹も空いてきたので、近くのコンビニに行く事にする。洋子さんは、幸せそうに寝てるので、たまにはボクが買いに行こうと思い、ドアロックを掛けてコンビニに向かった。


 朝はコンビニも大繁盛だ。残っている弁当とオニギリを掴んで、レジの行列に並ぶ。まだ慣れていないのか、店員さんがやたらと遅い動きで対応していた。十分以上かかって、やっと精算が終わる。いつも人任せにしていた罰だと自分に言い聞かせ、文句を言う事無く店から出てこれた。いくら何でも待たせ過ぎだ。


 一人でブツブツ言いながら、やっと今だけの我が家『ワゴン車』に帰ってきた。まだ寝てるかもしれないので、静かにと思いキーを差し込みロックを解除。


 ……?あれ?開かない……逆だったか?どれどれ……ガチャガチャ。ん?


 洋子さんの姿が無かった。


 あぁ、洋子さんが起きて出たから、ロックされてなかったのか。ふんふん。


 どうりで。ロック解除をしたつもりが、開いていたから閉めてしまっていたのだ。いい加減、コンビニの往復でお腹が相当減っているので、先に食べる事にした。



 おかしい……。洋子さんが戻らない。もう三十分は経つ。不安でソワソワし出し、たまらず宿へ行ってみた。しかし、女将さんも、受付のお姉さんも、掃除のおばさんさえも見ていないという。

 もしかして、コンビニに行ったのかと、慌てて駆け出す。たが、そこにもいなかった。


 落ち着け!コンビニだったら帰りに会っていたはずだ。佐々木オートまではいくら何でも遠すぎる。他の場所……、いやいや、こんな早朝に開いてる店なんて無い!どうすれば!


 どれだけ洋子さんの存在が大きいか、改めて知る事になった。不安と苛立ちが、悪い方向にばかり思考を傾けさせる。こんな時、いい事が全く浮かばない。その思考が更に不安を加速させるのだ。


 時間だけが虚しく過ぎて行く。もうどれくらい経っただろうか?街中走り回りくまなく探した。だけどどこにも姿が見つからない。走り疲れて公園のベンチに寝転がる。


 ここは……昨日洋子さんと……。何でこんな時に……。ここで、二人ソフトクリームを食べた。向かいのゲームセンターでプリクラを撮った。そこを少し奥に行くと写真館が……。ナミちゃんを失って、あの夜苦しかったけど、今はもっと違う苦しさだ……。独りになったという孤独感からか?いやもっとこう……違う苦しさだ。


 自分でも全く分からずにいた。胸を締めつける様な、モヤモヤしたその苦しさを。孤独感なら、子供の頃から知っている。だから違うと感じている。ともこ先生の時や、ナミちゃんの時とも違う苦しみに、精神が壊れそうになる。


 ピロロロロロロロ……ピロロロロロロロ……ピロロロロロロロ……


 ん?なんだ?……携帯か?


 突然の着信音に、意識を引っ張り戻された。ポケットから携帯を取り出し、開いてみる。『喫茶店マスター』どうやらマスターからの着信みたいだ。一応何かあったらと、連絡先を交換していた。洋子さんの事でいっぱいいっぱいだが、とりあえず受けてみた。


「あ、もしもし!伊町さんですか!」


 マスターの声が少し大きくて聴き取りにくいが、内容は把握できたので答える。


「はい……伊町です。」


「良かった!無事ですね!直ぐにその街から出て下さい!組織が!あ……、すみません!昨日組織の奴らが来て、娘を人質にして、伊町さんの居場所を言えと……、本当に申し訳ないです!直ぐに逃げて……プーッ、プーッ、プーッ、プーッ」


 途中で切れてしまった様だ。しかし、これで洋子さんがいなくなった事に辻褄が合う。多分だが、眠っていた洋子さんを、何らかの方法で連れ去ったのだろう。組織の連中が。だとしたら、助けないと。どうやって?何処に?


 ボクは生憎と組織の拠点となる場所を知らない。知っていたところで、どうやって非力なボクが助けるかだ。だが、ジッとしてると心が壊れてしまいそうな程苦しくなる。とにかく動こうと思い立ち、荷物を取りに、ワゴン車に戻った。


 戻る途中、店頭に下がっていたリュックを購入した。着替えとか身の回りの必需品を乱暴にリュックに入れた。洋子さんのナイフが残されていたので、それは靴下の中に忍ばせてみた。歩くとグラグラしたので、弁当に使われていた輪ゴムでナイフを固定した。さっきよりマシになった。


 ワゴン車は、後で引き取りに来てくれる様にと佐々木オートに電話で伝え、宿の女将さんにも事情を話し、許可をもらった。

 目的の場所が分からない為、マスターに何度も電話してみるが、電源が切れていた。久々に悪い予感がした。が、もし考えている悪い事が起きているのなら、あの街に戻るのが最善かもしれない。

 居場所を探る為に、マスターを利用したという事は、組織があの街にあるという事だろう。ここにいる事が分からなかったみたいだから、この近くでもないはずだ。早速行動に移す事にした。


 とりあえず銀行で、貯金全額引き出して財布にねじ込む。移動手段はタクシーに決めた。その方が早いと判断しての事だ。通りに出て、タクシーを拾う。運転手さんに行き先を告げたら、驚かれたが、現金で十万円程見せたら、快く引き受けてくれた。何か冗談の一つでも言った方が良いのかもしれないが、今はそれどころじゃない!


 急ぐ様にと、現金な運転手さんに頼むと、任せてくれ!とプロらしからぬ返答が返って来た。しかし、今はありがたい。少しでも早く洋子さんの元に向かわないと。


 予想以上に協力的な運転手さんが走る道は、洋子さんとオートバイで走ってきた道だった。


 洋子さん!次はボクが助ける番だ!待っていて!!



意外にも、あの精鋭部隊の一員と名高い洋子が誘拐された!?自分の気持ちに鈍感過ぎる主人公は、洋子を助ける決意を!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ