表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/102

1 先生と夢と現実

メイン執筆の合間に、お試しで作ってみました。投稿の予行練習ですが、こうなったらいいな、という夢の中で見たモノを、形にしてみました。



4/1 行間、段落、誤字を訂正、修正致しました。

「伊町 稜君!」 「はい!」


 まだ肌寒さが残る春の初頭。今年入園の、園児達が並ぶ講堂では、自身が受け持つ園児の名前を、担任の先生が読み上げている。


 今しがた、元気よく返事をしたのが、幼稚園児のボクだ。初恋と言ってもいいのかわからないが、担任の『橋本 ともこ』先生が大好きだった。


 先生は、ボクの家庭の事情を知ってか、他の園児より、特に優しく接してくれていた感じがする。


 ボクの家は、母の実家である祖父母の家だった。両親を飛行機事故で亡くした為、祖父母に引き取られる事になったのだ。

まだ三つだったボクは、両親の顔をあまり覚えていない。なのに、夢にはよく出てくる。


 そんな事情から、『母の日』『父の日』『親子遠足』等々、いつも一緒にいてくれたのは『ともこ先生』だった。


 誕生日。ボクはともこ先生の自宅に招待されていた。

新婚ホヤホヤのお宅に、お邪魔するのは野暮だと言われそうだが、まだ幼稚園児のボクには理解出来ないので、ツッコミはお手柔らかに。


 先生の旦那さんは、丸い形のメガネが印象的な人で、笑うと特に、優しさが溢れんばかりの、理想のお父さんという感じがした。彼に始めて会ったのはこの時だ。


 それからも、ちょこちょこ招待され、本当の家族の様に接してもらっていた。この頃はまだ幸せだった。


 さて、ボクの変化の予兆は、突然やってきたのだが、先に述べた、両親が出てくる夢がそうだ。当時は頻繁に見ていた。




 大きな湖のいたるところから、気温差で生じる白い煙が立ちのぼる。

まるで温泉の湯煙りを思わせる。


 その向こうにも、景色はあるはずなのに、ハッキリとした景観が認識出来ない。

理由はわかっている。ここが夢の中であるからだ。

何故なら、頻繁に見るその舞台が、毎回同じ湖の景色だからだ。


 しばらくすると、遺影でしか見たことがない両親らしき影が、立ちのぼる白い煙を掻き分けて、水面を滑る様に徐々に姿を現わす。その顔はハッキリとは分からない。


 ボクのいる場所より、十メートル程離れた位置で止まり、何かを話している。

声が聞こえてこないが、口はパクパク動いているのが見える。しかし、何を言っているか理解出来ない。


 いつもこんな感じだが、一度だけ女性の声が、耳元で囁いた事がある。それを最後に、同じ夢を見る事は無くなった。が、それと同時に、現実に起きたボク自身の変化に戸惑う事になる。


 いつもの登園時間に、挨拶してくれるタバコ屋のお爺ちゃん。今朝もいつもの様に、箒を片手に挨拶をしてくれる。しかし、どことなく表情が硬い。


 その日始めてソレを見た。あの夢を見なくなって、五日目の朝の事だった。


 お爺ちゃんの胸の真ん中辺りから、黒いモヤが噴き出していた。訳が分からず何度も目を擦り、視線を胸元に戻すが、何度繰り返しても同じ様子が目に映る。


 タバコの煙か、あるいは燃えているのか、心配になり直接尋ねてみたが、『何ともないよ』と答えてくれた。


 それでも気になったが、幼稚園に行く時間がかなり押している事を、お店のラジオから流れてきた時報で気付かされた。ボクは挨拶もそこそこに、急いで園に向かった。


 遅刻したが怒られる事もなく、ボクはいつもの様に園での時間を過ごした。


 次の日、通りかかったお店にお爺ちゃんの姿は無かった。その後もずっとだ。

この時、お爺ちゃんに何があったのかを知ったのは、それから少し先の事だ。




 その後、幼稚園では特に変わった事も無く、無事小学校入学。

色々な行事もあったが、ともこ先生が親の代わりに支えてくれた。


 ウチの祖父母は、ボクにあまり関心が無く、入学式はおろかランドセル購入も忘れていたくらいだ。


 ランドセルは、ともこ先生がお祝いにと贈ってくれた。

入学式にも顔を出してくれたが、さすがに保護者席には座っていなかった様だ。

本当の親子になりたいと、真剣に願った記憶がある。


 それはさておき、あの時、お爺ちゃんの黒いモヤを見た後も、かなりの人に同じモヤが見えた。しかし、それぞれモヤの出る部位は違っていた。

ある人は腕から、またある人はお腹から。という様に様々だった。


 実は、小学校入学の少し前に、この黒いモヤの意味が分かっていた。


 先ずはお爺ちゃんの事をともこ先生から聞いて、その後、同じモヤが見えた人の事も、ともこ先生に聞いたのだ。


 そして分かったのが、お爺ちゃんは心臓の病気で亡くなり、黒いモヤは胸から出ていた。頭から出ていた人は、頭の病気で亡くなっていた。


 そう、このモヤは、病気で悪くなっている部位から出るという事だ。

あの時、夢で囁かれた事を思い出す。


「あなたに贈り物をしました。正しく使いなさい。見守っていますよ。」


 この病気の部位が分かるのが贈り物?どう使えば正しい事になるんだろうか?まだ子供の頭で考えるには、少し難題だった。


 だが、これだけではない!もう一つの奇跡の能力を知ったのは、小学二年生の夏休みに入ってからだった。



 蝉が忙しく鳴き始める前の早朝。ボクはクラスの友人と、カブト虫を採取しに出掛けていた。その友人『荒川 つよし』君は、クラスで一番の仲良しだ。


 つよし君は、半袖にジャージズボンといった、組み合わせが変な格好で来ていた。ボクは、半袖に半ズボンと、組み合わせは良いのだが、林に分け入る格好としては、おかしい。人の事を言えた立場じゃないと、今は反省している。

そう、反省してます。


 その日起きた事を手短に説明すると、ボクは木に登り、足を滑らせ、落ちた。


 落ちたボクは、足を酷く切ってしまい、血が止まりそうになかったので、手で圧迫して止めようとした。

足を押さえ込む両手の隙間から、あの黒いモヤが出ている。ケガでも出る事が確認出来た瞬間だった。

しばらくそうしていたら、血が止まり、黒いモヤも消えていた。


 気になったボクは、両手の隙間を少し開き、中を覗き見た。

そこには、血が流れ出た跡が、残っていただけだった。

驚きのあまり、言葉を失ってしまう。

つよし君も、傷が無くなった足を見て、驚いた表情でボクと足を交互に見ていた。


 この出来事があったからこそ、『治癒』の能力に気付く事が出来たのだ。

まだ先がありますが、保存出来ない事を、ここまで来て知る事に……。先走り過ぎたと反省です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ