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曖昧な僕ら。  作者: 藤丸のりか
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【恋人以上友達未満】友人執筆

公園でAが犬に懐かれてBは… ※こちらは藤丸のりかの友人の作品です。

「ねぇA、腹減った」

「その辺にいる鳩でも食え」

「可哀想だから食えない」

「なら餓死しちまえ」

「冷たいなぁ。誰の所為で昼飯食えなかったと思ってるのさ」

「知るかよ」


片手で腹を押さえながら前のめりになって隣を歩くBが、目も合わせてやろうとしない俺に恨みの念を込めた視線を送ってくる。

加えて時折聞こえてくるBの腹の虫が、本当に空腹なんだとしつこくアピールしてきやがるもんだから、そりゃあ返事が適当になるのも仕方がない。

…ったく、これだからガキは困る。


「わーったよ、何食いてぇんだバカ」

「え、奢り?やった!じゃあー…あっ、あそこのクレープでいい」


何だこいつ、バカを軽くスルーするほど腹減ってんのか。


「僕スペシャルね。おいしそー」

「スペシャル2つくれ」

「えっ?Aも食うの?」

「あん?食っちゃ悪いか」

「いや、Aの奢りだからいいけど」

「ありがとうございます。お二つで千円になります」


二人分の金を払い、クレープを受け取って適当に座れる所を探し歩く。

クレープ車の向かいには公園があり、少し歩いて行くと芝生が広がっている。


「んー、美味い。Aありがとっ」

「おう」


美味そうにクレープを頬張り無邪気に笑うBを見た瞬間、「可愛いなこいつ」と思った自分に驚いた。

…何だ。俺、熱でもあんのか。そうだ、きっとそうだ。


Bは先に走っていって、「ここ座れるよ!」と指差した場所へ座る。

追い付いた俺もBの隣に座って、やっとクレープに口をつけようとしたとき、どこからともなく子犬が走ってきてBの足に飛び付いた。



わん!きゃわん!

「おわー可愛いわんこ!首輪付いてるから迷子かな」

「シュナウザーか。まだちっせぇな」

「シュナウザーって犬種?Aよく知ってるね」

「犬好きだからな」

「え、」


俺とBの足元を何度も行き来する子犬の背中を撫でてやると手の甲を舐めた。

それを隣に座る間抜け面が眺めている。その開いただらしない口を何とかしろ。


「んだよその顔は」

「…だってAは動物が自分の足下にいようものなら問答無用で蹴飛ばしそうだから意外で」

「……俺はそんなに極悪なイメージか」

「うん」


このバカ野郎、即答しやがった。

足下に犬っころがいなけりゃ蹴飛ばしてやったのに。


「りなー!りーなーっ」

「お?」

「こら!勝手に走ってっちゃだめじゃない、もうー。ごめんなさい、うちの犬がご迷惑を…」

「ん、このコお嬢ちゃんの犬?可愛いねー吼えないし懐っこいし良いコだったよ」

「そうですか?良かった」


この犬の飼い主らしい恐らく小学校中学年くらいの少女がやってきて、幼いながらもきちんと礼儀正しく頭を下げて言った。

今まであちこち探していたんだろう。呼吸を整えながら俺たちに笑いかけた。


「靴紐を結び直してたらその内に逃げちゃったんです。いなくなって心配したんだからね」

くぅん、わんわん!

「このコりなって言うの?可愛いなー、女の子なんだね」

「あ、はい。先月家に来たばかりで。妹みたいに凄く可愛いんです」

「うん、可愛いね。僕も犬大好きなんだー、動物って癒されるよね」

「はい!」


少女とBが楽しそうに話している間、りなという名の犬が俺の足に飛びつき戯れてきた。

肌触りの良い長く柔らかい毛を梳くように撫でてやれば、気持ちよさそうに擦り寄ってくる。


少女とBの会話が一段落したのを良いことに、俺はすかさず訊ねた。


「ところでお嬢ちゃん、お名前は?」

「あ、私はみきです。お兄さんも犬好きなんですか?」

「おう、大好きだ。昔ハスキー飼ってたからな」

「そうなんですか。ハスキーも素敵ですね。あ、そろそろ帰らなきゃ。すみません話の途中ですけど、これからママとお出かけするので」

「うん、気にしないで。楽しんできてね」

「帰り道気をつけろよ」

「はい、さようなら」


みきという少女は犬をリードに繋いで小走りに去っていった。

再びクレープを食べ始めると、隣から刺すような視線を感じて横目に見る。


「…何だよ」


「…Aって子ども嫌いとか言ってなかったっけ」

「バーカ、女の子は別だ。男のガキは生意気だから嫌いなんだよ」

「それただのロリコンじゃん」

「ちげぇよ。俺は美人専門なんだ。みきちゃんも将来美人になるかもしんねぇだろ」

「うっわ、何それきもい。つかみきちゃんとか馴れ馴れしく呼ぶな変態」

「うっせぇよ、さっさと食っちまえバカ」


Bは相変わらず俺を蔑むような目で見てきやがる。

だから俺はBに言ってやった。



「あのなぁ、女性にはどんな人にでも優しくするのが紳士ってもんだ。子ども大人関係ねーんだよ。わかったかガキ」

「…ガキガキっていっつも僕を子ども扱いしてー!」

「ガキなんだから仕方ないだろ」

「うるさいAのアホー!」


食い終わったクレープの包みを丸めてぎゃーぎゃー喚くBに投げつけ、煙草を取り出して火を点けた。

全く、こんなクソガキとどうして何年もつるんでんだか。ついに俺もどうかしちまったな。

何度か理由を考えたことはあるが、結局いつも答えに至る前にどうでもよくなる。



「おいバカ、行くぞ」

「え、ちょ!僕まだ食い終わってない、…もう、A待ってよー」

「誰が待つかバーカ」


…なんて、この俺が一番バカなのかもしんねーけどな。



(やばいバカがうつったか)



恋人以上友達未満

(そういえば昔犬飼ってたの?)(あぁ)

(何で今いないの?)(逃げたから)(・・・犬の気持ちがよく分かる)

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