神
頭の痛みがする。
どうやらまだ生きてはいるみたいだ。
「やっと起きましたか」
俺を殴り飛ばした張本人が見下しながらそう言った。
「起きましたかじゃねぇよ死ぬわ!」
そう言った俺の言葉を無視して冬花はこういった。
「伊織様はどこですか」
その言葉は冷たく、返答次第では殺すという殺気が体を凍りつかせた。
「今のあなたの身体に伊織様はいません
よって私はあなたを殺せます」
正直に答えなければ殺される。
そう思った。
「い......伊織はじ、地獄に......」
恐怖で震えながらもそう答えた。
「地獄......ですか......もうあなたには用はありません」
手を上に振り上げ、ナイフを取り出した。
そのナイフを俺の目の前に突き出し。
「このナイフで今から殺してあげます」
そう言った。
逃げない......そう本能が語るが恐怖で動けそうもなかった。
「死になさい」
殺された。
そう思ったがナイフが触れる寸前で止まっていた。
「何するの!?」
まるで自分の内側が抵抗するように冬花は苦しんでいる。
今のうちなら逃げられる。
そう思った瞬間に身体は簡単に動いてくれた。
「逃がさない......今がチャンスなんだから」
あの男が逃げる時にそう言い放つ。
聞こえているかはどうでもいい。
今あの男を殺さなければ2度とチャンスはないかもしれない。
【殺す......なんて駄目】
身体の奥底で眠らせたはずのあの子が起きている。
どうしてこう運が悪いのかしら
「うるさい......私はあいつを殺さなきゃいけないの」
【どうして?
どうして殺さなきゃいけないのか教えてよ!】
「あなたには......関係の無いことよ」
【教えてくれないならずっと抵抗する】
本当にあともう少しだったのに......どうしてこう運が悪いのかしら。
走って逃げる。
出来るだけ遠くへ逃げたいという思いで必死に走る。
助けを求め用にも里の人間は全員冬花にやられ、眠っている。
「くそっ」
伊織に助けてもらいたいけど無理だ。
「助けるか」
でもどうやって。
行って助けられなければ2度と帰って来れない。
「そもそも地獄にどうやって行く?」
『地獄に行きたいの?』
「そうだよ
どうにかして助け出さないと行けない奴がいる」
『なら連れてってあげよっか?』
「それはありがたい......ん?」
声の主を探すと。
『やっと気づいたか!
お久しぶり!
寂しかった?』
神が目の前にいた。
色々な出来事で忘れていたが俺にはまだ神がいるじゃないか!
「地獄に行けるって言ったよな?
どうやって行くんだ?」
『それはあの装置を使ってね』
そう言う神に頼もしさを感じ、清花の所へ向かった。