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始まり

初めて投稿します。自分が、こんなの読みたいなと書いている作品です。拙い文章かもしれませんが、興味を引いたら読んでください。なかなか、物語が、進まないかもしれませんが、そのへんはご了承ください。

ー紙飛行機に思いをのせて、

言葉少なめに、愛してるー


何かの映画であったワンシーンを、あの頃の僕は、必死にマネをしていた。


幼い子供の恋物語、大人への反抗からの一途な恋愛、果ては、憎しみにも似た愛する人へのラブロマンス。

到底叶わない夢物語だと感じつつも、僕にも、そんな出逢いがきっとくると、過度の期待を持っていた。


格好つけるのは、お手のものだ。ただ、周りからは、面白がられ笑われたり、軽蔑の眼差しで見られたりもした。


友達の誕生会、クラス会、パーティー、と、イベントがあるたびに、白いスリーピース、ベルトは腰ベルトじゃなく、サスペンダー。靴は、 紐がない靴スリッポン、どう結んでも縦結びになってしまうから、苦手だ。色は黒。

そして、どんな時だろうと忘れてはならないモノがある。それは、赤い花束だ。それが紳士というモノだろ?

そして最も重要なのが帽子。それもハットだろう。キャスケットも、良いけど、やはりここは、ハットだろう。

どんな映画でも、モテル男は、ハットに、かぎる。

良くも悪くも、映画からの影響を、そのまま持ってきただけだ。

だが、残念なことに、容姿が、付いてこなかった。

ちびで、出っ歯の絶壁頭。それに、布団を丸めて縛ったような体型だ。何一つも良さがない。いわゆるミソッカス、不細工のかたまりだ。

周りからは、「不細工では、、、、ないよ」

これが、一番しっくりくる表現だ。


恋に憧れを抱くのは、誰にでもある。しかし、あの頃の僕は、それ以上に、恋というものに、恋をしていたんだ。相手よりも、どう振る舞うかが、重要だった。

たが、現実は、そうは受け入れてはくれない。

好きになるたびに、何も出来ず、格好つけることさえできず、ただ、顔を真っ赤にして、体をふらふらと揺さぶり、聞こえるか聞こえないかぐらいの声で、話しかけることぐらいしかできず、何度も聞き返されたりした。


理想は高く、常に男らしく紳士に、そして余裕の心。

そんな思いも、年を重ねるごとに色褪せていく。


薄く光る蛍光灯の明かり、ガタガタと音を立てる冷蔵庫、オールシーズン出しっぱなしの扇風機、どう転んでも、モテル男の暮らす部屋じゃない。しかも、風呂なし六畳、築40年の代物だ。

辺りは、高級住宅が建ち並ぶ、いかにも「ざます」的な人が住むベットタウン。駅からすぐに、ショッピングモール、美容室に食事何処。ブランド店まで建ち並ぶ、各国総出のお出迎えだ。

よくもまぁ、こんな場所に、10年以上も住んでるなぁと今さらながら思う。


駅からバスで、5分。徒歩なら15分20分といったところか。そこが、僕の住む場所だ。


高校を卒業し、何も考えずただ自分の中の理想を求めて、一人暮らしを始めた。


始めは、全てが新しく出合いもそれなりにあり、映画のような出会いもと、期待もしていた。何人かの女性とも、彼氏彼女の関係に発展したこともあったが、そう長続きはしない。

何せ、あの頃の自分と、あまり変わってはいないからだ。理想は高く持つけど、現実には叶わない。

真っ赤な顔してモジモジと、まではいかないにしても、あまり積極的になれないのは、同じだ。服装や見た目は、多少なりには変化はあった。

毎度一辺倒なスリーピースに赤い花束だったことを考えれば、多いに変わったと思う。

ただ、ハットだけは譲れない。これだけは、誰に何と言われようとも譲れない。


朝6時、朝日がカーテンの隙間から覗き込んでくる。その光に目をしばしばさせると同時に、目覚まし時計が鳴り響く。これが何時もの始まりだ。


起きて顔を洗い、コポコポとミルメーカーで珈琲を淹れて、朝の時間をたしなむ。これで、優雅にテーブルに椅子なら良いのにと、毎回思いながら、畳にちゃぶ台で、頭が、起きるのを待っている。


「ピーンポン」


音の割れた呼び鈴が、申し訳なさそうに聞こえてくる。。

頭をかきむしりながら、眠気眼で、ドアの方向に歩みを進め、ドアに手をかけたところで、声が聞こえる。


「宅配便でーす、宅配便でーす」

「ハーイ、ハーイ、ハイハイ」

「こちらに、サインを、、、」


朝の早い時間から、元気の良いはつらつとした青年が、といっても同じくらいの年齢だろう。あの元気さは、凄いな、とおっさんじみた事を思いながら、配達物をちゃぶ台の横に置いた。


コーヒーを片手に、ちゃぶ台の横に置いた配達物を手に、品名を指でなぞりながら目をやった。

「おも 、、い、で???」

何が誰の?よくわからないことに、口に含んだコーヒーを吹き出しそうになった。二度見三度見して書かれてる文字をよく確認したが、やはり、思い出 と書かれている。宛名は、薄汚れていて、読むことができない。

「チャッチャッチャチヤー♪」

宅配物に、気をとられてるうちに、携帯のアラームがなった、家を出る時間だ。貴重な朝の時間を「思い出」というものに邪魔をされるとは、なんとも言えがたいことだ。

いったい何の思い出なんだ。でも、自分宛にきたのだから、自分のなのだろう。でも、自分に送るようなモノなどあったか?一人暮らしを始める時には、大体のモノは持ってきたり、捨てたりしたし、実家には何も置いてきてない。誰かに何かを頼んだ覚えもない。あれこれと、記憶を頼りに思い返しながら、飲みかけのコーヒーを流し込み、慌てて家を出た。


歩きながら、うんともすんとも、言いながら考えた挙げ句、帰ってからゆっくりと確認すれば、解ることだと、結論に至った。それはそうだな、と、自分に突っ込んでみながら、唇を緩めた。一呼吸あけて、何かに違和感をおぼえた。周りがぼやけて見える。

「あっ」いつもあるべき場所に、あるべきモノがない。「眼鏡を忘れた」

寝起きであれこれと考えてたお陰で、眼鏡を忘れて出てきてしまった。この事のほうが、今は問題だ。家に取りに帰ることもできるが、無くても、人、形、モノはわかる。大体のことは大丈夫だろう。

ある程度のことは、こなせるはずだ。ただ、眼鏡がないぶん、若干しかめっ面になってしうのは、否めない。

普段から、目つきが悪いといわれているぶん、余計に気を使う。


何時もと同じ道のりで、何時もと同じ電車に乗り、何時もと同じ仕事場に行く。何も変わらない。刺激のない、甘ったるい日比。平々凡々とは、まさにこの事なのだろう。

朝の日差しが、走る車に反射する。行き交う人に、ぶつからないようにいつも以上に、歩幅が小さくなる。眼鏡を取りに帰るべきかと、頬を人差し指で軽くかきながら、周りに意識を向ける。

「おはようございまーす」

後ろから、渇いた声で挨拶しながら、肩辺りをポンと叩いてくる。不用意なことに驚き、声が漏れる。振り返り顔を見ようとしたが、太陽の光がまぶしくて、よく顔が見えない。


「あっ、今日は眼鏡してないんですね?眉間に皺よってますよー」

指先で眉間の辺りを触りながら、覗き混むように話しかけてきた。仕事場で知り合った2歳年下の、あずみ だ。


「そんな、皺よってたら、デートにもい けないですよー?」

「そんなのする相手いないよ」

「私が、いるじゃないですかー?」

「いやいや、結婚してるだろーお前はー」

「あははーざんねーん」

左手でおでこを押さえながら、笑顔で返してきた。知ってか知らずかは、わからないが、会うたびにデート出来ませんよって、話してくる。余計なお世話だと思いながら、苦い笑顔で切り返す。

薬指に光る指輪が、太陽の光でキラキラ輝いていた。僕は、あずみの肩を肘でポンとつついて、一緒に歩きだした。


眉間の皺は、少し深くなっている気がする。


「本日9:40から、消防訓練の実地、館内放送が流れましたら、速やかに指示に従って下さい。繰り返します。本日、、、」

仕事場に着くや否や館内放送が流れてきた。まだ、人はまばらだ。聞いている人はあまりいない。

「はぁ、実地訓練かぁ」

自分の席に鞄を置き、深い溜め息を吐きながら、腰を降ろした。何故今日なんだ?いつ連絡来たんだ?建物全体なのであれば、前以て連絡事項回してあるはずだろ?、眼鏡を忘れた事も相まって、腹いせまがいな思いとともに、また眉間に皺がよる。


「だから、ダメですよー皺寄せちゃー」

前の席に座っているあずみが、身を乗り出して、僕の眉間の皺を人差し指と中指で広げてきた。まるで、せがむ子どもにするように、頬っぺたを膨らませながら、あやすような口調でつづけて話してきた。


「そんなに、皺を寄せるぐらいなら、眼鏡つければいいのに、もう、いっそのこと、コンタクトつくればいいじゃないですかー?」

そう言ってくるあずみにたいして、ただ、忘れてきただけとは、言いづらく、ハニカンダ笑顔で、笑い返した。


終業時間30分前、今日も仕事が終わりに近づく。今日は、いつもよりも疲れた気がする。実地訓練や、些細なミスが重なったからなのかもしれないが、眼鏡をしてないのが、一番効いている。やはり眼鏡は必需品だなと、一人納得しながら、机の上を整理し、目頭をコリコリと、もんでみる。周りはまだ、書類を整理したり、電話をかけたりと時間一杯働いている。

オフィスの奥で、パタパタと忙しなく歩き回るあずみと目があった。資料片手にこちらに近づいてくる。

「ほらー、やっぱり眼鏡ないと疲れるでしょ?はい、これあげますー」

目の前で、歩みを止め、顔を見ながら持っている資料を小脇に挟み、薄いピンクのジャケットのポケットから、フェイスシートを手に、渡してきた。

「サンキューありがとです」

フェイスシートを右手で受け取り、左手で敬礼するようなポーズをして、おどけて見せた。

「あはははー」

あずみは、笑いながら資料片手に、また何処かに歩いていった。忙しない女性だ。

彼女は、この部署のサブリーダーだ。気遣いと、洞察力は、素晴らしいモノがある、それに皆をまとめる力もある。性格も明るく、誰に対しても優しい。あんな女性と、暮らせる男は幸せだろうな。


終業時刻になり、タイムカードを切った。

「これで、本日もお疲れさまですっと。」

毎回、切る時に声にだしてしまう。ちょっと恥ずかしいクセだ。誰にも聞かれてないか、いつもひやひやする

「おっ!!お疲れ」

「!?!?!?(聞かれた??)」

声と同時に体が、ビクッと反応した。

「今帰りか??」

「おっ!?柏田かぁ、おう、今帰りだ」

隣の部署の柏田だ。中途組で同期、3歳年上の破天荒な奴だ。何でも、前いた会社の社長の奥さんと、良い関係だったのが見つかって一悶着あって、ここに来たらしい。本当かどうかは、定かではない。

「今日は、眼鏡してないんだな??もしかしてコレか?」

肩に手を回し、顔の目の前で小指を立てながら、冷やかす前提の物腰で話をしてきた。

「もう、いいよ、眼鏡のことは。」

溜め息混じりに答えた。正直、眼鏡のことには、触れないでほしかった。眼鏡をしてないだけで、1日言われ続けたからだ。また、眉間に皺がよる。

「それより、今日暇か?暇ならちょっと付き合え、ってか、暇なんだろ。行くぞー」

「えっ!?あっあー」

柏田は、僕の予定など、気にする素振りなど見せずに、肩に手を置いたまま誘ってきた。お誘いというよりも、強制連行と言ったほうが、この場合、合っているだろう。


「へい、らっしゃい、まいどー」

威勢のいい掛け声と、懐かしい香りのする 木造立ての和風居酒屋だ。ここは、柏田の行き付けだ。週に4日は足を運ぶぐらいの常連だ。カウンターの前のテーブル席に座り、いつものごとく、おしぼりで、顔を拭いた。

店内は、たばこの煙と、鳥の燻す煙で、充満している。それを楽しむようにカップルやサラリーマンたちが、何だかんだと騒いでいる、一人飲みで落ち着く人もいる。燻す鳥の匂いは、格別に食欲をさそってくる。カウンターでは、汗だくになりながら、笑顔を絶やさない男性がたっている。マスターだ。大将と呼びたくなる、恰幅の良いふっくらとした体型の主人だ。本人は、マスターと、呼ばれたいそうだが、大将で、通っている。10人中10人とも、見れば納得するだろう。僕は、マスターと呼んでいる。

「何しましょ?」

「う~ん、とりあえず、ビールかな

ビール2つ」

「あいよー、ビール2つー、ママービール2つねぇ」

「ハーイ」

威勢の良い声の後に、澄みきった甘い声が、返ってくる。看板娘ならぬ、看板ママだ。

「はい、ビールねぇ、今日もお疲れさま

優しい口調で、柔らかい物腰。普通の男なら、一発で惚れ込んでしまう。言葉なんていらないぐらいのフェロモンたっぷりの美魔女だ。

「あざーっす、ママ今日もきれいだねぇ、」

柏田は、女性なら誰に対しても、イケイケドンドンだ。ここのママには、ゾッコンのようだが、分が悪い。なんせ、あのマスターの奥さんだ。

「ありがとう、、、ま・た・ね」

そう言って、柏田の方を見つめ、左目で小さくウィンクをしながら、カウンターの方に下がっていった。

ん?なんだ。今の最後のは?

「柏田?なんだ?えっ?もしかして?」

柏田は、手をばたつかせ、口の前でバツをつくり、チラチラとマスターの方を見ている。

「おいおい、、柏田くん、お前ってヤツは、、」

今の行動で、全てがわかった気がした。コイツは、そうゆうヤツだ。もしかしたら、前の会社の件も本当だったのかもしれない。美魔女好き、いや、年上、人妻か。まぁ女性なら手当たり次第に行くんだろう。少し羨ましい気持ちもする。

「フー」

ママとマスターを見て、少し息を吐き、一気に、ビールを流し込み、柏田に話を振った。


「ところで、話しがあるんだろ?もしかして、、、なのか?」

「ちっ違う、違う それじゃねえーよ」

「そっかぁ、へー」

ママの方をチラッと見て、柏田の反応を探り、ここぞとばかりに、攻めこんでみた。頬が、いつもよりゆるんでいる気がする。

眉間には、皺はよっていない。

柏田とは、まだ、知り合って1年半ぐらいだが、なんとなくわかった気がした。何気にからかいがいがあるヤツなんだと。そう思うとちょっと嬉しくなり、また頬が緩んだ。。

「で、話しって、あるんだろ?」

焦りを隠せないでいる柏田に、続けざま質問すると、柏田は、ビールを一気に飲み干し、真剣な眼差しで話し始めた。

「お前さぁ、、、あずみのこと、好きだろ?」

「えっ!?」

いきなりのことで、口に含んだビールを吹き出してしまった。

「ごめん、ごめん、なんだよ、いきなり。」

確かに、あずみは、綺麗で可愛い。なんていうか、一目惚れに近い印象だった。

柏田は、僕の顔を見て確信を持ったように話を続けた。

「あずみって、スゲー良い女だよな。スタイルも良いし、可愛いし、おまけに、性格もいいときたもんだ。天は二物を与えずっていうがなぁ、、、、まぁ残念なことに、結婚してるんだよな、

結婚してなきゃ、アタックしてるとこだよ、なぁ?」

ビールをテーブルに置き、顔を除きこむように、威圧的に、聞いてきた。僕は、

うん うんと、声には出さないが、頭を立てに何回も振り、話しに耳を傾けている。

「そんなあずみがさ、、、、離婚するみたいなんだよ」

「えっ!!!!」

自分でもあり得ないような、声をだし、手に持っていたビールを勢いよく落とした。ジョッキが割れる音で、ガヤガヤとうるさかった店内が一瞬にして、静けさを打つ

「すいません、なんでもありません。

すいません。あっ、ママ、ビール2つお願いします」

こぼれたビールをダスターで拭き取り、

改めて、ビールを一口飲み、一呼吸置いて、話をきいた。

「なんか、旦那とうまくいってないらしい、それに浮気されまくってるっていう話なんだぜ」

「えっ!?まじで?」

「噂だけどな、」

上手く頭が、処理しきれていない。あのあずみが離婚?あんな良い女性が?

僕の頭は、アルコールのせいか、いつもより、ぐちゃぐちゃになっていた。

「それでよ、あずみは、もしかしてお前に気があるのかもよ?お前には、スゲーフレンドリーに接してくんじゃん?」

「えっ!?それは、単に話し易いだけじゃないか?もしくは、兄ちゃん

的な感じでさ、、、」

「そうかぁ?まぁそう思うならそれでもいいけど、、お前に、その、なんつーか、その気があるならアタックしてみー」

そうゆうと、柏田は席を立ち勘定を済ませて先に店をでた。残された僕は、動けず、それから、30分ぐらいしてから、店を出た。

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