表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/28

渇望[テオ視点]

乱暴な言い回しがあります。

ご注意ください。

 ノアザはたった3日間で、ロシュミット辺境伯夫妻の心をがっちりと掴んでしまったようだ。


 夫人のほうはともかく、辺境伯のほうは古狸でなかなかのくわせ者。いつもなら初対面の相手を受け入れたりすることなどない。


 だが、この古狸はノアザのことをたいそう気に入ったようで、自分の娘たちが着た高価なドレスまで彼女にやろうと言い出した。


 …気にくわない。


 2人きりのときに、なにを企んでいると詰め寄ったが、はぐらかされてしまった。

 狸曰く、“彼女は庇護欲をそそる”と。


 確かに、それには激しく同意する。


 ノアザに接すると、おれがまもってやらなければ的な感情がなぜか起こる。

 おれ限定かと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。


 壮年の近衛騎士団長であるブラナーも、口にこそ出さないでいるが、ノアザを見る目付きが明らかに親が子に対するそれで。


 恋愛感情が入っていないだけまだましかとおれは諦めのため息をつくのだ。


 この屋敷に着いた日の翌日、暗い黄緑色のドレスを着てノアザが部屋に入ってきたとき、おれは完全に油断していた。

 自分の理性を過信していたのだ。


 まさか、他人の家で真っ昼間から、しかも使用人たちが廊下をうろうろしている時間に、女に欲情するとは思わなかった。

 女、というか、あれは少女だな。いま、冷静になってみると。


 しかし、そのときのおれは、目の前に現れた美姫を自分のものにしようとすることしか考えていなかった。


 もちろん、性的な意味で。


 美姫の正体がノアザだということは、見た瞬間気がついた。

 手は出さない約束をしている、まだ15歳の少女…


 わかっていた。でも、止められなかった。


 おれは今年で40になる。

 昔から、恋愛にはあまり興味がなかったし、そういう行為も淡白なほうだった(だから森で隠居生活をおくれていたのだ)。

 相手から求められることはあっても、自分から欲することは一度たりともなかった―――のだが。


 ノアザは、おれをおかしくする。


 ノアザがおれの好みのタイプだからというわけではない。


 蜂蜜色の髪と深い青の瞳は、ノアザの叔母でありおれの妻だったリズと同じもので、二人に血の関係があることがわかる。

 しかし、おれはリズには友情以外感じたことはないのだ。


 体つきも、ノアザは全体的に細く、成長期や未成年だからというより栄養不足による発育不全といったところで。


 おれには、少女嗜好の趣味はない。

 ノアザが、あいつが、特別なのだ。


 充分に気をつけていたつもりだった。

 だが。


 あの姿は反則だろう。


 落ち着いた色みのドレスに、きれいに結われた髪。うっすらと化粧までしていた。

 いつもより大人びてみえたし、そんな格好で部屋まで来たのは、誘っているのかとおれを勘違いさせた。


 ほかの男には、絶対に渡したくない。


 あいつの初めては、おれがもらう。


 結局、ノアザの抵抗により、なんとかあやまちをおかさずに済んだわけだが。


 ノアザはおれが欲しくないのだろうか。

 おれは欲しくて欲しくてたまらない。


 ここがやはり男と女、または成人男性と少女の見解の相違だろうか。


 まあ、いずれは。


 それまでのお楽しみ、ってことで。




 辺境伯の屋敷の庭から王宮地下にある魔方陣へ移動し、おれたちは国王に会うことになった。


 ノアザを除いて。


 おれはいっしょに会うように強く言ったが、あいつから


「わたしは部外者だから」


 遠慮がちに言われ。


 そんなつもりで連れてきたわけじゃない。


 おれにとっては部外者どころか最重要人物だ。

 それこそ、国王なんか比じゃないくらい。


 さっさと謁見終わらせて、ノアザを迎えに行くぜ。



書いていたら長くなったので2つに分けました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ