生徒会長
いつも通り短めですが、そこはスルーで……
「……ふぁー……。面倒かけさせやがって……ったく」
「お前は本当に……速いな……」
榛原は十秒もしないうちに地に伏した。なんかもう、桁が違う。
「つーかこいつ本当にキリアとやりあったりしたの?」
「ん? ああ、昔は俺も未熟だったからな……。それなりに、だ。さてと……おいお前ら。もういいぞ」
「了解ッス。またいつでも呼んで下さい」
「ああ」
手を挙げてキリア隊を見送る。
「……俺らも、戻るか」
「そうだな……明日からまた学校だし」
「ミソラー!」
教室でトイレへ向かおうとした俺は北崎に呼び止められた。
「あー?」
「新しい生徒会長が決まったって知ってる?」
「あー……なんとなくは知っていたな」
「そう? その新生徒会長挨拶が今日の五時間目にあるんだってさ」
「なるほどなぁ……」
ここで黄鶯学園の少し変わった制度について説明しておこう。
生徒会だが、この前キリアが吹っ飛ばした書記、それと会計、副会長はそれぞれ男女一名ずつ、生徒の投票で決まる。
残る生徒会長だが、こいつに関してはちょっと特殊で、先生による投票となる。
つまり生徒会長は真に優秀な生徒が得られる称号。性格はどうであれ。去年なんかはとてつもなく根暗だった。……まあ、それでも行事は盛り上がったが。
そして、ここ、黄鶯学園での生徒会長になるということは、強力な権力を得ると同時に、全生徒の責任を負わなくてはならなくなる。それだけに、大学入試などでは『黄鶯学園の生徒会長』というだけでかなり有利になったりする。
「面倒くせぇー」
「まあしょうがないよ。気力でなんとかして行こうか」
「あれ、セイラは?」
「ん? なんか隣のクラスに……緋華李かな」
「ふぅん……」
なんの用があるのかは知らないがまあ、放っておこう。
で、昼休み。
「よし、とりあえず午前は乗り切った……」
「午後に挨拶だけどな」
「そうなんだよなー……。どうでもいいだろー生徒会長挨拶なんて」
俺の前に座る北崎がそれに答える。
「でもさ、本当にここ、いろいろ特別だよね」
「だな。倍率なんて良く俺たちが入れたなって感じだし」
「でもミソラとキリアは小学からここでしょ?」
「ああ。なんかの間違いで受かっちった」
「そうすると実力は本物か……」
北崎がなにか勘違いをしている。
「お、おい。別に小学から入っているからって凄いわけでもないぞ? 他にも何人かいるし」
「ふぅん……。あ、早めに食べないと体育館に移動する時間がなくなっちゃうよ」
「マジか。おいキリア。さっさと食べちゃえ!」
「うるせぇ」
「セイラも早く食べよー」
「……んー」
その後食べるのが遅い獣人二人をなんとか食べさせ、急いで体育館へと向かう。
「……っ着いたっ!」
「……ふぁ」
ちなみに体力が有り余っている獣人は平気で欠伸なんかかましたりする。
「なんとか……間に合ったかなっ!」
「……座らなきゃ」
「あれ?」
「ん? どうしたのミソラ」
「いや……椎名がいないな……って」
「おお。そういえば……まだ食べてるとか?」
「ええー……」
とりあえず不安は残るが指定の場所につく。程なくしてステージより前会長のアナウンスが流れた。
「……これより新生徒会長の新任挨拶を行います。新生徒会長。お願いします……」
相変わらずの暗い声色。だが、俺にはそんなことがどうでもいいほど、目の前の状況が理解できなかった。
「あ、あれ!」
「まさか……」
「……凄い」
「はじめまして今日は。新生徒会長の『椎名 緋華李』よ!」