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レッドルーム・ナイトメア  作者: NIRALEVA
2/23

#2

 赤い。


 視界全てが赤い。


 どこだかわからないが、真っ赤な部屋の隅にいる。


 膝を抱え、体育座りの姿勢のまま、体がピクリとも動かない。


 眼球だけは動かせる。


 ぐるぐると辺りを見回す。


 赤い。ひたすら赤い。



 床と壁の境界も、壁と天井の境界もわからないほど、濃厚な赤色の部屋。

 家具も、ドアも、窓もない。



 ふと、視界に黒いものが入る。

 俺のいる部屋の隅とは、対角線上の部屋の隅に、何かがいる。

 人の形をしている。

 だが、輪郭がはっきりしない。

 まるでよくできたシルエットアニメのような存在が、一歩、また一歩と、ゆっくりこちらに歩いてくる。



 状況がまるでわからない。


 この部屋の正体も。


 この人影の正体も。


 何故身動き出来ないのかも。



 だが、何故かわかる。


 この人影は、ヤバい。


 何かよくわからんけど、こいつはヤバい。


 このままじゃヤバい。

 逃げたい。すぐに逃げ出したい。

 でも眼球以外全く動かない。



 やめろ、くんな。


 頼むからくんな。

 それ以上くんな。

 こっちくんな。 来るなって。 来るなよ。 来るなよぉ!!

 やめろ!!誰か!!くっそ!ヤベえ!!助けて!!神様!!誰か!!いねえの!?



 俺の目の前までたどり着いた人影が、ゆっくりと手を伸ばして、真っ黒いその掌で俺の視界を塞いでいく。



 嫌だ!やめろ!やめて!やめてくれ!!なんなんだよ!!やめろよ!!やめろおおおおおおおおおおお!!!






 窓からうっすらと光が差し込んでいる。

 遠くで車の走る音と、鳥の鳴き声。


 いつも通りの朝。

 いつも通りの俺の部屋。


 ゆっくりと体を起こし、部屋を見回す。

 シャツが脂汗でべっとりと体に張り付き、気持ち悪い。


「ゆ、夢……か……。」


 寝覚めの気分は最悪だ。

 右手を額に当てる。

 熱はない。

 だが、脂汗で張り付いた髪の毛がうざったい。


ピピピピピピ ピピピピピピ


 突然鳴り出したアラーム音に、思わず体がビクッと反応する。

 設定しておいた携帯の目覚ましアラームだ。

 手早く手に取り、手慣れた操作でアラームを止めると、深いため息をつく。


 妙な悪夢だった。

 明らかに、昨日相田が話してた内容と、全く同じ状況だ。

 話に聞いてる程度だと、すげえチープで出来の悪いオカルト話にしか思えなかったが、実際夢に見るとこうも強烈だとは。

 正体不明の恐怖の余韻が、まだ僅かに残っている。


 結局、何がヤバいのか、何故ヤバいのか全くわからなかったのに、本能的に、とでも言えばいいのか。

 あの黒い影に何かされるのは、絶対に避けなきゃならない、そんな気がした。


 なんであんな夢見たんだろう。

 相田の話は適当に聞き流した程度のはずだが、深層心理では気になってたとかそういう話か?

 心理学みたいな難しい理屈は全くわからんが、実際は夢に見るほど気にしてたのか俺?



 そんな事を考えてた途中で、フっと鼻で笑ってしまう。

 何深い事考えようとしてんだ俺は。

 深層心理だか何だか知らんが、今日見た夢がたまたまそういう悪夢だったってだけじゃねえか。


 とりあえず汗かいて気持ち悪いし、シャワー浴びてから学校行こう。






 その日も一日、いつもと変わらない日常だった。


 クラスメートの友人らとバカな話して。


 苦手な古文の授業では居眠りこいて。


 相田にウインナー1本食われて。


 下校中に前を歩いてた女生徒のスカートが風でめくれてパンツ見えて。


 一緒に歩いてた友人らと歓喜の声あげたらその子に睨まれて。


 テレビではくだらないバラエティ番組やってて。


 いつものように目覚ましアラーム設定して、ベッドに入って。






 視界が赤くなって。


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