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【間】決行前夜

入れるかどうか迷ったのですが…


 機は熟した。


 明日、やっと積年の恨みがはらせる。




 自分が養子であることは、小さい頃からずっと言われ続けてきた。


 養父からは「この戦争が終われば本当の家族とまた一緒に暮らせる」と聞かされていたし、私もまたそれを願っていた。


 だから、余計に信じられなかった。


 父が、処刑されるなど。



 その日私はいつものように屋敷で家庭教師から勉強を教わっていた。


 本来ならロースクールへ通う年齢だったが、長く続く戦争のせいで休校になっているため、やむを得なかった。


 街のあちこちで、国王の騎士団と教会の聖騎士団とが小さな衝突をしているため、外に出るのも命懸けだ。


 しかし、この戦争もようやく終わりが見えてきた。


 教会側の統率がだんだんとれなくなってきたのだ。


 争いを続けようとする者と、やめようとする者とがぶつかり、内部崩壊の様相を呈してきた。


 それを知った私は素直に喜んだ。


 なぜなら、戦争が終わるから。

 戦争が終われば本当の父や母とともに暮らすことができるのだ。


 まさか、自分の父がこの戦争を仕掛けた張本人だったとは…


 そして、国側の騎士によって捕らえられ、裁判もおこなわれずに処刑されることになろうとは…


 事実を知ったとき、私は目の前が真っ暗になった。



 大勢の見物のひとでごった返すなか、私は絶望に支配された体で立ちつくしていた。


 はるか前方にこのためだけに設えた舞台が見える。


 ここは王都テレジア。国王の住まう城を中心に栄えた街の広場。


 特設処刑台―――


 反逆者の末路を国民に見せしめるために急きょ建造された。


 国に、国王にたてついた者はこうなるということ。


 特に今回は、国と教会どちらにも甚大な被害をもたらした戦犯の処刑ということで。

 こうやって公開することになったのだ。


 処刑台から少し離れた場所には、国王以下各騎士団の団長と功績のある騎士たち、上位の爵位をもつ貴族たちなどが、特別にあつらえた観覧席に座っていた。


 私は、そちらを暗い眼でじっと見つめる。


 そこには、鉄紺騎士団の鎧に身を固めた王太子アウグスティンの姿もあった。


 この戦争では、王太子率いる鉄紺騎士団の活躍がめざましかった。

 なかには仲間内から英雄視される者も出たらしい。


 私と繋いでいる養父の手に力がこもる。


 養父は父との関係が発覚しないようにわざと国側についた。

 死んでいるはずのオストワルドの息子が生きていて貴族に養われているということを知られては、わざわざ私を逃がした意味がなくなってしまう。


 養父は無念でならないのだ。

 彼は、教会側…つまり父が勝利することを信じていた。


「よく目に焼き付けておけ。この悔しさはいずれ、おまえがはらすのだ」


 私は養父の顔を見上げ、心に誓った。


 必ず、父の仇をとる。


 やがて、父が自ら首に縄をかけ。

 ややあって


 だん


 という大きな音とともに、父の足元の床が抜け、彼の体が宙に浮く。


 ラザラス・オストワルドは、50歳の生涯を縊頸(いっけい)により幕を閉じた。




 聖職者であり、敬虔なリューディガー教の信者でもあった父がなぜ戦争などという愚行に出たのか、大人になったいまでもわからない。


 父のことを理解するほど長い時間、私は彼の近くにいられなかったから。


 最後まで一緒にいたかった。

 逃がしてほしくなどなかった。


 そのやりきれない思いを胸に。


 憎きあの男を葬り去る。


 あの男の大切なものを襲い、あいつが表へ出てきたところを仕留めるのだ。


 チャンスは一度だけ。



まだまだ彼の気持ちが書ききれてないです。

完結したら、加筆するかもしれません。


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