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17 夢とお告げ

場面は変わり夢の中!?ここは……


 またあの夢を見ているのか?何年も見る事の無かった両親の夢が、より鮮明になって映し出されている。


 子供の頃よりも、遥かに鮮明に映るのは、ボクが大人になったからか?


 視界いっぱいに広がる大きな湖。その淵まで染める様な白い花が一面に広がる野原。見知った場所だ。しかし、今回は違和感がある。そう、鮮明なのだ。まるで間違い探しのパーツを見つける様に、目前の景色と、脳内の記憶が呼び起こす幼き頃の映像が、ボクの中のどこかで、交互に映し出される。


 『どこかで』という曖昧な表現は、本来持つ五感から感じ得るモノでは無い気がしているからだが、思考を凝らしてみた事ところで、到底覚束(おぼつか)ない。


 ん?あれは……。見つけた!


 違和感は、意外にもこの景色にズル賢く存在していた。以前はボンヤリしていた遠くの山々が、今はハッキリと見える。これだけなら別にズル賢くなんて言わない。湖のほとりまで来て、初めて解る。

 違和感を創り出しているのは、湖の中にあった。正確に言うと、湖だと『思い込んでいた』そこには、周りに映し出された、『オリジナルの景色』を覗き見る事が出来る。実に有り得ない事だが、夢ならではの事だろうか?


 ボクは湖に思えた場所、その淵ギリギリのところでしゃがみ込み、眼下の景色を覗き見る。なるほど!と一人頷いて納得してみる。簡単に言うと、眼下の景色が、『湖面』だと思っていた『下界の空』に投影され、それが目前の遠い景色として映し出されているようだ。

 パノラマ撮影で撮った超巨大な写真で『筒』を作り、そのままドン!と置いたら、この景色にみえそうだ!

 そんなアホみたいな事を考えていると、子供の頃の夢と同じ様に、『偽湖(にせみずうみ)』の向こう側から、二つの影が近寄ってきていた。その姿は、過去に見たモノとは違い、段々ハッキリとしだす。


「久し振りに顔を見て安心しました。元気そうですね。」


 近付いて来たのは、黒髪の女性と、スキンヘッドの男性だったが、話しかけてきたのは、女性の方だ。

 ハッキリと姿が見えていても、生憎と両親の顔を覚えていない為、見ただけで『両親』と、判断する事は出来ない。


「あまり時間が無いので、手短にお話ししますね。でも……、その前に謝らせて下さい。」


 女性はそう言いながら、深々と頭を下げて、(かす)れそうな声で続けて言う。


「本当にごめんなさい……。貴方の側にいてあげられなかった事、許して貰えないかもしれませんが、本意では無かった事、解ってほしい……。そして、その償いとはいかないでしょうが、貴方の手助けをさせて貰えればと。これでも、貴方の母親である自覚は、失った事がありません。せめて……。」


 覚えていないが、やはり母だったのか。飛行機事故で死んでしまったのは、仕方のない事で、誰にも責められないと思うが。子を思うあまりに、という感じなのだろうか?謝罪の必要は無いと思う。


「やはり……、お母さん?だったのですね。でも、不慮の事故だったのですから、謝罪はいら」


「違うのです!そうでは無いのです……。あぁ、なんて事を……。」


 謝罪はいらないと言おうとしたのだが、途中で被せる様に否定されてしまった。しかし、何が違うのだろうか?否定した後、母は両手で顔を伏せ、嘆いているように見え、それ以上言葉を出せないでいる様子だ。


 そんな母を見てか、隣で口を開かずに静観していた、父親かもしれないスキンヘッドの男性が、一礼してボクに語り始めた。


「初めまして、私は貴方の父親になります。ですが、義理の、という事です。お見知り置きを。」


 えと?義父って……?事故で亡くなっていたのは、母と義父?でいいのか?本当の父親は生きてる!みたいな展開なのかな?えっとと……。


 考え込んでしまうボクを気にした様子も無く、淡々とした口調で、義父がまた語り始める。少し時間が欲しいのだが……。


「時間がないので先を。まず、キミに危険が迫っています。二人の協力者を連れ、今キミが休息している場所から、早急にお逃げなさい。今戦ってはいけません。確実に全員死にます。大切な人を守りなさい。さぁ、急いだ方がいいです!生きなさい!そうしたらまた会う事も叶うでしょう!」


 一方的にそう言うと、一瞬で二人が遠くの山々の陰に消えていった。同時に、視界がグニャリと歪み、足元の地面に立つ感覚が失われ、身体が下方に落下していく感覚に陥った。


「うわあぁぁぁぁ!!!」


「キャッ!びっくりした!だ、大丈夫?稜くん?ねぇどうしたの?夢?」


 確かに落ちる感覚があったが、夢にしてはリアルだった。洋子さんが心配そうにボクを見ている。いつの間にか眠って夢を見ていたようだ。

 少し涙目になりながら、ボクの手を握る洋子さんに、先程の夢の話をした。茶化す事無く最後まで話を聞いてくれていた。話が終わると、顎に拳を当てて、考え込む姿勢を取る洋子さん。そして、何かを思い出した仕草を見せ、ゆうこさんがいる、隣の部屋に行ってしまった。


 義父……。それが頭から離れない。本当の父親が生きている。という期待と先入観が、どうしてもそういう結論を決めつけてしまう。スキンヘッドの義父と血の繋がりが無かった事に、ホッとしたのは内緒だ。将来ああなると、ヘアースタイルを楽しむ事が出来なくなるからだ。と言っても、今のボクは、黒髪のショートで、横を借り上げて、上はサラサラの手入れ要らずのスタイルだが。

 ついでに言うと、洋子さんは、ロングの茶髪で、風に乗りイイ香りがする、手入れの行き届いた綺麗なストレートだ。ペタッ張り付いた感じでは無く、フワッとしたストレートロングという感じだ。

 ゆうこさんは、ボーイッシュ感が出たショートヘアーで、片側をわざと長くして頬を隠すという、カッコいい感じだ。全体が赤っぽいのが印象的だ。スタイルは、モデルさん並みなのだが、洋子さんと並ぶと、破壊力に劣る。

 いけないな……。スタイルを語るつもりが、比較して吊るし上げる思考へと変わりつつある。止めておこう。

 またそんなアホな事を考えていた自分を心の中で叱る。元々何を考えていたのか?と、詮索を始めたところで、ゆうこさんの声が、ボクを脳内から連れ戻す。


「その夢は、見せられたモノかもしれない。」


 すっかり回復したのか、包帯が取れたゆうこさんが、前で腕を組み、ボクを見下ろしていた。さりげなく両腕に乗っかるモノをアピールしている様にも見えるが……。


 うん、小さい!


「前に聞いた事があるんだけど、そういう事が出来る『能力者』がいるらしいの。残念ながら、組織にはいないけどね。だから、夢で終わらせてしまうのは、ちょっとどうかな?」


 失礼なボクの思考を他所に、ゆうこさんが話し始めていた。夢を見せる能力があるのか?そういう意味で捉えてしまう自分に、また決めつけてかかるのか?という考えが割り込む。


「そういう事が出来るって言ったけど、それは夢を見せるって事?」


 ストレートに聞いてみた。


「少し違うの。夢に見えてしまうらしいけど、実際は、相手が見ている夢を、能力で創り出した空間に取り込み、そこに即席の世界を作ってしまうらしいわ。そして、誰でもそこに連れて行けるらしいわ。」


 先程の夢を思い出し、疑問に思った事を聞いてみる。


「じゃあボクは、その造られた世界とやらに、連れていかれた。という事に?」


「そうね、可能性はあるわ。でも、勘違いしないでね。身体ごとって意味じゃないから。意識だけが飛ばされる。って事なの。ほぼ強制的にね。ま、聞いた話しだから、確信はないわよ。」


 もしそれが本当なら……!説明してくれたゆうこさんを見上げると、ボクの考えを察している、と言うように、静かに頷いていた。


「ちょっと、呑気に話してる場合じゃないわよ二人とも!」


 ゆうこさんと話している間、部屋の小窓から外の様子を伺っていた洋子さんが、緊迫した様子で声を掛けてきた。何が見えるのか確認しようとするが、既に洋子さんに手を引かれ、部屋の奥にある扉へと連行されていた。小窓に掛けようとしたボクの手が、虚しく空を切る。


「私が時間を作るから!二人は隙を見て裏から出て!ここから北東にある火の見櫓(ひのみやぐら)の下にバイクを停めてあるから!ほらこれ!!」


 そう言いながら、熊さんの顔がモチーフになったキーホルダーを、投げて寄越(よこ)すゆうこさん。そのまま表の玄関の方へ走り込んで行ってしまう。追いかけて連れ戻そうとしたが、洋子さんがボクの腕を抱き寄せ、引き留めていた。その顔は、苦渋の決断を下した悲痛なものに見えた。

※3/28 訂正報告 ゆうこさんが回復した辺りを分かりやすく書き足してみました。


絶え間なくやってくる緊張の連続に、主人公は耐えていけるのか?夢の人物、母、義父、一体どういう事なのか?……。

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