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YESロリータ! NOタッチ!

 朝、俺は、下腹部の辺りに違和感を感じて目を開けた。すると、

「あ、起きた。て、そりゃそうか」

 なんか、リサとは違う悪魔的笑顔を浮かべたラルムがいた。しかも、その右足が俺の3本目の足を、つまりは男の子の股間に生えてる大事なものをフミフミしてた。

「えーっと??」

 あまりの意味の分からなさに、リアルに開いた口が塞がらなくなった。なんで、俺はこんな事になってるの? 確か、昨日は、リサがラルムと話してるのを盗み聞きした後、仲良くなったリサとラルムのところに行って……行ってどうしたんだっけ? なんかあった様な気がするけど、思い出せないぞ? あれかな、ラルムにセクハラして、またリサに殴られたのかな? いいや。思い出すの怖いから、とりあえずは置いとこう。

 そんなことより、なんでこんな事になってるの? 

「うーん。やっぱさ、なんやかんや言っても、ユートも男じゃん。あたしに踏まれてこんな事になって。てかさ、ユートってMなの?」

 あ、ダメ! 言葉に合わせてそんなこしたらイヤなの。というか、10歳の女の子がそんなことしちゃいけません!

「いや、Mなの? じゃなくて、取りあえず、退こうか? 俺はMじゃないし、10歳の女の子にそんなことされて喜ぶような変態さんでもないからね?」

「その割には顔が嬉しそうだけど?」

 ちょ、手鏡とか出すなよ! こんな事されてる時の自分の顔とか観たくないんだよ! え? つか、それ、俺の顔? マジで? なんか、絶対に人に見せられない顔してるんだけど?

「うーわ、キモッ! もっとおっきくなった! キモ、キモッ、キモッ!」

 あ、なんか出る……

「御二人とも、いい加減にして下さいませ」

「イッタ!」

「ゲッフ!」

 俺が、あと少しで天国にイけそうになったところで、いきなり現れたリサに、骨も砕けよとばかりに、渾身の蹴りを叩き込まれた。ラルムはラルムで、後頭部を殴られていた。

「ちょ、リサ、おま、いつからそこに」

 俺は、シクシクと痛む肺を抱えながら、リサの顔を見上げる。

「ユート様が手鏡に映った御自分の御顔を、嬉しそうに眺めていらっしゃるあたりから、で御座いますが?」

 なんか、いつも通りにすまし顔なのが、とてつもなく怖かった。

「ちぇ、もうちょっとだったのに。リサの姉さんも、もうちょっと空気読めよー」

「あ、ばか!」

 ヒクヒクって、おでこの辺りで血管が動くのが見えました。

「御二人とも、少し、よろしいですか?」


 それから数時間後、俺は、街に向かう馬車の御者台に居た。今日は、罰という意味も含めて、俺が御者だった。

「いいですか、ラルム様、女の子が、それもまだ10歳少々の子どもが、あのような事をなさるものではありませんよ?」

「あーもう、分かったから! いい加減にやめろよ!」

 馬車の中では、未だにラルムがリサからの説教を食らっていた。俺も、説教という名の拳や蹴りを体中に受けていて、もはやそっちに構うような気力もなかった。馬車の隅っこの方では、アヤメが居心地悪そうに小さくなっていたけど、そっちに構ってやるような気にもなれなかった。

 俺たちは今、屋敷から街に向かっていた。理由は、ラルムの家具を受け取る為。本棚とか、タンスとか、大物がけっこうあるから、総出で出撃だった。

「大体、なぜあのようなことをしたのですか」

 リサが、お説教の続きをしている。本当によく飽きないよな。こんだけずっとやってて。でも、ここからはラルムの言い訳タイムだった。今まではリサに一方的に怒られたけど、ここからはラルムのターンだった。てか、俺にも言い訳タイムを下さい。毎回毎回思うんだけど、一方的にボコるのはお説教してるとか、主人を諌めてるとか言わないと思う。

「え? だって、リサの姉さん、ユートのこといらないみたいだったから、それならあたしがもらっちゃおうかなって……モゴッ」

 そんなラルムの言葉は、途中で遮られてしまった。リサに口を押えられて、バタバタと暴れている。てか、何、今の? もらうって、あれか? 恋愛的な意味でか? で、リサがいらないって、そういうことなのか? 全く、それならそうと言ってくれればいいのに。こっちはいつでも受け入れ準備オッケイなんだぞ?

「て、言うのは冗談です」

 リサさん、怖いからこっち睨まないで下さい。まぁいいや。どうせ、ラルムの冗談かなんかだろ。よしんば本当だったとしても、怖いからこの話題終わり。

「な、なぁ、ラルム……」

 そこで、説教の時間が終ったことを察したアヤメが、ラルムに声を掛ける。どうやら、ずっとラルムと遊びたかったらしい。

「今度は、私と話さないか? ほ、ほら、お菓子もあるぞ?」

 そう言いながら、ポケットからいくつかお菓子を取り出して、ラルムに見せる。だが、ラルムはリサの手から逃れると、言った。

「えー。やだよ」

「ガーン!」

 アヤメが、固まってしまった。

「だって、アヤメのねぇちゃん、なんかがっついてるもん。綺麗なおべべ着せてお化粧して、あら可愛い、みたいな? なんか、孫を可愛がり過ぎて面倒な事になてるババアみたいな? かかわるとメンドクサイかんじがするもの」

 そう言いながら、固まってるアヤメの手からお菓子をもぎ取っていく。そして、リサの膝の上に座って、お菓子の包みを開き始める。なんか、意味は良く分からないけど、愛情が暑苦しすぎてうざい、みたいな感じなのかな?

「あと、そのラルムってのやめない? なんか、照れくさい」

 お菓子をモグモグやりながら、ラルムがそんなことを言う。まぁ、確かに、ラルムだもんな。ラルムの親が、どんな意味を込めてつけたのかは知らないが、身内以外から呼ばれるのはちょっと恥ずかしいかもしれない。

「じゃ、じゃぁ、ティアというのはどうだろうか?」

 あ、復活した。

「意味同じじゃん」

 ペシッと、アヤメの額に、丸められたお菓子の包みがヒットした。中指と親指だけを使って、綺麗にど真ん中を撃ち抜かれていた。あれは、多分、肉体じゃなくて精神の方にクリティカルヒットしたな。も一度固まっちゃったし。

「いい名前だと思いますが、そんなに嫌なので御座いますか?」

 リサが、膝の上に座ったラルムの髪を撫でながら、言う。

「だから、恥ずかしいからいやだって、言ってるじゃん」

 その手を、ペシッと払いのけながら、ラルムが言う。

「そうですか。でしたら、ストラ、というのはどうでしょう?」

「うーん、いい線行ってるけど、微妙だから却下」

「そうですか」

 なんか、アヤメの時とは全然違う。どんだけリサになついてるんだよ。

「でしたら、ユート様はどうで御座いますか?」

「おれ?」

 急に話を振られて、少し戸惑う。勿論、今までの話は全部聞いてたけど、こっちに話が降られるとは思ってなかった。それに、

「俺なんかより、リサが付けたほうがいいんじゃねぇの? ラルムも、リサに一番なついてるわけだし」

「いえ、わたくしの案もアヤメ様の案も却下されてしまったわけで御座いますから。それに、ラルム様も、ユート様につけていただけるなら、文句はないのでは御座いませんか?」

 いや、そんなことないだろ。俺はいやだぞ? 精神に向かってゴミを投げつけられるの。

「んー、別に、あたしはそれでもいいけど?」

 あれ、いいんだ。ってもな。どうするか。

 おれは、暫く考えてから、おもむろに口を開いた。

「じゃあ、朝の行動から考えて、ラルムの愛称は、デビルロリっ娘で!」

「ばーか」

 ビシッと、後頭部になんかが当たった。多分、お菓子の包み紙。なんだろう、面と向かってなんかひどいこと言われたわけでもないのに、何故か、心が痛かった。

「ユート様?」

 わかったよ。真面目にやるからリサまで俺のことを睨み付けるんじゃない。今いじめられたら、心が折れる。

「いや、冗談だって。んじゃ、ルフってのは?」

 俺は、ラルムが投げつけたゴミを拾いながら、言った。

「んーいい感じだけど、どういう意味?」

「え、意味なんかないよ。適当に名前と苗字から一文字ずつ引っ張ってきただけ」

「なんだよ、それ」

 一瞬、また何かが飛んで来るかもしれないと思ったが、そうはならなかった。

「まあいいや。一番ましだから、それでいいや」

 どうやら、気に入ったらしかった。それっきり何も言わず、お菓子を食べる作業に戻ってしまった。リサも、今度は何も言わず、ルフの頭を撫でる作業に戻ってしまった。

 本当に、あんな適当なのでよかったんかな?


「おーい、着いたぞ? 起きろアヤメ! お前がいないと重い物運べないだろうが!」

 それからしばらくして、俺たちは目的の店の前に着いた。俺は、あれからずっと固まっていたアヤメに呼びかける。

 ルフの家具については、数日前に連絡したら、その日のうちに、指物師の夫婦が喜んで作ってくれた。でも、その時に、できれば本人に会いたいと言われたから、取りに来るのが今日になってしまった。

「は! そうだ! ラルムの名前!」

 俺はボケているアヤメを無視して、馬車を降りて店の中に呼びかける。すると、中から一人のおばさんが出てきた。

「これはこれは、領主様。よくいらっしゃいました。それで、例の女の子は、一緒に来て下さったんですか?」

 いきなりそれかよ!

「え、ああ。それならあそこに」

 と言う代わりに、俺は馬車を降りようとしているリサとルフの方を指さす。一応、今回は依頼する立場なわけだし。

 すると、それを見たおばさんは、ルフの方に駆け寄って行った。

「あらあら。まあまあ! これはまたずいぶんと可愛らしい娘だね! ちょっと、そこの変態になんかされなかったかい? それで、名前はなんて言うんだい?」

 おい、自分のとこの領主を変態扱いするなよ! と言いたかったが、俺は、その言葉が完全に引っ込んでしまうような光景を目にする。

 今までは、割と傍若無人ぎみに振舞っていたルフが、おばさんに話しかけられた瞬間に、しおらしい顔になったかと思うと、そのまま、リサの背中に隠れてしまう。そして、顔だけを出すと、

「ラルム……ルフって、呼んで……」

 なんだこれ! 超可愛い! 何この内弁慶! 何このギャップ! さっきまであんな風に振舞ってたのが、急にこんな風になっちゃって! ヤバい、なんか、こう、舐め回したい! あ、でも、多分、今こいつに触ったら、この状態は終わっちゃうのか!? あーもう、もどかしい。

 俺の周りでは、リサとアヤメが、似たような顔をして突っ立っていた。おばさんに至っては、

「ちょっと、お父さん! そと! そと来なって!」

 なんて言いながら大興奮してる。何となく、ルフがアヤメに言ったことの意味が分かった気がした。


「よーし、行くぞ! せーの!」

 俺は、反対側を持つアヤメに声を掛けると、腰と腕に力を込める。すると、二人で抱えている箪笥が、ゆっくりと持ち上がる。

 あの後、暫くして騒ぎが収まってからは、荷物運びだった。リサとルフは小物を、俺とアヤメで大物を、それぞれ馬車に運び入れていく。ちなみに、指物師のおばさんとおじさんは一切手伝ってくれなかった。いやー、あたしらは腰がねぇ。じゃないっての。少しは手伝ってくれても良いだろ? 今だって、作業を終えたルフと遊んでるし。

 カニみたいに、横にニジニジと動きながら、俺はそんなことを考える。反対側では、アヤメがうずうずしてることだろう。早く作業を終わらせて、あっちに加わりたいみたいだ。

「おーし、置くぞ? せぇーの」

 俺は、落としたりどこかにぶつけたりしないように、慎重に運び込んだ箪笥を、馬車の中に置く。すると、そのとたんに、アヤメが馬車から飛び出していく。どうやら、相当待ち遠しかったようだ。まぁ、内弁慶全開の今なら、さっきみたいなことにはならないだろう。

 俺はそれを横目に、馬車の荷台に腰かけているリサに話しかける。

「この後は、ルフの小物を買いに行くんだっけ?」

「はい、そうで御座います」

 リサが、ルフから俺に目を向ける。

「ふーん。あっそ。じゃあさ、俺、ちょっとばかし散歩してくるわ。買い物終わったら、そのまま屋敷に帰っちゃって」

「散歩で御座いますか? 宜しければ、わたくしもご一緒いたしますが?」

「あーうん。リサと二人で散歩は、すっごく嬉しいんだけど、リサはルフの面倒を見てやってくれないかな? それに、ほら、あれだよ、一人で行きたいんだよ? 分かるだろ? 男の子の必需品。朝、ルフに変なことされたら、ねぇ?」

「はぁ。そうで御座いますか。分かりました。ここはユート様の変態的なお望みをかなえるために、引き下がります」

 溜息ついて、ゴミを見るような目で言うなよ。傷つくだろ。

「おう、そういうことだ。もしアレなら、リサがはけ口になってくれてもいいぞ?」

「いえ、遠慮しておきます。ユート様の変態的な御趣味に付き合っていたら、身が持ちませんので」

「あっそ。まぁ、いいや。そういうことだから、行ってくるわ」

「はい。お気をつけて……」

 そこで、リサが言葉を飲み込むようにして言いよどんだ。

「ん? どうしたんだよ? 言いたいことがあるならはっきり言えよ?」

「いえ、御気を付けていってらっしゃいませ。もし、危ないことがあったら、すぐに引き返して下さいませ」

「はいはい」

 俺は、リサに背を向けると、その場を後にする。全く、エロ本買いに行くだけで、危ないことなんか、ないっての。

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