そうして
「久しぶりだなぁ」
駅のホームに足をおろし、ホームから見える景色に目を泳がせた。
建設中のビルに隠れては見える駅前の商店街。その奥にはうっすらと姿を表しては消える、町唯一の観光地がある山。それ以外は、“これ”と言ったモノは余りない。あるとすれば、少し前に聞いた“ご当地アイドル”が“それ”だろう。さしずめ、行き当たり“ばったり”感は否めない。駅の掲示板にも、ポスターが貼られている。
「ここにも、“アイドル”ができたのかぁ」
ポスターを見ながら“クス”っとニヤついては、改札まで歩いていった。
未だに電子機能も使えない“切符”の自動改札を通り、木造造りの駅出入り口に足を運ぶと、目の前には、モニュメントを中心に円を描くようにバスやタクシー乗り場がある。僕は駅出入り口の横にある錆び付いたベンチに腰を掛けた。
ジュリアにメールを送った。
「今着きました」
メールの送信確認をしては画面を消し、ポケットにしまった。変わらぬ景色に目を瞑り、ゆっくりと空気を肺に入れた。
「ふー」
この街も昔とは変わってはきている。が、雰囲気はさほど変わってはいない。区画整理もされていなければ、昔から変わらずに営業している商店も“ここ”にはある。ここに来ると嫌でも“昔”の自分に戻ってしまう。
「ジュリアに会うのも久しぶりだな」
メールでのやり取りはあるのが、“会う”事は、ほとんど無い。メールでのやり取りもここ数年、またとり始めたぐらいだ。“あの時”から互いに連絡をとれなかった。
ーー
「ジェシー?どうしたの?なにかあった?」
僕はジェシーに何度も何度も聞いた。身ぶり手振りしながら、「教えて?」と何度も聞いた。
ジェシーは僕の質問に何度も首を横に振ってはうつむいている。
「何も話してくれないなら、わからないよ、教えて?」
僕は、ジェシーの肩に手を添えながら泣きそうになる自分を隠してはジェシーに聞いた。ジェシーは、僕の顔を見ては、何か伝えようと口をモゴモゴと動かしては首を横に振っている。ジェシーの目からこぼれ落ちる涙が僕の腕に落ちてくるのがわかった。
「ジェシー?ジェシー?」
ジェシーは僕の顔を見ては、泣きじゃくる顔をしながら首を横に振った。一度大きく目を瞑り、口元を抑えては僕を振り払うように走りだした。僕は走り出すジェシーを追いかけるように足をあげた。焦りからか自分の足につまづいて倒れこむように頭から転んだ。手のひらは擦りむき、顔には砂利が張り付いている。僕はすぐさま起き上がり、ジェシーの走って行った方向へと全力で追いかけていった。 何十メートル、何百メートルも。死に物狂いで追いかけた。けれどジェシーの姿は見えなくなっていた。
「なんなんだよ、どうなってんだよ」
砂利のついた顔を腕で拭いては、流れる涙も気にせず、ジェシーと、、、ジュリアのいる家まで走って行った。
「いるんだろ?いてくれよ、、、」
家の門を開けてはドアの取っ手に手を置いてドア越しに“ドンドン”と叩いた。
「何で誰も居ないんだよ、誰か、、誰でもいいから、、出てきてくれよ、、、」
僕は、ドアを叩くたびに涙がこぼれ、膝から崩れていった。
僕は、その場で座り込み夜になるまで待っていた。
「なんなんだよ、、、」
僕は無力感と脱力感で、体を持ち上げるのに精一杯だった。僕は無意識のままドアを背に、体を引きずるように起こしては進まぬ足を投げ出すようにゆっくりと、ゆっくりと歩いて帰った。
「。。。。。」
自分の家に戻り砂利のついた服や血まみれになった手も洗わずにそのまま自分の部屋へと入っていった。
深いため息と共に引きずりなから、階段を上がり部屋へと戻っていく。扉を開け、机の上に一枚の“手紙”が置いてあるのに気がついた。
「、、、!?」
今まで動かなかった体をムチうっては、勢いよく階段を転げ落ちるように降りた。居間でTVを見る母親に向かって言葉をなげつけた。
「これって“いつ”届いた?」
僕は手紙を見せては母親に聞いた。
「ん?あー、確か30分位前だったかなぁ」
「何で教えてくれなかったの?」
「あんた、いなかったじゃないのよ」
「、、、くっそー」
「なっ?親に向かって“クソ”とはなんだい?まちなさーい」
僕は靴も履かずに外に出ては無我夢中で走って行った。そう“いつもの”場所に。誰も居ないのはわかっている。知っている。けど、“そこ”にいかなきゃと体が走り出す。
「クソーバカヤロー、、、」
僕は走りながら大きな声で叫んでは無我夢中に走って行った。
「はぁーはぁーはぁーはぁー」
“いつもの”場所にきては、膝に手を置き体 全体で息をした。そのまま仰向けに倒れこんだ。
乱れる息をそのままに、手に握る“手紙”を見ては涙が溢れてくる。
ーーーー
ごめんなさい。この手紙を読んでる頃は、私たちは“そこ”には、居ないのでしょう。早く“あなた”に伝えたかったのですが、伝えることが出来ませんでした。、、、ごめんなさい。
理由も言わず、何も“言えず”ごめんなさい。あなたと“知り合えたこと”、あなたと“付き合えたこと”。私、、、私たちは嬉しかった。おねぇも、あなたに“感謝”してます。“今回”のこと、私が“言えない”事は、おねぇも知っていて、おねぇが、「私が言おうか?」と聞いてきたのですが、私が「自分で話す」と言っては、、、、ごめんなさい。言えませんでした。
私は、耳が上手く聞こえません。言葉も上手く出せません。私があなたの、、、あなたの“荷物”には、なりたくありません。、、、ごめんなさい。
理由は、、、、聞かないで下さい。ただ、、、どうか、私と、、、、
「“別れてください”」
我が儘を言ってすいません。怨まれても仕方ありません。私があなたに“してあげられる”、、“させてもらえる”ことは、今の私には“これ”しかありません。ごめんなさい
ただ、許してもらえるのなら一つお願いがあります。
私がプレゼントしたあの“帽子”もし、“再開出来る”のでしたら、またその“帽子”をかぶって、会ってはもらえませんか?
私の我が儘をお許しください。
あなたのことが、“大好きでした”
ありがとうございました。それでは、、、
ーーーー
涙が止まるまで、僕の中から無くなるまで僕は涙を流し続けた。何分も、何十分も。何時間“そこ”にいただろう。涙が顔に張り付き、目から水分が無くなり痛みさえ出てきた。僕はそれでも“泣く”事を止めることができなかった。
「クソ、、別れるってなんだよ、クソー、、一人で考えてんじゃねぇーよ、、、僕の意見はねえーのかよー、、、なんなんだよー、、、」
僕は失った涙を拭うように顔をおおっては、「いつか、いつかまた“再開”したら、こっちから“別れてやる”って言ってやる」と心の底で叫びながら、大きな声で泣いた。
ーー
自然の風が頬を触り、自分が泣いていることに気がついた。
「、、、クソ」
流れる涙を拭いては、「まだ流れるのか、、」と口に力を入れた。
「パッパーン」
目の前のバス乗り場に一台の車が止まりクラクションを鳴らしては、窓を開けて手招きする女性がいる。
「ごめーん、待った?」
窓から手招きをしながらジュリアが声をかけてきた。
「おー。大丈夫だよ」
僕はジュリアに右手を大きく振っては言葉を返し、ゆっくりと腰をあげては車の方へと歩いていった。顔を何回も触りながら。
「ごめんね、待たして。来る途中渋滞にはまってさ、、」
助手席に乗り込む僕を見ては、ジュリアは相変わらずの“さっぱり”さで話をしてくる。僕としては、“変わらない”ことが“一番大切”だと、“あの時”から思っている。僕は笑みを溢しながら話すジュリアに「うん、うん、」と相槌をうった。
「そうそう、あんたに“招待状”送った時さ、昔のこと思い出しちゃってさ」
「昔のこと?なんの?」
僕はとぼける“ふり”をしてはジュリアに返事をした。ジュリアは“昔”という“キーワード”に僕の顔を見ては少し躊躇う素振りをした。
「なんだよジュリア?話つづけろよー」
僕は“偽る”心にムチを打っては、平然を装った。ジュリアはその“姿勢”に気づいては、“気づかない”ふりをして、話をはじめた。ジュリアはアクセルを踏み、ハンドルを持つ手を少し強く握っている。
「あんたと出会った頃を思い出してね」
ジュリアは少し窓を開けては髪をなびかせている。
「私たちが引っ越した日、あんたたち見に来てたでしょ?あの時さ“ここ”はいい町なのかなぁ?って疑問に感じちゃった」
「え?なんで?」
「だって私たち見て逃げたでしょ?私たちってこんなんだからさ」
ジュリアは、僕を見ては右手で自分の事をさして、前を向いて言ってきた。
「確かに、私たちは“純”日本人ではないしねぇ」
「まぁ、、ねぇ」
「なにそれ?あんたねー」
「前見て前見て」
ジュリアの話すことに相槌をうつ僕を見ては、ハンドルから手を離して叩いてきた。
「あぶないって」
「あんたがいうからでしょ?」
ジュリアから振ってきた話に“のっかった”だけなのに、ジュリアは僕のせいにしてきた。僕は、やっぱり、“ジュリアはジュリア”だな、と思っては鼻で笑った。
「あ、あんたねーそれはなくない?」
「いや、あ、ごめんごめんてー」
睨むジュリアに笑っては、拝むように謝った。ジュリアは“それ”を見ては「まったく」と言って「もう」と息をはいた。
久しぶりに感じるこの景色にこの“空気”。僕は自分で思っていた以上に“悪くない”気がした。
道路に建てられる色とりどりの看板を目にしながら、ジュリアは車を走らせていく。
「ところであんた、“今”どうなってんの?」
「え?“今”ってなんの?仕事?プライベート?」
「あー、仕事は今も“あの”会社でしょ?」
「そうだよ、メールで言った“その”会社だよ」
「でしょ?あたしが言ってんのは、プライベートよ、プ・ラ・イ・ベート。do you know understand?」
「イエー、イエス アイ ドゥー」
「Oh yeah、ok.came on」
たまにジュリアは、英語で話してくる。昔から“嫌がらせ”をされる度に「私たちは、“純”日本人だ」と言ってるにも関わらず、英語を話すんだから本末転倒だ。
「で、どうなのよ?」
ジュリアは僕の顔を見ながら、“顔色”を確認しながら、左手を振りながら言ってきた。僕には“それ”がどういう“意図”なのかはすぐにわかった。
「ん?“今”はいないよ。申し訳ないけどねぇ」
僕はジュリアに“意図”をぶつけ返した。互いに“本音”を隠しては“誤魔化し”ながら、話を続けた。“あの時”した“誓い”とは裏腹に。
「そっか、“今”はいないのか、なるほどねぇ」
ジュリアは「へー」といいながら何度も頷いていた。
「ならジュリアはどうなんだよ?いるのかよ?」
僕は少し拗ねるようにジュリアに聞いた。ジュリアは、あっけらかんと返してきた。
「あんたも知ってるでしょ?私が“男”嫌いなの。私は“女の子”が、いればそれで“いいの”」
ジュリアはハンドルから手を離しては拝むように手を組み“悦”に浸っている。
「だから、ハンドル、ハンドルもってー」
僕は“悦”に浸るジュリアに声をかけては、離すハンドルに手をかけては、車の走行を“救助”した。
「ごめんごめん、ありがと」
「まったく、頼むよー」
頭を掻きながら謝るジュリアに、僕は怒るようにため息をはいた。
流れる景色は田園風景を写しては、懐かしい香りを漂わせながら風が体を触ってくる。ジュリアは、髪をなびかせながら、鼻歌交じりに運転している。
「ジュリア?連絡を取り出してから何年たったっけ?」
僕は、二人の“共通点”でもある“話題”に足を踏みいれた。今だからこそ“ハッキリ”とさせたいことがあったからだ。それはきっと、“僕”にとっては“心にくる”話になるかもしれない“話題”だ。
ジュリアは、ゆっくりと僕の顔を見ては、「そうねぇ、どのくらいだろ、、、」と言葉を濁らせ苦笑いを浮かべた。
「また“連絡”をとれるとは思ってなかったし、それはそれで“嬉しい”んだけどさ、、、」
僕は、“意図”とは裏腹に“賭け”にもでていた。そう、“あの時”“別れた”ジェシーの事を。“理由”の事を。
僕は“あの時”思った事を、忘れずに持っている。“あの約束”も。今でも“あの帽子”は僕の“こだわり”の一つにもなっている。
僕は再び連絡を取り始めた時から、ジュリアには“ジェシー”のことは聞いてはいない。ジュリアから、“ジェシー”から言って来るのを“待って”いた。これは、僕にとっての「約束であり“こだわり”」だった。
複雑な顔をするジュリアに、僕は“招待状”を持っては、ジュリアに言い寄った。
「あ、それと、これって、、、」
「うん?、、、うん、後でわかるわ」
横目でチラッと見ては、声を小さく言ってきた。




