奴隷って何となくエロく聞こえるよね?
プロットに出来るだけ忠実に書く練習兼ラノベ風の一人称文章の練習andギャグの練習。
文庫本1冊分に纏める予定ですが、ここに全文投稿するかは未定。
1話 奴隷って何となくエロく聞こえるよね?
奴隷とは、一般的に他の人々とは区別され、主に主人の身の回りの世話や危険な労働、人の忌避する仕事に従事させられている人たちのことだ。
その歴史は古く、少なくとも俺は、いつこの制度が始まったかは知らない。だが、直接民主制を採用したことで有名な古代アテナイでは、すでに彼らが存在し、奴隷が労働の一部を担っていたおかげで、彼らは政治に労力を注ぐことができたという。
この時代でも、それは変わらない。彼らは人でないとされ、重労働に従事し、場合によっては、意味もなく殺されたりもする。
法律的にも、彼らは所有の客体、つまりは万年筆とか帽子みたいな、物として扱われている。そして、物である以上はどう処分しようとも自由と言う訳だ。
だから、彼らは今日もどこかで苦役に従事させられている。
だが、ここでいったん立ち止まって考えてみて欲しい。本当に、それでいいのだろうか? 奴隷に対して、そんな扱いをしていてもいいのだろうか?
いや、断じてよくない!
考えても見てくれ。法律はかれらに対して自由な処分行為を許している!
つまり、それは……
奴隷に対してはエロイことし放題ということである!
そう、つまりは奴隷に対しては合法的にエロイことし放題なのだ。それを、重労働なんかやらせるなんてもったいない!
想像してほしい! 今君の前には君の好みど真ん中、どストライクの女の子が居る。彼女は、今日君のところに新たにやってきた奴隷だ。
だが、彼女は君に対して敵対心をむき出しにしている。食い殺さんばかりの目つきで君のことを睨み付けているのだ。
そんな彼女に対して、君は早速、調教に取り掛かるのだ。泣き叫び、激しく抵抗する彼女の手足を縛り付け、服を破り、君の○○○で彼女の処女を奪うのだ!
それから毎日毎日、君は彼女を調教し続ける。
初めのうちこそ、君のことを殺してやると息巻いていた彼女だが、調教によって理性が溶けて行くのと一緒にそれも解けていく。
最後には、彼女は君の○○○が欲しいと、すっかり蕩けきった顔と猫なで声で媚びを売ってくるようになる!
どこが、とは言わないが、想像しただけでたぎって来るじゃないか!
ビバ奴隷!
ビバ牝奴隷!
ビバ肉○器!
ビバ奴隷ハーレム!
「ご主人様? 朝からとんでもない寝言を口走っていないで、そろそろ起きてください?」
と、そこで俺の耳に小鳥がさえずるような柔らかい声が飛び込んできた。その声に従って、俺の意識はゆっくりと覚醒していく。
目を開けると、そこは見慣れた自分の部屋だった。辺りには寝起きの神経を優しく刺激する紅茶の香りと、誰かが動き回る衣擦れの音が満ちていた。
俺は、身体を包み込んでいるフカフカのベッドに手を付いて、ゆっくりと体を起こした。すると、こちらに背を向けて、何事かをしている少女の姿が目に飛び込んできた。
彼女は、程よく発達した身体をメイド服に包み、ホテルなんかでよく使われている料理を吐く部ための台車の上で、今まさにカップにお茶を注ごうとしていた。
細くしなやかな指でティーポットを持ち上げると、ゆっくりと、丁寧にカップへとお茶を注いでゆく。ポットから飛び出した黄金色のお茶が、窓から差し込んでくる朝日を受けて空中でキラキラと輝き、カップへと吸い込まれている。
俺は、そこから目を離すと、彼女の髪へと目を移した。肩のあたりで切りそろえられた銀髪が、朝日を反射してお茶と同じかそれ以上に、キラキラと輝いていた。
それは、彼女の纏う楚々とした雰囲気を相まって、後姿からでも彼女の美しさを想像させるのに十分なものだった。
彼女の動きに変わったところはない。どうやら、さっきの寝言はほとんど彼女には聞かれなかったようだ。それを確認すると、俺は胸をなでおろした。
彼女の名前はグリシャ・テンペスト。俺は呼びにくいから、リサ、と呼んでいる。グリシャを縮めてリシャ、それが訛ってリサ、と言う訳だ。
彼女は、俺のメイド、即ち奴隷だ。そう奴隷! つまりは、朝の着替えから夜のご奉仕までをこなす俺の従順なオンナ。ああ、素晴らしきかな。
この国、バラド連邦王国では、奴隷制がとられている。彼、彼女らは、人とは違ったものとして取引され、使役されている。たいていの場合、奴隷たちは、粗末な服に粗末な食事を与えられて使い潰されるのが落ちだ。
だが、俺はそんなことはしない。なぜなら。
そう、なぜなら、こんなかわいい娘を酷使するなんてもったいないからだ!
少し頭を使えばすぐに結論は出る。奴隷ということは、主人は彼女に何をしてもいいということだ。
つまり! リサみたいな娘に対してエロいことし放題と言う訳だ! 大事なことなのでもう一度言う。エロいことし放題なのだ! そしてエロイことされまくった彼女らは、徐々にエロい娘になってゆくだ! 即ち! エロい娘とシ放題なのだ!
本当に、リサのアヘ顔とか、想像しただけで……
「ユート様、紅茶がはいりました。どうぞお召し上がり下さい」
そんなことを考えていると、どうやら紅茶ができたらしく、まるで百合の花のようにたおやかな笑顔を浮かべたリサが、俺ことユート・ジェンティーレに向かってカップを差し出す。
「ふむ。すまないがリサ、飲ませてくれないかな?」
俺は、そんなリサに向かって、ちょっとした命令を出す。別に、自分で飲んでもいいのだが、ここはやはり、リサに飲ませてもらおう。
そんでもって、そのままベットに引きずり込んでやるんだ!
(以下妄想)
「あっ! ユート様、そんな、朝からこんなこと、いけませんわ!」
「ふっ。何を言っているんだ? 身体はこんなにも俺のことを求めているのに」
「もう、誰がわたくしをこんな身体にしたと思っているんですの!?」
とかね! もうほんと、辛抱たまりませんわ!
「はぁ、別にかまいませんが……」
突然のお願いに対して、リサ(現実のほう)が少し怪訝な顔をしながらも、きれいな黄金色の紅茶がはいっているカップを持って、さらにこちらに近づいてくる。
「では、失礼いたします」
そう言うと彼女は、ベッドの腰を下ろし、軽く身体を捻るようにしながら、こちらに白い紅茶用のカップを近づけてくる。さわやかな香りが、俺の鼻孔を刺激する。
今目の前にいる美少女が、俺に紅茶を差し出しているという事実と、何よりも、リサが淹れたものだ、ということだけで、なんかもう、かなり幸せだった。
まぁ、それだけで終わらせるつもりはないんですけれども!
リサが、見る者を魅了する笑顔を顔に浮かべたまま、俺の両の目を、そっと左手で覆い隠した。
「お、おい、リサ? 何をしているんだ?」
その予想外の行動に、俺はつい動揺してしまう。
「これですか? これはユート様に紅茶を一層楽しんでいただく為でございます。人間は、視界が奪われると、他の感覚が鋭敏になると申します。なので、こうして目を隠すことで、より一層わたくしの方に集中できるのでは、と思いまして」
リサのその言葉の通り、俺は、かなり敏感にリサの手の感触を味わっていた。リサが、命令した以上のことを自分からしてきたことには少し驚いたが、相手がその気ならいいだろう。ここは思う存分楽しませてもらおう。
俺は、動揺を悟られないように返事をすると、顔面に全神経を集中させていく。リサの手の柔らかい感触、顔を優しく覆い、女の子独特のいい香りが俺の鼻孔をくすぐる。正直、幸せだ。これなら、お茶の味も存分に楽しめるだろう。
まぁ、そこで終わる気はさらさらないが。と、言うか、今のリサの言葉聞いた? こうした方が『わたくしに集中できる』って言ってましたわよ、奥さん?
そう、つまり、向こうもそのつもりだ! いや、これはもう、どう考えてもアレだろ? こっちの感覚を敏感にしといて存分に悦しもうってことだろ? 全く、それならあんなこと言わずに、そうと言ってくれればいいのに。ついにリサにも、俺の日ごろの調教、もとい、教育の成果が現れたと言う訳だ。
「では、ユート様、失礼いたします」
そんなことを考えていると、唐突にと息を吹きかけるようにして、リサに耳元でささやかれた。その妖艶な声に、思わず全身に鳥肌が立ってしまう。
俺は、身体全ての感覚神経どころかその他もろもろ色んなものを顔面に集中させる。
ああ、リサの手の熱が、まるで焼けるように感じられる。それになんだか、こう、顔面を伝って液体が流れ落ちていく。これは、もしやリサの、リサの……
淹れてくれたあっつあつの紅茶だ!
「あqwせdrftgyふじこlp;@」
本気で、声にならない悲鳴を上げていた。
「うぎゃぁーーーーーーーー! 目が、目があああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
某大佐よろしく、目を押さえたままベッドの上どころか部屋じゅうを転げ回る。ただ、俺の場合は彼と違って紅茶まみれだ。部屋じゅうがアッという間にグショグショになっていく。
「ユート様、お目覚めの紅茶はいかがで御座いましたか? まぁ? そんなに気に入っていただけましたか? では、少々お待ちくださいませ。今、おかわりを用意して差し上げますので」
俺が転げ回る中、銀髪の悪魔は、ベッド脇にたたずんだまま平然とそんなことを言ってのける。
「いや、言ってない! 言ってないから! そんなこと!!」
やっとの思いで紅茶をぬぐうと、俺は、早速第二波攻撃の準備に取り掛かっているリサに向き直った。
「おま、仮にもご主人さまになんてことすんだよ!」
「いえ、どうやらご主人様が夢の中だけでは飽き足らず、このわたくしの身体を見て発情し、鼻の下をお伸ばしになり、良からぬことをお考えになっている様でしたので、世間の女性の公共の利益のためにも天誅をくだ……いえ、お諫めしておかなければ、と思いまして」
紅茶の熱と怒りのせいで顔を真っ赤にしている俺に対して、リサはサラッとそんなことを言ってのける。
「いま天誅って言いかけたよね!」
「いえ、そのようなことは御座いません」
「あーもう。おかしいと思ったんだよ。いつもはもっと、こう、丁寧ドSのリサが素直に言うことを聞いてくれるなんて!」
「そんな、ドSだなんて滅相も御座いませんですわ。日ごろ厳しくしているのは、ユート様のことを思えばこそ、なのです!」
ビショビショのままの俺に対して、台車の上の物をいじる手を休めることなく、リサは追い打ちをかけてくる。
「あーもう! 取りあえずその次の紅茶を淹れる手を止めろ!」
そんな彼女の様子を見た俺は、第二撃が来る前にリサの手を止めるべく、彼女に近づいて行く。
「いや、汚い!」
だが、そんな俺を見た彼女は、まるでゴ○ブリにでも出会ったかのように、悲鳴を上げた。
「おい! 人を汚物扱いするんじゃねぇ!」
「あ、申し訳ありません。咄嗟のことだったので、つい本音が出てしまいました」
「それ謝ってないよね!」
ほんと、俺はここらで切れてもいいと思うのよね?
「ふふ。分かりました。ユート様をからかって悦に入るのはここまでにしておきます」
なんか、すっごいさわやかな笑顔で言われた。だが、たぶんここでこれ以上なんか言うのは逆効果だろう。本気でこの身を滅ぼされかねない。
「おーもう。分かった分かった。降参こうさん。それで、なんでこんなことしたんだ?」
俺は、一旦怒りを治めて、彼女に今回の行動の理由を聞いてみることにする。いくらリサでも、理由もなく俺を嬲っている訳ではない。たいていの場合、きちんとした理由がある。しかも、ほとんどの場合、彼女の主張が正しい。若干、いや、かなり行き過ぎの部分もあるが。
「ですから、おっしゃったではありませんか? ご主人様が良からぬことを考えておいでのようでしたので、今後は一切そのような不埒な考えを抱かないように、女性に対する恐怖心をその身に刻み込んで差し上げるためだと」
訂正、理由なんかどうでもよくなるぐらい行き過ぎだった。
「妄想がそんなに悪いことなの!」
「ええ、それはもう。確か、この国の憲法でも、妄想をした者は、いかなる事情があれ極刑に処す、と定められていたはずですが?」
「いや、逆! 何、その一瞬のうちに男どもを全員死刑に出来るような憲法! 逆だから。頭の中にある限りはどんなこと考えても大丈夫って規定だから!」
「そうで御座いましたか。ですが、残念ながらユート様はトラさんとお馬さんの刑でございます。ユート様は、その、お考えがお顔に出ていらっしゃいました。ですので、他の方々にその残念な姿を見られる前に、わたくしが調教を、と思いまして」
「そーかい。それはわざわざご親切にどうも」
なんだろう、全然納得いかないのに、何となく納得してしまう。確かに、変な妄想してた自分が悪かったかもしれない。けど、なんだろう。この胸のモヤモヤは。
まだ納得いかなかったが、これ以上何か言うと、本気でトラウマを刷り込まれそうだったので、俺はそこでリサとの会話をやめて、濡れた服を着替えに掛かった。
「あ、ユート様」
そんな俺に、リサが何かを言いたげに声を掛けてきた。
「なんだよ、まさか今更俺の着替えを見るのが恥ずかしい、とか言わないだろ? 今まで何回も見てるんだから」
「いえ、そうではなくてですね、用意したお湯がまだだいぶ余っていますので、お茶のおかわりを、と思いまして」
「は?」
そう言う彼女の手には、明らかにこっちに向かって中身をぶちまけるつもりの体勢で、カップが収まっていた。
はい。朝から地獄を見ましたとも。
アドバイスや感想などもらえたら、泣いて喜びます。