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レッドルーム・ナイトメア  作者: NIRALEVA
7/23

#7

 は?


 ……どこだここ?

 なんでこんなところに?



 周囲をきょろきょろと見回す。


 現代の日本の都市部のような街の、道路沿いの歩道。

 道路には車が往来している。

 信号が黄色から赤になったら止まり、青でまた走り始める。


 店のようなものが立ち並び、看板のようなものがあちこちにある。



 だが、妙だ。



 景色はそのまま、日本のどこかの街といってもいい。

 だが、看板なんかに書いてある文字のようなものは、全く見たことがないし、全く読めない。

 道路を走っている車の車種も、まるで見たことがないものばかりだ。

 そして何より。



 誰一人として、人がいない。



 街は機能しているはずなのに、歩道から覗き込んだ店内にも、走っている車の中にさえも。

 まるで人影が見当たらない。


 頬を軽くつねってみる。

 痛みはない。


 思いっきりつねってみる。

 痛みはない。


 つまり、これも夢ってことか?



 あちこちを見回してるうちに、もうひとつ奇妙な事に気がつく。


 俺は、この街を知っている……?



 例えば、この路地を入った先には、雑貨屋らしき店が……あった。

 歩道に戻って、少し来た道を戻った右手には、ゲームショップらしき店が……あった。


 土地勘、とでも言えばいいのか。

 確かに初めてくる街のはずなのに、大体どこにどんな場所があるのか、把握できている。



 それと、もうひとつ。


 さっきから、妙な焦燥感がある。

 この街から、出なきゃいけないって気がする。

 でもどうやって?

 それも多分、分かってる。



 俺は歩道を真っ直ぐに歩いていき、それを確認する。

 大きめの五差路だ。

 十字路に、斜めの道を足したような形の交差点。

 そして、その斜めの道がある方向に……あった。

 大きな赤い看板が目印の、おそらくデパート。


 何故かは分からないが、やはり俺はこの街の土地勘がある。


 そして、そのデパートに背を向ける形で、反対方向へと歩きだす。


 信号なんかは念のため守る。

 たまに横断歩道を渡ってる最中に、車がこちらへ曲がってくることはあるが、どうやら俺の存在は認識されているようだ。

 目の前で一旦停止し、俺が渡りきると、また走り始める。

 通りすがりに車の中の様子を見てみたが、人の姿は見当たらないのに、ハンドルはちゃんと回っていた。


 ひたすら真っ直ぐ歩くと、右手に黄色い看板の、居酒屋のような店が見えてきた。


 この店を目印に、さらに先へと進む。


 小川にかかる小さな橋を渡り、その先は長く続く上り坂。

 その手前に踏切がひとつ。

 電車は来ていない。


 踏切を渡り、左右が住宅街となっているその上り坂を、ひたすら歩き続ける。

 街を出なきゃいけない、という焦燥感は、時間が経つにつれ、徐々に強くなっていく。

 でも、多分、もう大丈夫だ。

 この坂をのぼっていけば、多分。

 根拠はないけど、自信はある。

 ほら、この青い標識のある十字路を過ぎれば






 目が、覚めた。

 窓の外から部屋に光が差し込み、鳥の鳴き声が聞こえる。


 体を起こす。

 脂汗なんかはかいていない。


 夢を思い返してみる。

 どんな街だったかは覚えている。

 が、あの土地勘は思い出せない。

 頭の中に地図でもあるんじゃないかってくらい、詳細に知っていたのに。


 不思議な夢だった。

 なんで人がいないのかも、文字が読めないのかも、焦りを感じたのかも分からない。

 そもそもなんであんな場所の夢を?



 ドコカニ ツレテ イカレル



 脳裏に、その言葉が浮かぶ。


 あの黒いヤツのせいか……?

 理屈はよくわからんが、アイツが俺に重なったせいで、あの街まで連れて行かれたのか?


 ……いや、考え過ぎだろう。

 つい昨日まで、赤い部屋の夢で参ってたんだ。

 その夢を見なかったという事は、あの夢はもう終わったんだ。

 今日たまたま見た不思議な夢を関連づけるのは、早合点もいいところだろう。






 今日もまた、いつもと変わらぬ日常が始まる。

 土曜だし、学校も早めに終わる。

 明日は日曜だ、どこかに出かけるのも悪くない。

 連日の悪夢から開放されて、いい気分でなんでも出来そうだ。

 気になっていた映画もあったし、それを観に行ってみようか。

 ああ、平穏って素晴らしい。

 平凡万歳。






 その日寝付いた俺を待っていたのは、そんな気分をぶち壊しにする、またあの街の夢だった。 

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