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よびちしき[ノアザ視点]

これ以降、ノアザとテオの視点が交互に入れ替わりながらひとつの話を追っていきます。


 ロシュミットさんのお屋敷でお世話になってから3日めの朝、レビンソンさんの魔力が全回復し、わたしたちはその日の午前中にバルタザルの王都テレジアにある王宮の魔方陣へ転移した。


 3日間の短い滞在期間だったけれど。


 わたしにとっては、忘れられない時間になる。


 ロシュミットご夫妻ともによくしてくれ、夫人にいたっては別れのとき、涙を流されていた。


 また必ず遊びにうかがうと、かたく約束し、わたしもこっそり泣いてしまう。


 あのかたたちが、わたしの本当の家族だったらどんなにいいか。


 わたしに血のつながりのある親戚たちはみな冷たく、伯母にいたっては別れてからなんの連絡もない。


 こちらから一度、手紙を出したのだけれど、宛先人不明で戻ってきたから、多分伯母もあそこから引っ越してしまったのだろう。


 血のつながりなんて、しょせんこんなもの。


 それに、いまわたしには、テオがいる。

 彼がいれば、ほかにはなにもいらない。




 お屋敷でお世話になっているあいだ、ブラナーさんやテオ、ロシュミット夫人などにバルタザルのことを色々きくことができた。


 ウルスラでは、自分たちの国のことは勉強しても、隣国のことまではくわしく習うことはない。

 テキストには、“バルタザルは大陸一の先進国で、ウルスラとは同盟に近い友好関係にある”と書かれている程度。


 軍事国家で他国との戦争は無敗。

 王族に対し、貴族たちがクーデターを起こしたこともあったというけれど、よくは知らない。


 知りたくもない。


 とにかく、わたしのなかではバルタザルの印象は“戦の国”なのだ。争い事がきらいなわたしが無意識に情報を遮断していたというところもある。


 けれど、今回。

 王宮に行くことになって。


 無知でいるわけにもいかず、必要最低限のことは教えてもらうことにした。


 いま、早急に覚えなくてはならないのは、バルタザルの王族について。


 現国王アウグスティンが即位したのは16年前。わたしが生まれる1年前のことだ。


 国王と王妃のあいだに子どもは3人。

 うえから、王女エルフリーデ21歳、王子ギーゼルベルト18歳、王子フェリックス13歳で、王子2人に王位継承権がある。


 バルタザルの王族は代々身体的、精神的な能力が高い者が多く、統治力にもすぐれ、まさに国を統べるにふさわしい血統といえた。


 けれど、いつの世もそれをよしとしない人間もいるわけで。


 他国から攻められなくなったかわりに、ここ数十年は国内で大小さまざまな紛争が起こっている。


 アウグスティン国王に代替わりしてからずいぶんとおさまってきたとはいう。

 それでも、まだまだ平和になったとはいえない。


 ロシュミットさんのお屋敷はバルタザル国内とはいえ、ウルスラとの国境沿いにあるため、あらっぽいことなどほとんど起こりはしないというけれど。


 このような状況のなか、渦中である王宮へと向かうのだ。


 不安と恐れ。


 テオがまもってくれると言ったとはいえ、彼自身に召還命令が出たのだから、果たさなければならない使命があるはず。


 自分でなんとかできることは、なんとかするしかない。


 覚悟をきめよう。




 テオが国王に謁見しているあいだ、わたしは控えの間で待つことになった。


 予定外の存在なのだから仕方がない。


 テオは、いっしょにいくかと誘ってくれたけれど、そこは自分の立場はわきまえているつもりだ。


 バルタザルの国王がわたしのようなよそ者(しかも平民)に会ってくださるなど、あろうことがない。

 わたしを勝手に同行させたテオの心証をこれ以上悪くするつもりはなかった。


 この控えの間の出入り口の外では、近衛騎士が2人立っている。


 多分、わたしがなにかしないか監視しているのだろう。


 身内のふりをした暗殺者とも限らない。警戒して当然だ。


 ブラナーさんもレビンソンさんもテオとともに謁見しているはず。


 わかってはいたけれど、部外者はやはり辛い。

 テオの仕事が済んで、早く森の家に帰りたい。



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