男との勝負1
着替え終えて学校に行き、授業を受け、帰って寝るまで薫は何もしてこなかった
そんな普通なら当たり前の生活が何十日も続く
薫もようやくわかってくれたようで今は普通の友達だ
「もうすぐ6月の終わりか」
6月30日......
俺とあの男が戦う日だ
「勝てますか?」
「聞かなくてもわかるだろ」
勝てるはずがないんだ
俺では100%勝てない
「それでも湊には勝ってほしい」
「兄じゃなくて俺に勝ってほしいか?」
これも催眠の効果か?
それとも友達だからか?
「......そう」
何かを考えた後にそう答えた
「でも俺は勝てない
勝てる要素がどこにもない」
そう言うと「でも」っと言いたそうな顔をする
しかし言葉はない
「......さて」
俺は言う
「どうせ勝てないんだ
最後まで戦ってやるさ」
少し薫が明るくなったような気がした
「俺は寝る
そろそろ別れの挨拶も考えないといけないしな」
「......そうだね」
今にも消えそうな弱々しい声
俺はその言葉が聞こえなかった
6月29日
この日俺のお別れ会があった
「短い間お世話になりました」
頭を下げる
ここにくるのも最後になるだろう
そう思うと何だが悲しいな
その後は日常と同じ
授業を受けて、帰るだけだ
とうとう6月30日がやってきた
『本当に大丈夫?』
(大丈夫だ
ばれないようにわざと負ければいいんだし)
『そんな単純に事が進めばいいけど......』
薫に連れられ着いた場所は森
丸くなっている木のない場所で戦うようだ
「逃げずによくきたな」
俺はそんな言葉を無視して辺りを見回す
このえがいた
『話しかけなくていいの?』
(別に話す事なんてない)
このえと最後になるだろう会話をしないまま勝負が始まる
「行くぞ」
そう言うと素早い動きでこちらにくる
俺は反応できないまま腹を殴られた
「......っ!」
息が少しの間だ出来なくなる
だがここで負けたら疑われる
「まだ立ち上がれるか」
そう言い俺のあらゆる場所を殴る
殴り殴り殴りつける
身体中が痛くて立てない
「これで終わりだ」
もう終わりか......
そうあきらめた
攻撃が来ない、俺は前を見た
......このえが俺の前に立っていた
「これいじょうご主人様を傷つけるのは私が許しません!」