第3話 神のスキルと魔のスキル
俺とユナは無我夢中で走った。俺は初めて人を刺したということで、恐怖で手が物凄く震えていた。そしてユナは俺のその様子を見て察したらしく、俺の手をもっと強く握ってきた。そして、耳元で
「シャルは正しいよ。だから自信を持って」
と囁いた。そして、俺はゆっくりと頷いた。今走ってる場所は王都から少し離れた、俺とユナの生家があるプラーハム村に差し掛かる所だった。
俺は、物心ついた時から祖母と祖父に育てられた。両親は俺が生まれて少し経ってからこの村を離れたらしい。だから両親がどんな顔をしてるか俺は知らない。
祖母曰く、両親は冒険家をしていたらしく安否はわからないということであった。俺はユナとずっと一緒に育てられたこともあって、ユナのお母さんとお父さんが俺の両親みたいな存在であった。
ブラーハム村には長居は出来ないが、ユナがお父さんお母さんに事情を説明しに行く時間は出来たので、ユナは家に入っていった。隣の家ということもあり、俺も祖父母に別れを告げにいった。俺の祖父母は地主ということもあり、比較的大きな家に住んでいるが木造の民家である。そして、古びたドアを開けた。
「ただいま…」
そう言うと、見知らぬ二人組男女の大人が立っていた
。俺は警戒し、剣を作り出し構えた。女の方が何も武器を持たず俺に飛び込み、俺を抱きしめた。
俺は振り払った。
「お前誰だよ!油断させて俺を捕まえる気か、勝手に人の家に入り上がって!」
俺はそう言って斬りかかった。そうすると、相手は手を振りかざした。斬りかかったと思ったら、気づいたらさっきと同じ場所に立っていた。俺は呆然としていた。そうすると、女は
「怯えさせる気は無かったんだよ。ごめんね」
と俺ににっと微笑みかけた。
「お前ら誰だ!何か用か」
「私達はあなたの両親だよ」
俺は一瞬驚いたが、
「そんなの嘘だ!俺の両親は物心つく前俺を見捨ててどっかいった人で無しだ。帰ってくるはずがない。」
俺は動揺していた。そうすると、男が鞄から絵を取り出した。
「この絵は、お前が赤ちゃんで生まれた時に絵師が俺と母さんとお前の誕生を祝って描いてくれた絵だよ。
信じられないのは分かる。事情があってここに居られなかった。本当はシャルクにすごい会いたかったよ」
その男は泣きそうになりながらそう言った。
そして、母親が泣きながらもう一度俺を抱きしめた。
「ごめんね、寂しかったよね。本当お母さん最低だね。お母さんと呼ばなくても良い、でも今は抱きしめさせて」
そして、俺は吹っ切れて大泣きした。
「みんなとーちゃんとかーちゃんがいるのに、俺だけなんで居ないんだろって、でもユナのとーちゃんとかーちゃんが両親みたいに可愛がってくれて、でも寂しかった。」
「分かるよ。本当にごめんね」
そして、俺は涙を拭いた後、
「俺、今王都から追われてるんだ。」
と告白した。
「分かってるよ。だから私達戻ってきた。」
俺は驚いた顔をして
「えっ!どういうこと。」
「私も例外スキルの持ち主で、王都には隠して居たんだけど、あなたを産んだ後バレてね…お父さんが守ってくれてね。この国を一旦離れた。それで各国を放浪しててね。」
えっ!答えになってないよ」
「ごめん、ごめん。例外スキルはある一定の確率で遺伝する。まあここから話が長くなるんだけど、大丈夫?」
「多分無理!時間ないもん。追っ手が来てるもん。」
「そんなの大丈夫だよ。ちょっと待ってて、ユナちゃんの家は隣だよね。」
「う、うん」
俺は何をするのかわからなかった。
そして、家の外へ出た。そして、数秒後ズゴーンと激しい音がした。気になって外を出てみると全然違う場所に家が二件並んであった。立ってるお母さんに話かけた。
「何をしたの?」
「私のスキルは空間切断スキルって言ってね。ある一定の空間をその空間から切り離して、違う空間とつなぎ合わせることが出来るの。」
俺がいうのもなんだがチート過ぎるだろと思った。
「そういえば、おじいちゃんとおばあちゃんは?」
「2人は、昨日もあなたが心配で、ずっと起きてたから寝ちゃった。」
俺は申し訳ないことをしたなと心底思った。
騒音に気づいた、ユナの一家が外に出て来た。
ユナの父さんと母さんは俺の両親が帰って来たのを知って居たみたいであった。そして、俺に
「ユナを守ってくれて、ありがとう」
と頭を下げられた。
「いや、俺がユナに守られたんですよ。」
そう言うと、ユナの父親は俺に微笑みかけ、
「やはり、ユナが言っていた通りいい男になったな。これからはユナを頼む。」
と言われた。俺は動揺して、頭を下げた。そして、ユナは俺にガッツポーズをした。
そして、俺の母親が俺とユナを呼び、
「私の名はリーナ、シャルクの母親です。」
「初めまして、私がユナです。」
と満面の笑みで言った。
「にしても、シャルクに勿体無いわねー」
と言い、からかう。
「まあ本題に入るとしよう。ユナのお母さんお父さんにはもう伝えてあるからあとはあなた達だけね。
じゃあ、なんでシャルクが例外スキルの持ち主だったか分かったかと言う前に知ってもらいたい、これからに関わる重要なことがある。」
俺とユナは息を飲んだ。
「この世界は神の宝玉と言うのと、魔の宝玉が封印されていて、均衡を保っていた。そして、それはクラムブルク神殿と言うところに封印されていたのだが、ある時その封印が解かれ、両方の宝玉は飛び散った。
宝玉はどちらも6個ずつある。宝玉に触れられるのは神のスキル、魔のスキルを持った者のみらしい。他の人が触ると死んでしまう代物であった。神のスキル、魔のスキル所有者を調べるため、予言スキルの婆ちゃんに頼んだらあなたの名前が最初に出た。でも、他のはまだ分からない。そして、処刑という名目でお前を捕らえ、最強の兵士として国の武器にするつもりだったってこと。だから、この国にはもう居られない。
これから、神のスキル所有者と魔のスキル所有者を求めて、各国があなたを狙ってくる。だから、あなたは神のスキル所有者を仲間につける。魔のスキル所有者は、今回の件で均衡が崩れたことで魔界と現世に歪みが生じて、現世にも魔界のモンスターが進行して来てる。そして、魔界の執行官と呼ばれる6人が魔のスキルで力を取り戻した。あいつらはお前らを狙ってる。
だから、話をまとめるとユナとお前で神スキル持ち主を探し出しす。これが第一の目標、今いる場所はスラバヤ平原ここから南東に進むと、グランダフ洞窟がある。そこを抜けると南の王国リユーナ共和国がある。そこで情報を集める。」
長くて、頭がパンクしそうになった。
ユナは、なんかやる気にも当たるように見えた。
「私達、なんか凄いことするんだね。なんか、かっこいいねシャル!」
こいつなにもわかってないんじゃないかと思った。
そして、母親が
「ジル!後はあなたが説明して。」
ジルとは俺の父親である。
「家の裏に馬車がある。そこに食料、生活必需品を用意した。」
「ジルさん達はどこに行くんですか?」
「俺は他の仕事をするんでな、後はお前らに任せる。」
そして、俺とユナの旅が始まろうとしていた。
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