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16 心の変化

目的地にたどり着いた主人公達。ここに安息はあるのか!?

 まだ朝日が登らない内に目的地へとたどり着いた。『立ち入り禁止』の札が、フェンスで出来た扉に下がっている。元々は太い針金でフェンスに縫い付けてあったのだろう。今は針金が錆び付いて切れ、一本だけで辛うじてぶら下がった状態だ。


 周囲を確認して、先に扉を開けて入る洋子さん。ボクも後に続く。枯れた蔦が絡まるフェンスで囲まれたこの場所は、『シャベル』『ピッケル』『一輪車』等の、そのままになった作業用工具からして、何かの作業現場である事が伺える。


 地面に無造作に転がっている、バスケットボール程ある石を避けながら、慎重に進むと、ちょっとした住宅地のように、古い家がズラリと並ぶ場所に着いた。


 先を行く洋子さんは、見知った場所を歩く様に、迷う事なくボクの手を引き、一軒の家の前で止まった。見た目は、昔の祖父母の家を思い出す様な、木造の二階建ての家だ。玄関のスライド式の二枚扉は、木枠で出来たその内側が、中程に帯状の広い横板、そこから上下に格子状の木材が伸びており、裏側から全体に磨りガラスを貼った様な造りになっている。


 洋子さんは、スライド式の扉に苦戦していたが、やっと通れる程開いたので、半ば強引に中に入って行った。ボクも後に続いて入る。先程と違いスルリと入れたのは、痩せているからでは無く、ボクは破壊的なモノを持ち合わせていないからだ。

 中に入ると、埃の臭いがツンと鼻を突いたが、一瞬だけだった。洋子さんは、家の中を確認して回っている様だ。ボクが入った時は、玄関に姿は無く、靴のまま上がった事が解る足音が、廊下の先から聞こえていた。やがて一階の確認を終えた洋子さんが、ボクのいる玄関へと戻ってきた。


「稜くん、二階に行くよ?」


 その場を動かず玄関で待つボクを、不思議に思ったのかもしれないが、不用意に動いて、洋子さんに無駄な心配をさせたく無かっただけだ。ピッタリ一緒が安心させるだろうか?


「ね、心配になるから、絶対に離れないでね。」


 思考を見透かされた気分になるが、言われてみたい言葉ベストスリーなので幸せになった。勿論、自己満足だが。


 一階と違い、二階は意外と明るい。部屋の窓から外を見ると、いつの間にか朝日が昇っていた。


「稜くん、疲れたでしょ?布団出すから、交代で休みましょ。」


 そう言いながら、隣の部屋の押入れから、布団を出して敷いてくれる。ボクはただくっついて回っていただけだし、洋子さん程疲れていないので、先に休む様に勧めた。レディーファーストだ。男らしいだろ?


 やはり凄く疲れていたんだろう。いつもの軽口も言わず、横になるなり寝息を掻き出してしまう洋子さん。その寝顔を見ながら、彼女を助けた時からの出来事を思い出していた。

 本当にありがとう。また独りぼっちになったかと思い、途方にくれるボクを心配してくれて、命をかけてまで組織に逆らい、相手が親友だろうと容赦なくボクを庇い、本当に無茶な人だ。ボクも強くならないと。


 ………………。ハッ!!しまった!寝て……?


 座って洋子さんの寝顔を見ていた筈なのだが、ボクが布団に入って洋子さんがボクを見ている。全く逆の構図になっていた。


「よく眠れた?稜くんも疲れていたんだよ。無理させてごめんね。」


 不覚だ。男らしく見守る姿を見せようとしたのだが、またも彼女に甘えてしまうとは。本当にボクは役に立たない男だ。そんな事を考え、自分が何か変だと感じる。


 あれ?これじゃ、洋子さんに男らしさを見せたいという事じゃないか?


「稜くん、起きて。移動するよ。」


 自分の変な思考を整理して考えようとしていた時に、緊張感のある小声で洋子さんが囁いた。腰を落とし、窓際の壁に身を隠しながら、外の様子を伺っている彼女の行動で、また誰かがこの場所に近付いた事を悟る。さすが洋子さんだが、良く気配とかに気付けるな。と、感心してしまう。ボクはこの場で身を屈めていた方がいいだろう。下手に動くと見つかり兼ねない。


 洋子さんが屈んでボクの側に移動してくる。


「下に隠し通路があるから、そこから外に行くわよ。」


 そう囁く洋子さんに頷き、その場所に先導してもらう。

 一階の玄関とは反対側にある、台所の床に隠し扉はあった。正方形のタイル式になっている床板を、四枚剥いだら、スライド式の鉄扉が露わになる。彼女が開けて中を確認する。相変わらず抜かりの無い行動だ。

 今度は先にボクを中に入れ、待つ様に指示してくる。


「洋子さん、一緒に行くんだよね!離れたら心配するって言ってたし……。」


 自分でも驚く程に、自分らしく無い発言だ。


「うん、様子を見てくるだけ。でも、見つかるといけないから、一度ここは閉めておくね。確認したら戻ってくるから。中で静かにしてるのよ?約束してね?」


 様子がおかしい。洋子さんの口調が明らかにおかしい。


「だ、ダメだよ、一緒に逃げようよ!ボクも頑張るから……。」


 ボク自身もおかしい事に気付く。言葉に詰まり、涙が溢れ出している。


「心配しないで、貴方は私が守る。だから……。」


 !……。


 一瞬の出来事だった。洋子さんも何かを言おうとして言葉に詰まり、ボクの頭を優しく引き寄せ、キスされた。しかし、その僅か数秒後に、ボクの意識はあっさりと刈り取られてしまった。


「う、……、うぅ〜……。」


 気付くと辺りは真っ暗で、殆ど何も見えない。ボクは手探りで、ホテルで充電した携帯をポケットから取り出す。落とさない様に慎重に電源を入れる。しばらくして、通常画面が表示された。モニター中央の、『日付け』と『時間』を確認する。


「よし、日付けも今日で時間も大体さっきと変わらないはず。」


 一人だから声に出さなくても良かったのだろうが、洋子さんが心配で、その不安を打ち消したかった。


 洋子さんは窓の外を確認した時、何かを見たんだ。そして、ボクが一緒では危険だと感じて、ここにボクを隠した。多分そんな気がする。

 ボクがワガママ言った時、洋子さんも泣いてた。あのキスは……、まるで最後みたいに思えてならない。

とにかく、ここから出て無事を確認したい。

 ボクは闘う事は出来ない弱い男かもしれないが、自分が助かりたい為に、誰かを、ましてや女性を盾にして逃げ出す事は出来ない!

 かなり手こずったが、爪が剥がれるのも構わず鉄の扉をこじ開け、タイルを押し上げてさっきの台所へと出た。 血だらけの手は、既に完治していた。爪までが元通りになる事は予想してなかったが。


 隠れていた家を出たボクは、立ち並ぶ家の陰に隠れながら、洋子さんの姿を探す。ここに入ってきた時の道のりを、逆に辿っている。しばらく行くと、金属音がぶつかり合う音が聞こえてきだした。慌ててその音がする方へと駆け出した。


 バスケットボール程の石が転がっていた場所に出た時、洋子さんの姿を視界で捉えた。男と戦っているのが見えるが、その周りには、十人程の血だらけの人間が転がっていた。まだモヤが出ているから死んではいないと解る。このまま放置したら、洋子さんは『大量殺人犯』になってしまうが、治癒したら、また敵となって襲ってくるだろう。


 そんな事を考え迷っている時、戦っていた洋子さんが、弾け飛ぶ姿がボクの目に飛び込んできた。そして男が、トドメを刺さんばかりに走り寄って行く!


「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」


 無意識に叫び、狂った様に駆け出していた。ボクにこんな無謀な行動が出来るとは、正直思っていなかった。だが、目の前で殺されそうな洋子さんを、失いたくない一心で起こした行動だったと言える。


 男は刀を持っていた。その刀が、今にも洋子さんに振り下ろされそうだ!まるでスローモーションのように感じた。ボクの動きもそうだ。刀は振り下ろされていく!もう少し、もう少しで!男の刀が振り切られた!クソッ!!

 だが男の動きは、次の攻撃に入り出している、横薙ぎに首を狙う構えで刀を返し、それを握る手と腕に、力が込められる。二刀目の動作が始まった!!これはダメだ!!傷は癒せるが、それだと即死してしまう!


 あと……、あと少し!頼むっ!


絶体絶命の窮地に追い込まれた洋子。それを阻止すべく人生初の無謀な行動に出た主人公!その想いは届くのか!!

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