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打ち切り  作者: BALU-R
第二部 寿賀 亜理抄
13/16

寿賀 亜理抄

「お待たせしました探偵さん。」

峰は人気のない倉庫の裏で綾と待ち合わせしていた。

「先日はすみません。一緒にいけなくて。」

一緒にいけなかった理由は分かっている。

「でも、何でこんなところで待ち合わせを?喫茶店とかでよかったのでは?」

人には聞かせたくない内容だ。

「それで分かったんですか?姉が殺された理由は」

「その前に聞いても良いですか?」

「はい」

「お前は誰だ」

綾は唐突な質問に面食らっていた。

「誰って……初音綾ですよ。初音未来の妹の」

「確認しなかった僕がうかつでした。遠藤警部補に聞いたら僕のことを綾さんに紹介した覚えはないって」

「それは……私の勘違いかもしれません。あっ亀刑事だったかもしれません。ほら、あの二人いつも一緒にいるから混同しちゃって」

「死人にくちなしですか……遠藤警部補に会えば全て分かる事ですよ?」

「そんな……姉さんを殺されて悲しんでいるのに疑うなんてひどいわ……」

綾は泣き出した。

このまま失踪するつもりなのかもしれない。

しかし、峰にはこの偽者の綾を逃がすわけにはいかない理由があった。

峰は追求を続ける。

「以前、お姉さんに池に突き飛ばされたって言っていましたね」

「……」

「通っていた小学校で聞いてきました。確かに池に落ちる事故はありましたよ。教師達は突き飛ばされたんじゃないって否定していましたが」

「……」

「でも、落ちたのは初音綾さんではありませんでした。」

「……」

「貴女ですよ、綾さんのふりをした貴女」

「……」

「雪枝瑠々さん」

沈黙が流れた。

やがて綾……いや瑠々は笑い出した。

「フフフ、ハハハ!まさか、偽者である事だけじゃなく正体まで見破られるなんて……しかも殺人鬼じゃなくて正攻法の探偵の方に!」

「運が良かっただけですよ」

「そうね……でも、全てのミステリーに言えることじゃない?探偵は運を呼び込む!」

峰は身構えていた。

人に聞かせたくなかったとはいえ、人気のないところに真犯人と二人っきりなのだから。

瑠々はその様子を眺めて可笑しそうに言った。

「何を警戒しているの?私は人殺しなんかした事もない人畜無害よ。」

「…どうだか。それに他人には殺人をさせている。」

「本人の願望に後押ししているだけよ。まぁ、やり方は決めさせてもらっているけどね。で、どうするの?」

「えっ?」

突然の質問に峰は驚いて答えられなかった。

瑠々は続けて聞いた。

「探偵は雪枝瑠々を見つけました。めでたしめでたしちゃんちゃん。って現実はいかないわね。見つけてどうするつもり?催眠殺人を立証?無理よ、証拠がないもの。自供?それも無理。実際の取調べや裁判になったら全力で否定するわよ。」

「僕は警察じゃない……」

「探偵だったわね。探偵は真実を暴いて満足ってとこ?」

「違う……」

頭が重い。

何だこれ?

しかし、峰は喋り続けた。

「僕は止めたかった……お前を……先生を……ただそれだけ……」

「ふぅん、説得ってわけ?じゃあ、あたしは改心しないから失敗ね。」

峰は甘かった。

いや、最初に亜理抄を追い詰めただけで解決させたのがいけなかったのかもしれない。

しかし、現実には追い詰めただけで犯人が観念するとは限らないのだ。

峰は崩れ落ちる。

「ようやく効いてきたみたいね……」

グルグルめまいがする。

瑠々がポケットから何かを取り出した。

何かの薬品のようだ。

「相手が催眠術師だからって挙動だけ注意してればいいわけじゃないのよ探偵さん?」

瑠々は薬品をしまい、別のポケットをまさぐる。

今度はメスが出てきた。

意識が朦朧とした峰には見えなかったが恍惚の表情で瑠々は言った。

「初めて会ったときから思っていたの……探偵さんの肌はなんて綺麗なのかしら!切り裂いたらどんな表情を見せてくれるのかしら!あたしのはじめてを探偵さんに捧げるわ。これ本当」

殺される……

消え入る意識の中、それだけがこだました。

「その綺麗な顔は傷つけないから安心して……殺させて!」

その時足音がした。

「!」

瑠々が足音の方に目を向けた。

そして呟いた。

「亜理抄……」

(先生?)

顔もあげられない峰は亜理抄を確認する事ができなかった。

亜理抄は峰にも聞けるように大きな声で言った。

「私より先に瑠々にたどりつけておめでとう。この勝負、本来なら私の負けだけど…」

深呼吸をして亜理抄は続けて言った。

「詰めが甘い。だから私に美味しいところを持っていかれる。次からは気をつける事ね。」

(先生がこの場に現れたのは……先生の目的は……)

瑠々との心中。

峰の意識は落ちていった。

ただ、亜理抄を止められなかった悔しい思いだけを胸に……


峰が次に目を覚ましたのは病院であった。

意識はしばらく戻らなく記憶も混乱していたが看護師の献身もあってすぐに回復した。

そんな中慌しく駆け込んでくる足音がした。

「ふじおちゃん!」

遠藤警部補であった。

峰は何となく予想していた。

看護師さんの制止を無視して遠藤警部補は叫ぶ。

「大丈夫ですか?一体、何があったんですか?」

「えぇと何から話したものか……」

峰も聞きたいことがあった。

自分が意識を無くした後のことを。

気が付いたら自分は病院にいた。

恐らく自分の周りには……

「綾さんは殺されているし!」

(……えっ?)

殺されているのは予想できた。

でも、誰が殺されていたかって?

「全身を切り刻まれているし!顔だけは何故か無事でしたが」

「ちょっと待ってください?綾さん?」

「そう、リストカッター事件、最初の被害者の妹さんですよ!何度も泣きつかれたのでよく覚えています!」

あの綾は瑠々がなりすましていたはずだ。

遠藤警部補が知っているのは本物の綾の顔。

だったら殺されたのはどっちだ。

峰は言った。

「……写真ありますか?」

「ええ、解剖前に取った顔写真なら。」

見せてもらう。

そこに写っているのは綾のふりをして峰に近づいてきた瑠々であった。

しかし、遠藤警部補はこれが本物の綾だと言う。

つまり、彼女は綾のふりをした瑠々のふりをした綾であったとい事だ。

「催眠術か……」

「えっ何ですか?」

「それよりも近くに先生……寿賀亜理抄はいましたか?」

「えっ、やっぱりあいつの犯行なんですか?そういえば体をズタズタに切り裂かれたパンダニャンが置かれていましたね」

惨劇は終わらない。

亜理抄が瑠々と心中するその日まで。

峰が亜理抄を止めるその日まで。



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