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ケモミミは最強だと思うんだ

「ユート様、いい加減に機嫌を直してくださいませんか?」

あの後、俺は、リサを部屋から追い出して、本気で泣きながら部屋を掃除した。それが終わると、リサを寝室に呼び戻し、今に至る。普段はあまり怒らない俺だが、今回ばかりは違った。さすがに、ちょっとくらいは怒ってもいいと思うんだよね?

 ここは、奴が譲歩してくるまではひたすら無視だ。ここで引き下がったら、今後はリサが魔王並の権力を振るうことになる気がする。それに、ここで引いたら、男としてちょっと、いや、かなり情けない。あんな屈辱を受けたんだ、ここはビシッと反撃するべきだろう。俺は、椅子に座ったまま、目の前で立っているリサから、ひたすらに顔を背け続ける。

 そんな俺の態度に業を煮やしたのか、数分後、ついにリサの方から負けを認めた。

「分かりました。今回はわたくしもやりすぎたと思っています」

 溜息交じりに、そう言った。だが、俺が聞きたかったのは、そんな言葉じゃない。

「あっそ。でもさ、言葉だけなら何とでも言えるよね? 誠意ってものを見せてもらわないとねぇ? 分かる? せ・い・い」

 俺は、出来るだけ機嫌の悪そうな声を出すようにしながら、エロ漫画の出てくるゲスいおっさんが言いそうな、安っぽい台詞を吐く。

「はぁ?」

 リサは、そんな俺の言葉の意味を図りかねたのか、首を傾げている。全く、この程度のことを察せないようでは、まだまだ、だ。

「誠意で、御座いますか? 具体的には、何をして差し上げればよろしいのですか?」

「さあ、な。それぐらい自分で考えたらどうだ?」

 俺は、そんなリサに対して、あくまで突き放すような言い方をする。たぶん、意外と冊子の悪いリサのことだから、そろそろあのセリフを言うだろう。

「あ、でもさ、俺の好きな食べ物を作ってくれる、とかそういう子供騙しみたいなのは、なしだからな?」

 俺は、追い打ちを掛けるために、さらにそんなことを言う。

「全く、いつになく回りくどい言い方をなさいますね」

 俺の態度に、ついに業を煮やしたのか、リサが、ついに降参の言葉を口にした。

「分かりました。降参で御座います。何にでも従いますから、ユート様の希望をおっしゃってみて下さい」

 キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

 そのセリフを聞いた瞬間、俺は内心でガッポーズをきめていた。そう、そのセリフを聞きたかったんだよ。ああ、なんて素晴らしい響きだ。何でも言って下さい! ああ、それは闇堕ちへのフラグ。性奴隷への切符。わざわざ回りくどいことをした甲斐があったってもんだ。

 そうだよ、あんなことを俺に対してしたんだ。エロ漫画とかだったら、当然こういう展開になってしかるべきだろう。嗚呼、締め切られた薄暗い部屋の中に響く嬌声と水音! エクセレント! と、言うことで早速、取り掛かるか。

「は? こんなことも考え付かないとか、メイド失格だな、リサは」

 俺は、内心とは裏腹に、心底がっかりしたような声で言う。

「申し訳御座いません」

 あ、やべ。リサの奴、ちょっと怒ってる。調子に乗りすぎた。

「ま、まぁいいさ。人間、分からないことぐらいはあるもんだ」

 フォローしとかないと、あとが怖いからな。

「それよりも、俺の願い、それは!」

 そこで、俺は一拍置いて、深く息を吸い込むと、言った。

「リサの処女ま……」

「全力でお断りいたします」

 今日一番の笑顔で否定された! なぜだ!さっき何でもいいって言っただろ! それなのに!

 てか、リサちゃん、痛い! 笑顔でアイアンクローしてこないで! めり込むから。指が頭蓋骨に!

「確かにそのように言いましたけど、そのような性的なお願いをしてもいい、とは一言も言っていませんよ、ユート様?」

「痛い! 痛いから、リサ! なんでモノローグで会話が成立してるの!? とかいう不思議現象に突っ込めないくらいに痛いから!」

「あら、そんなことをのたまえるなんて、まだまだ余裕そうで御座いますね。それと、モノローグで会話、は単にユート様の表情から心中をお察し申し上げただけですよ?」

 そう言いながら、リサはますます手の力を強くしてくる。もう、だめだ。なんか、綺麗なお星さまが見えるよ。

「ふう。全く。今回ばかりは、わたくしの非もありますし、今度はそういう方向以外で何かおっしゃって下さい。可能な限り、実現して差し上げますから」

 リサは俺が意識をしなう寸前に、手を放した。俺は、その瞬間に、脱力して、椅子の背もたれに身体を預けきっていた。信じられない威力だよ、ったく。ほんの数秒の間だったのに、まだ頭がズキズキする。

 だがしかし! リサの言質はとった。ならば、やってもらおうじゃないか! 俺の希望することを!  俺が望むのは、

 猫耳メイドだ!

 そんなの面白くない? ふ、甘いな。いいか、良く考えてもみたまえ。普段はドSで鬼畜で、血も涙もないリサが、露出度高めのメイド服に身を包んで、しかも頭には猫耳を装備。普段のあいつなら着ないようなちょっとエッチい服に赤面して、恥じらうリサ。そして! 猫のポーズをしながら、上目使いで「にゃぁ」とか弱々しく鳴いちゃったりなんかしたらもう、俺はそれだけで昇天できるね。マジで!

 どうだ、最高だろう!

「あの、ユート様? 盛り上がっているところ申し訳ありませんが、先ほどから一体誰に向かって妄想をぶちまけていらっしゃるのですか?」

 俺のそのただならぬ雰囲気が気になったのか、珍しく、ちょっと怯えを含んだ声で言った。

「んー、強いて言うなら、Z軸を持つ人たち?」

 そんな間抜けなことを言いながらも、俺は、改めてリサの身体を舐めるようにして見ていた。

 適度な肉付きの太腿。腰からくびれにかけての、しなやかなライン。決して巨乳というほどではないが、形のいい胸。く、全てが、俺の理想通りだ。これを、今から好きに弄れると思うと、口からよだれが垂れてきそうになるな。

 さておき、早速希望を叶えなければ。

 俺は、リサに向き直ると、真面目な顔を作って、神妙な様子で咳払いを一つする。リサの方も、俺のその様子に気圧されたのか、生唾を飲んで俺の言葉を待っている。俺は、満を持して、口を開いた。

「今日一日、従順な(ここ重要)俺の猫耳メイドとして過ごせ!」

「は?」

 俺が言い終えるのと同時に、リサの目が今日何度目かの、ゴミを見るようなものに変わる。だが、しかし、これぐらいは予想の範疇だ。ここからが、腕の見せ所って物ですよ。

「おいおい、何をそんな目をしてるんだよ? いいか、本来メイドってのは、献身的にご主人様の身の回りの世話をするために存在してるんだぞ? なのに、お前と来たら事あるごとに俺を弄り倒して。今回のことだって、お前のその態度と悪乗りの産物だろう? まぁ、俺も悪かったところはあるよ? でもな、やっぱりそういう態度をとり続けてるのは良くないと思うんだ。そこで、今日一日は従順とはいかないまでも、真面目にメイドとして過ごしてもらおうっいう、いわば教育的指導としてこれを提案してるんだぞ?」

 決まった。どうだ? 正論っぽく聞こえるだろう? まぁ、そもそもメイドが主人に尽くすものだ、なんて前提条件、存在しないんだけども。

「確かに、そうで御座いますね」

 俺は、心の中で勝利の雄叫びを上げていた。もうちょっと反論してくるかと思ったけど、意外とあっさり受け入れてくれた。

「ですが、なぜ猫耳のコスプレなどしなければならないのですか?」

 それでもまだ納得できないのか、リサは何とか食い下がってこようとする。

「ん? それは、あれだ。罰ゲーム的な奴だよ。ほら、普通にやっても面白くないからな。それに、今回は俺にこのぐらいの得があってもいいと思うんだよね? 割とマジで」

 俺の言葉を聞いて、リサは考えているのか、俯いて眉間に皺をよせている。ほら、どうした。さっさと「うん」と言うんだ。

 しばらくして、リサは顔を上げると、不承不承と言った感じで、ついに折れた。

「分かりました。今回だけは、わたくしの責任も大きいですし、そのくらいのことには従いましょう」

 キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

 俺は、今日何度目かの雄叫びを心の中で上げていた。よし、言ったな? ヤるって? もう取り消しとかはできないからな?

「それで、わたくしはどのような服を着ればよいのですか?」

 リサが、仕方ないと言った様子で、俺に問いかけてくる。

「ん? ああ、それはな、これだ!」

 俺はあらかじめ紙袋に入れて用意してあった服を、リサに見せつけるようにして取り出した。

「駛!」

「っぶね!」

 その瞬間に、予想通りリサのパンチが飛んできた。でも、それは織り込み済みだ。俺は珍しくリサの攻撃を躱すと、改めてリサに服を見せつける。

「ユート様、その服は一体何で御座いますか?」

 リサは、そんな俺を、顔を真っ赤にして睨み付けてくるが、今回に限っては、それもただ可愛いばかりだ。

「ん? 何って、今日一日、リサが着て過ごす服だろ?」

 半ばパニックに陥っているリサに、俺はその服をさらに近づけていく。

「そ、そんな、露出の多い物、着られる訳ない出羽ないですか!」

 リサの指摘に、俺は思わず邪悪な笑みを浮かべてしまう。

リサの言うとおり、俺の用意した服はかなり過激な物だった。下は、太腿のほとんどが見えてしまっているような、超ミニのスカート。上は上で、もはや水着とかスポーツブラとか言った方が良いような布面積なのだ。そして、当然猫耳と、見せる用の縞パンのおまけつきだ! ああ、パンチラのことまで考えて見せパンまで用意してあげるなんて、自分で言うのもなんだが、とっても優しいご主人様じゃないか! 

 俺は、そのメイド服を、リサに向かってさらに近づけていく。リサは、完全にパニックになっているのか、なぜか立ったまま顔だけを動かして逃げようとする。しかも、小さな声で、いや! とか言っちゃって。もう最高! なんだこれ! なんでこいつ、着る前からこんなに破壊力あるんだよ! おかしいだろ! リサだぞ! あの暴力的なメイドが、こんなになるなんて! クッソ、もっと早くに気づくべきだった!

 っと、いかんいかん。あんまりふざけていて本文を見失っている場合じゃあ無いな。きっと、今までの経験からして、ここでもたもたしてると、リサの逆襲にあって失敗するパターンsだろうからな。名残惜しいけど、ここはさっさと切り上げて次に進まなくては。

 そう決意すると、俺は机の上に置いてあったベルを鳴らした。ふふふ。いつもは一人でやって失敗するパターンだからな。今回は助っ人を呼ばせてもらおうじゃないか。早くも、リサがこっちの隙を伺い始めていることだしな。このままだと絶対俺があの服を着せられて終わる、とか言う落ちだろう。だがしかし! 今回はそうはいかない。何しろ、今呼んだのは最強の助っ人だからな。

 ほどなくして、俺の部屋のドアが開いた。そして、そこから一人の少女が入って来た。彼女の名前は、アヤメ・シラヌイ。彼女も、俺の奴隷だ。年齢は、リサより二つ上で、この国では割と珍しい東洋系の人間で、黒髪と黒い瞳をしている。身体の方は、なんか分からんが、ナイスタイマニンとか言いたくなるような感じだ。あと、全体的な印象としては、女戦士みたいで、性格もかなりの武人だし、実際問題けっこうな腕前の軍人なのだが、かなり意外なことに、アヤメは可愛いものに弱い。というか、テディベアが極度に好きなのだ。何度かアヤメの部屋に入ったことがあるが、武器や防具が並べられているところに混じって、可愛らしい熊のぬいぐるみが並べられている様は、かなりシュールだった。しかも、本人はそのシュールさというか、ミスマッチさを結構気にしているらしく、前に一度それを指摘したら、三日くらいずっと落ち込んでいた。

 アヤメは、今まで運動をしていたのか、運動用の服に身を包み、ロングの黒髪をポニーテールにして、首からはタオルを下げていて、健康的に日焼けしたその肌は、軽く汗ばんでいた。

服のお腹の辺りに縫い付けられた可愛らしい熊がこっちを見てるのは、たぶん突っ込んだらいけないと思う。アヤメが傷つくから。

 アヤメは、部屋のなかを一通り見回すと、何か納得した様子で口を開いた。

「それで、今日はグリシャ殿にどんなセクハラをしたんだ? ユート殿は?」

 どうやら、アヤメはいつものごとく、俺がリサに何かした、と考えたようだ。いや、確かに客観的に見れば、今の俺はエッチい服を持ってリサにすり寄ってる変態だけども、今回は違うんだってば。仕方がないので、俺はアヤメの方に向き直ると、事の経緯をアヤメに説明していく。

「なるほど。で、ユート殿は一体、私に何をして欲しいのだ?」

 ひとしきり話し終えると、納得した、というように俺に聞いてきた。何をするかって、そんなの決まってるだろう?

「ああ、アヤメには、リサを押さえててもらおうと思ってな」

 俺の分析によれば、今までの原因はリサの手足が自由に使えたことにあるのだ! 即ち、リサの手足さえ封じてしまえば、こっちの物だ。

 つまり、今回はアヤメにリサを押さえていてもらって、その間に俺がリサの服を着替えさせる、と言う訳だ。別に、やましい気持ちなんて、これっぽっちもないからな? でも、残念ながら、今回の衣装だと、一回リサを全裸にしないとダメだろうなぁ。もしかしたら、その時にいろいろ見えちゃったり触っちゃったりするかもしれないけど、まぁしょうがないよね。不可抗力的なやつですよ。ぐふふ……

「ふむ。まぁ、私としては一向に構わないのだが、いいのか? リサ殿は? その衣装だと、一度全裸になることになるぞ?」

 だが、リサのことを心配しているのか、アヤメが、俺が今までリサの気づかれないように頑張って話を逸らしていたことを、のたまってしまう。っち、余計なことを。でも、今更そんなことを言ったところで、大丈夫だろう。今のリサは相当パニクッているから、このぐらいのことを聞かれても問題ないだろう。たぶん、正気に戻るどころか、もっと恥ずかしがるんじゃないか?

「あの、アヤメ様?」

 だが、俺のそんな甘い考えはすぐに打ち砕かれることになる。いつの間に正気を取り戻したのか、背後に居るリサが完全に冷え切った声で、アヤメの名前を呼んだ。これは、マズい。早くしなければ。

俺は、急いでアヤメに命令を出そうとする。だが、そんな俺の前で、アヤメがまるで騎士が主君にするかのように、片膝を付いて、忠誠を誓うようなポーズをとってしまう。

あまりの出来事に、俺は半ば反射的にリサの方を振り向いてしまう。すると、その手には、一体どこから取り出したのか、一体のテディベアが握られていた。

「お、おい! 何やってんだよ! 早くリサを押さえろって!」

 焦った俺は、いつになく激しい口調でアヤメに命令を下す。だが、それに対して、アヤメは悔しそうな顔をすると、言った。

「くっ! すまないユート殿! あれには、あの可愛らしい存在にだけは、逆らえないのだ」

 まさかの展開すぎて、俺は開いた口が塞がらなかった。

「さあ、リサ殿何なりとご命令を!」

 もはや、アヤメはリサの傀儡と成り果てていた。っち、仕方ない。ここは俺だけでなんとかせねば!

 俺は、覚悟を決めると、リサに向かって飛び掛ろうとする。だが、それよりも、リサが命令を口にする方が早かった。

「では、ユート様に、ご自身の持っている衣装を着せて差し上げて下さい!」

「承知した!」

 リサの命令を聞くや否や、アヤメが鬼神のような勢いで、こちらに迫って来る。思わず、俺は顔の前で腕を十字に組んでガードする。これは、マズい。二人がかり、それもリサとアヤメとか、勝てる訳がない。ここは、さっさと逃げるが吉。何とか最初の一撃を凌いだら、即撤退だ。

「逃がすとお思いですか?」

 しかし、いつの間に回り込んだのか、後ろからリサが俺の両脇に腕を入れて、俺のことをガッチリとホールドする。

 あ、オワタ。

 でも、これ、リサのおっぱいが背中に当たって気持ちいい。

とか、俺が現実逃避をしている数瞬の間に、俺はアヤメに捉えられ、命令を実行されていた。

 

 今回の結論。男のメイド服(それも際どいの)とか誰も見たくないと思うんだ? でも、おっぱい気持ちよかったし、まぁいいか?

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