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15 殺意無き暗殺者

緊張感が恐怖に変わる前回の結末。二人はこのまま暗殺者の手に落ちるのか!?

 鉄板並みのブラインド加工された、換気口の外蓋が勢い良く落ちる音。

換気口内に残された内蓋は、支えを失いこちらに倒れる。

 ポッカリ空いた換気口の外は、ボクらが居た部屋とは違う装飾が施された、ホテルの一室だと解る。だが正面に縦長の姿見があり、そこに居るはずの奴らの姿が確認出来ない。つまり、あちらからも、換気口の中が見えていないという事だ。


「洋子、もう大丈夫よ。片付けたから。」


 ?洋子さんがボクを見る。??ボクも洋子さんの目を見返す。二人して驚き見つめ合う。


「もしかしてキスしちゃうの?なら私は向こう向いてるけど?」


 姿見の脇から顔を出したのは『ゆうこ』さんだった。相変わらずの口調の彼女だが、ボクは状況が飲み込めないでいた。先に洋子さんが換気口から滑るように降りた。差し出された手を取りボクも降りる。

 ボクの手を握ったまま洋子さんが彼女の方へ向き直り、ボク同様の疑問を投げた。


「ゆうこ、いったいどうなっているのこれ?」


 洋子さんが指差すまでボクは気付かなかった。そこには二人横たわっていた。二人は軍服に似た作業着を身に着けていて、顔の上半分が隠れる能面の様なお面を着けている。ゆうこさんが、二人のお面を剥ぎ取る。


 !どういう事だ!?


「どう?稜くんは見覚えあるんじゃない?」


 ゆうこさんの言う通りだ。ボクは横たわる二人に見覚えがある。ボクの友達だった『荒川 つよし』君の両親だ。この二人が暗殺者なのか?ボクは驚いた表情のまま、洋子さんに視線を向ける。


「稜くん……。この二人よ。私を瀕死の状態にした暗殺者よ。」


 ボクに頷きかけながら、静な口調で答えてくれる洋子さん。少し間を置いて、ゆうこさんに視線をやり、続けて口を開く。


「でも、ゆうこ。何故貴女がここに?それに、コイツらを倒したのは、まさか!貴女なの?ゆうこ!」


 答えを急かす様な口調で、ゆうこさんに聞き迫る洋子さん。


「私もなの。この二人と同じ暗殺者よ。私の方が強いんだけどね。」


 顔が見えないが、少し後ずさる姿に、驚いている洋子さんの顔が容易に想像できた。


 キィィィィィンン!!


 洋子さんの前辺りで、甲高い金属音が響いた。後ろにいるボクからは何も見えない。


「ちょ、ちょっと洋子!待ちなさいよ!」


 驚いた感じでゆうこさんが、そう言い放ちながら、後方へと飛び退く。その手には、刃渡りの長いナイフが握られていた。それと同時に洋子さんが、ボクを片手で(かば)いながら、ゆうこさんに対し斜めに構える。斜めに構えた為、洋子さんの手元がハッキリ見えた。彼女もナイフを持っていた。


「稜くんは絶対に渡さない!相手が貴女でも容赦はしないわよ!」


 洋子さんがカッコいい。男女逆なら惚れるシーンだ。だがボクは不安に思っていなかった。ゆうこさんが、先程からチラチラボクを見て、何かを訴えているのを知っていたからだ。


「洋子さん、ありがとう。でも、先ずは話を聞いてみようよ?」


 そう促すボクの言葉で、戦闘体制を解除する二人。万が一もある為、洋子さんのナイフはそのまま持っていてもらう。ゆうこさんには申し訳なかったが、完全に信用出来ない事を伝え、こちらからは攻撃しない約束で、武器をボクに預けて貰った。意外とすんなり渡してくれた。


「誤解だよ洋子。組織の中でも、武術で一二を争う程の貴女と戦う気はないよ〜。まだ死にたくないもん。」


 おちゃらけたように、先に口を開いたゆうこさん。その言葉で先ほどの素直さの理由が解った。


「解った。でも稜くんには近寄らないで。まだ信用してないから。」


 相変わらずナイトな彼女にボクは惚れてしまいそうだ。しかし……年齢は残酷だ。


「了解。で、まずこの転がってる二人の事だけど、雇い主が私とは違うのよ。私の雇い主は、洋子の父親の『松田 貴文』よ。洋子が(たて)突いたって(わめ)いていたわ。それで彼は、暗殺者を別の男に依頼して雇ったの。この二人とは、直接契約じゃないから、連絡が洋子の父親には直ぐに入らない。で、さっき、二人の雇い主から連絡があって、私にも同行する様にと命令が出たの。言っておくけど、洋子が暗殺対象だなんて、ここに来るまで知らなかったのよ?知ってたらコイツら、ここに着いた時点で殺してる。」


 サラッと怖い事を口にするゆうこさんの言葉で、横たわる二人に目が行ってしまう。


「大丈夫よ、まだ殺してないから。」


 いや、『まだ』って……。とにかく生きてるならいいけどね。


 洋子さんは、まだ少し警戒心があるみたいだが、今後の行動について、ゆうこさんと相談し始めた。ボクはと言えば、大した事も思いつかないし、二人ほど状況が見えていないし、で、組織の人間である彼女達の方が、今後の相手の動きが解るだろうから、邪魔しないように、口を閉じて二人を見ているだけだ。


 しかし、こうやって二人を見てると、改めて凄いと思う。う〜ん……。

大きさだけで言うと、こう、『ダンプカー』と『軽自動車』だな……。そういえば、ゆうこさんは、洋子さんと同じ歳なんだろうか?洋子さんもだが、ゆうこさんも若く見える。暗殺者騒動で忘れてたが、洋子さんはまだガウン姿のままだった。換気口での事を思い出すと、またも背徳感に心が……。


「稜くん?どうしたの?顔色悪いわよ?気分わるいの?」


 落ち込む様子のボクが心配になったのだろう。洋子さんが優しい言葉をかけてくれる。が、目の前でしゃがみ込まないで下さいと言いたい。


「じゃ、洋子、そっちは頼んだわよ。私はこの二人を。」


 心配してボクを覗き込む洋子さんに、割り込む様に声をかけるゆうこさん。


「了解。そっちも、気をつけなよ。あっちで合流だからね。」


 そう言った後に、預かっていたナイフを渡す洋子さん。受け取ったゆうこさんがナイフを腰の後ろ辺りにしまう。そのまま二人で部屋を後にしようとした時、後ろからゆうこさんが声をかけた。


「稜くん。気をつけて、この二人の子供、つよしも暗殺者だから。」


 そう言って、ゆうこさんは二人をロープで拘束し始めた。ボクは、予想出来ていたゆうこさんの言葉に、お礼を言って部屋を出た。


 しかし、暗殺者ってそんなにいるのか?そんな簡単に人を殺すなんて……。


 ボクもこの状況に少し慣れてきてしまっているようだ。さすがに命の危険は感じてるけど、もっと怖いのは、捕まって『絶対服従』であやつられる事だ。他人に自分の人生操られる事を考えると、今の状況の方がまだ自由がある分マシだ。


 ボク達は元いた部屋に戻り、着替えを済ませて宿を出た。洋子さんが辺りを警戒しながら、ボクの手を引き夜道を歩いて進む。目的地の合流地点には、朝までに着くはずだと彼女がボクを励ます。無事に着いてみせると、まるで自分に言い聞かせている様に見えた。

複雑に入り組む、主人公が知る過去の知り合いと、現在の知り合い。この先ゆうこは協力者として同行するのか?はたまた傍観者として沈黙を決めるのか……。

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