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12 疑心暗鬼

少し垣間見得た陰謀。何故自分なのかさえ解らない。今は恐怖から逃れることが最優先だ!

 静まり返った店内、照明が全て落とされ真っ暗な通路を、記憶を頼りに手探りで進む。店内に人が残っている内は、怖くてあの場所を動けなかった。手荷物があった訳ではないから、倉庫に備わった扉から出てもよあったのだが、あ扉は外に直接出てしまう。扉の向こうに、誰もいない保証はない。

 ゆっくり慎重ではあったが、働きなれた場所であった為か、意外と早く従業員入り口まで来れた。しかし、ここも裏口に変わりない。暗い場所で視界がハッキリしないのは、いざ襲われた時に逃げるには、少々不利に思える。早く出たいのは山々だが、安易に動くには、色々あり過ぎた。

今のボクには、慎重に慎重を重ねて行動する、という事が唯一考えられる定石を踏んだ行動だ。


 自分の信念を持って決断し行動する事が勇気だとボクは思う。思い切りの良さ。とは、聞こえは良いが、一か八かの賭けでもあり、無謀とも取れる。しかしどちらも己の信念だとも取れる。ボクは前者の方だ。後者は、その行動によって何が起きようと、的確な判断を持って切り抜けられるチカラを持つ者の事だろう。


 さて、逆立ちしてもなれない勇者になるつもりはサラサラない。逃げるならば、素早く通りに出られる方がいいだろう。確かこの店内フロアの壁に、大きな標語ポスターで隠した扉があったはずだ。貼った本人が言うのだから間違いない。店舗入り口の面は、ほぼガラス張りで、たまに表を走り抜ける車のライトが、店内を照らす。何度かそのタイミングを狙い、目標のポスターの場所を見つけた。そういえば、警察署からお願いされて貼りだした事を思い出す。

色々な手口の犯罪に注意するよう呼びかけているポスターだ。


『気をつけて!あなたの後ろにストーカー』


 大変為になるポスターだ。だが、対処方法も書いておいてくれ。


 外の灯りが見えているからだろうか?ポスターにツッコミ出来るくらいには落ち着いてきた。破れないように、丁寧にそれを剥がすと、隠れた扉が姿を見せる。

少し開けて、見える範囲で周囲の様子を確かめる。大丈夫だと踏んで、静かに外へ出る。隣の建物との隙間に位置するので、出た直ぐは、コンクリートとカビの独特な臭いが鼻を突いた。

 振り返り、扉が閉まるのを確認する。ここはオートロックだから大丈夫だ。外からは開かない仕組みになっている。因みに、本当に開かないか確かめてから通りに出た。


 この店内も暗いが、真っ暗とまでいかない。静かに本を読んだり、インターネットをしたりと、設備されたモノや用意されたモノを、契約した時間内であれば、自由に使用出来るお店だ。人はここを『ネットカフェ』と呼ぶ。

 初めて来たので、テンション高めでちょっとアホっぽくなったが、明るい路地を選びながら進んでいたら、この店の前まで来ていた。初めてだったが、一人になれる落ち着く場所に居たかったので、迷わず飛び込んでみたのだ。どんなところなのかは、人から聞いたりしていたので、ある程度の予想は出来ていた。


 パソコンが起動しているのは、明るくなるので、気持ちの安心感を優先させてつけているだけだ。こんなモノ使えない。使える機器といえば、せいぜい職場のレジくらいだ。先程、簡易シャワー室にも行ってきたから、身体もスッキリだ。

 しかし、頭の中は、変わらずグチャグチャだった。今ハッキリしている事を整理してみよう。


 まず、ナミちゃんは、ウソをついてまで姿をくらましている可能性が高い。

 担当医師は、敵かどうか分からないが、怪しい会話をしていた。

 店長と先輩は、明らかにボクにとって危険な存在だ。

 洋子さん……たまに鬱陶しいが、信じていた。何故だ……。

 ゆうこさん……?そういえば、病院で見なかったな。今のトコ無関係。


 関わってる人に関してはこれだけしか解っていないのだ。まだ情報が足りない。何か見落としていないかと、記憶を手繰り寄せ、メモに書き出すが、どれも関係ない事ばかりだ。繰り返すうちに、いつの間にか寝ていたようだ。このリクライニングソファーは最高だな。

 携帯で時間を確認しようとしたが、電源が切れていた。充電が必要なようだ。引っ張り出してきてたマンガ本を、あった場所へと戻しに行く。ついでに、受付カウンターにある時計も見ておく。かなり寝ていたようだ。デジタル表示の置き時計が、十三時ちょうどを教えてくれた。

 ずっとここにいる訳にもいかない。ボクは会計を済ませて、昼の繁華街へと歩きだした。


 どうしてここに来てしまったのか、自分でも解らない。いや、解らないのはボクの考えではなく、彼女の事だ。ん?どうやら未だに頭が混乱している。

 ボクは、どうしても、あの明るい洋子さんが敵だと思えない。味方でもないかもしれないが、向き合って話せそうな気がする。そう考え洋子さんの屋敷がある敷地内に、不法侵入している。中の様子が見えないか、窓を一つずつ確認する。洋子さんの部屋の窓には、どれもカーテンが掛かり、部屋の内部が見えない。

仕方なく、日を改めて来ようと決めて歩きだしたが、門とは反対方向へと来てしまったようだ。

 屋敷の真裏辺りまで来てしまっていたので、そのまま屋敷を一周してしまおうと、先を急ぎ歩き出す。あと少しで、門が見える屋敷の角というところで、携帯が落ちているのを見つけた。


 これは!洋子さんの携帯だ!どうしてこんなところに?


 電源を入れようと試みるが、モニターが点灯する事は無かった。とりあえず、ボクが預かる事にした。ポケットに洋子さんの携帯をしまう為、ポケットに視線を落としかけた時、外壁の際に生い茂る樹木の間に、倒れた人の足が見えた!近付いて良く見ないと、絶対に見つける事が出来ない様な場所にある。

 手入れされていない(まき)の木は、隣同士植えられた同種類の槙と、ひしめき合う様に、何本も並んでたっている。その樹木の幹と幹の間には、これまたひしめき合う様に、所狭しとツツジの木が生い茂っていた。その植え込みに、呑み込まれたかの様に倒れ込んでいる人の足は、踵の高い靴を履いていた。女性の足だと解る。怖い気持ちが大きいが、あの嫌な予感がしているのだ。忌々しい頭の中の警鐘が!

 ボクは生い茂るツツジを掻き分け少し安心する。黒いモヤが出ていたからだ。まだ生きている証拠だ。だが、急がないといけない、モヤが先程から薄くなっている。

 女性は都合よくうつ伏せ状態だ。背中に見えるファスナーを下ろすと、黒いモヤの出所が露わになる。慌てて手を当て、意識を当てた手に集中する。一気にモヤが手に吸い込まれる様に消えていく。うつ伏せで倒れた女性が動き出す。どうやら治癒は成功したようだ。ホッと安心したのも束の間だった。こちらに向き直る女性を見て、緊張と恐怖で動けなくなってしまう。


 よ、洋子さんだ!マズイ!早く逃げないと!いや、話すんじゃなかったのか!いや、しかし……ガバッ!え?


「稜くんっ!!よかった!!心配したよもぅ!えぇぇぇぇん……、えグッ!うぅ」


 予想し得なかった展開にオタオタするボク。本気で心配してくれていたと解る。よかった……。


 緊張感が解けるのと、安心感が湧くのが同時に押し寄せ、ボクも一緒に泣いてしまった。


疑心暗鬼であった目の前に、少し明かりが射してきた主人公。彼女は味方なのか?

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