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異失(いしつ)

作者: 青木森羅


『モノでも大切にすると命が生まれる』


 魂を得て髪が伸びる人形、付喪神つくもがみ、これは全て人の思いが成した事。


 愛着という名の想い。


 しかしそれは、行き過ぎると歪なモノになる。


 執着。


 けど、そこに明確な差なんてあるんだろうか?


「あなたもそう思うわよね?」


 私の言葉に、彼は答えをくれなかった。


「いつも、そうなんだから……」


 彼はいつでもそう、私の話す言葉を黙って聞いてくれていた。


和子かずこ、結婚するらしいよ」


 彼はいつでも、ただ私の話す言葉を黙って聞いていた。


優華ゆうかの所、今度子供が生まれるんだって」


 彼はいつでも、ただ私の話す言葉を黙って聞いていた。

 けど、私の気持ちに気づいているんでしょ?


「いつ、結婚してくれるの?」


「私はいつでもいいんだよ」


「あなたの子供が、欲しいの……」


 彼は私に優しく微笑んで、頷いてくれた。

 ささやかだけど、大切で、何よりも大事なヒト。

 それが、あなた。

 けど。


 サイレンの音、心電図が刻むリズムが止まる、友達の鳴き声、彼の両親の嗚咽、そして長いクラクションの音。


 彼が、燃える。


「あなたは、あの子の事を忘れていい人を見つけてね」


 彼のお母さんは、そう言った。


「はい」


 私は嘘をついた。

 だって彼は。


 彼は、私の手の中に居るのだから。


「これからは一生離れないからね」


 彼はいつものように、無言で私の話を聞いていた。

 私の手の中にある『モノ』になってしまった彼は、私のこの思いを受け止めてくれるのだろうか。


『彼』の入った小瓶の栓を開ける。

 

 ――私の中で、彼があふれた。



「おめでとうございます」


 数ヶ月後、私は受胎した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 短い文章で、簡潔な描写で情景を転換する手際に感心した、 [気になる点] ホラーとかのカテゴリーになってたけど、なにが怖いのかわからない。女の執念。だとしたら彼の死の背景には三角関係とかあっ…
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