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レッドルーム・ナイトメア  作者: NIRALEVA
3/23

#3

 まただ。


 昨日みた夢だ。


 相変わらず体は動かせない。


 辺りを見回しても、昨日と同じ真っ赤な部屋。


 そして……、視界に入れたくなくても、入ってくる、認めたくない存在。


 黒い人影。



 落ち着け俺。

 これは、夢だ。

 単なる夢だ。


 あの黒いヤツの正体がわからなかろうが、なんで怖いかわからなかろうが、関係ない。

 最後には夢から覚めて、それで終わりだ。

 別に実害なんてない。

 単なる夢だった。

 だから、今回もきっと、多分、そうだ。


 だから別に、なんともない。



 黒い人影が徐々に迫ってくる。



 なんともない。



 一歩、また一歩。



 なんともない、はず、なのに。



 また一歩。



 なんでだ?

 なんでこんな怖いんだ?



 また、一歩。



 頭では分かってる。

 分かってるはずなのに。

 なんでこんな怖いんだ。



 一歩。



 嫌だ、怖い。

 理屈抜きに怖い。

 得体の知れない恐怖。

 大丈夫なはずなのに。

 この夢が終われば、また気分悪く目が覚めて、それだけのはずなのに。



 一歩。



 やっぱりダメだ、これダメだ。

 怖い。 逃げたい。 でも動けない。 嫌だ。 くんな。 こっちくんな。



 また、一歩。



 あああああああクソ!だからくんなよ!なんだよ!何なんだよお前!!

 何がしたいんだよ!!なんで来るんだよ!!くんなよ!!こっちくんなよおおおおおおおおおおおお!!!


 眼球以外は全く動かせない。

 目を閉じてしまいたくても、目蓋すら動かせない。

 どんなに目を動かしても、目に入るのは自分の膝と、赤。

 どんなに目を動かしても、絶対に視界に入ってくる、黒。


 叫びたい。

 怖い。

 何なんだよこれ。

 どんな拷問だよ。

 夢なら途中で覚めてもいいだろ?

 頼むよ、なあ……。


 ゆっくりと手を伸ばしてくる、黒。

 ゆっくりと視界を埋めていく、黒。


 やめろ、頼む、やめ






 雨が降る音がする。

 濡れた路面を走る、車の音。

 ちょっと薄暗い、いつもの俺の部屋。


 そうか、今日は雨降ってんのか。


 体を起こす。

 全身がじっとりと脂汗に包まれている。

 体を動かすと、張り付いた衣服がはがれていく、不快な感覚。


 またあの夢か。


 昨日と全く同じ悪夢。

 まさか2日連続で見るとは。


 携帯を手に取る。

 時刻表示は、アラーム設定した時間の数分前だった。

 とりあえずアラーム設定を切っておく。


 少しして、深呼吸と同時に、深いため息をつく。

 昨日見た悪夢が、よほど印象深かったんだろうか。

 出来れば二度と見たくなかったのに。


「あー……、クソっ……。」


 独り言を吐き捨てて、シャワーを浴びるべく風呂場へと向かった。






 その日もやっぱり、いつも通りの日常だった。

 昼休みに弁当を食いながら、ふとあの夢のことを思い出す。

 まさか3日連続で見るこたないだろうな……。

 はぁ、と思わずため息をつく。


「んんー?ドウシタノ透ー?タメイーキナンカツイチャッテサー。」


 何故かわざとらしいカタコトで、隣の相田が絡んできた。


「いや別に、ちょいヘンな夢みてな。」

「お? 何なにどんな夢よ? 話してみ?」


 興味津々の目をして、相田が椅子を寄せてくる。

 コイツに話したところで、適当にいじられて笑われるだけだろうな。

 ってかたまたま2日連続で同じ夢見たってだけで、別にそこまで珍しい事でもない。

 んで夢の内容が内容だけに、コイツだけには絶対話したくない。


「別に大した内容じゃねえよ。 寄るな離れろ。」


 相田の椅子に足をかけ、押し戻そうとする。

 が、相田はそれを踏ん張ってこらえようとする。


「まあ待て、俺はその唐揚げに用事がある。」

「知るか、誰が好物をたやすく渡すか。 離れろ。」


 足にググっと力を込める。


「そう……!言わずに……!1つ……!」


 こらえたまま相田の視線が唐揚げをロックオンしている。

 させんぞ、この唐揚げは死守する。


 押し出そうとする椅子を必死に引っ張りつつ座ってる相田の姿勢は、前傾気味になっていた。

 ここだ、というタイミングでサっと足を引っ込める。


 勢い余った相田は、そのまま俺の机の角に頭突きをかます形になり、のけぞって後ろへ倒れ込んだ。


「ぐおおおおおおおお!! 角が! 角がああああ!!」


 両手で額を抑えながら悶絶する相田。

 悪は去った。

 すかさず唐揚げを頬張る。

 んまい。


「お……おお……、酷くね? この仕打ち酷くね?」


 額を抑えたまま、涙目の相田が悲壮に満ちた表情をこちらに向ける。


「知るか。 毎日毎日欠かさず俺のおかずを奪っていくお前の方がよっぽど酷いわ。」

「ぐっ……、返す言葉もない……!」


 いやそこは頑張って何か適当に反論しろよ。


「だが、俺も鬼じゃない。 貴様にはコレをくれてやろう。」


 俺はプチトマトのヘタを摘み上げると、ぷらぷらと揺らしながら突き出した。


「ち、ちくしょう! 頂きます!!」


 食うのかよ。






 今日もやはり、ただの平穏な日常だった。

 あの夢の事は気になるが、今のところ寝覚めが最悪なだけで、他に害はない。


 だがやはり気になる。

 流石に3日連続でアレを見るのは避けたい。


 俺は何か情報がないかと思い、もう一度ネットで検索をかけてみた。


 こないだ検索したときは、そのまんま「赤い部屋の夢の噂」で検索しただけだった。

 ちょっと検索の方法を変えてみる。


 「赤い部屋 夢 噂」で検索……、特に情報なし。

 「赤い部屋 悪夢」で検索……、やっぱり情報なし。

 もう一度、あの夢のことを思い返してみる。

 これだとどうだろう。

 「赤い部屋 黒い人影 夢」で検索……、やっぱないな。

 相田はネットで見た噂話って言ってたが、どこで見たんだろう。

 相田の話の内容を、もう一度思い出してみる。


 そういえば、部屋が徐々に狭くなっていくとか言ってたな……。

 昨日はそんなこと忘れてたし、確認もしなかったが……、狭くなってたか?

 おんなじ部屋にしか見えなかった気もするが……。


 軽くため息をつく。

 何ちょっとムキになって調べようとしてんだ俺は。

 確かに不気味な夢だったし、2日連続で見たが、それだけだ。

 気にしすぎると、また同じ夢を見てしまいそうだ。

 気にしたら負けだな、もう寝よう。


 ベッドに入り、携帯のアラーム設定をして、目を閉じる。

 なんか疲れた。

 ネットを見すぎたか。

 眠い。






 くっそ……、またかよ……。

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