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応対方法って人それぞれだと思います

 で、まあ昨日身体中痛めて帰った時には九時近くになっていたんだけれども。

 ともあれ、今日が本番だ。


「うっしゃー気合い入れてけー!」

 どの場面においてもハイテンションな北崎はやっぱり本番でもハイテンションだった。


調理班もいよいよ準備に追われていて。

まあホールも忙しいんだけども。


「身体が痛ぇ……。もうやだこんなの」

「何リーダーがへこたれてんだよ」

「誰のせいだ!」

 予定では後三十分でこの黄鶯学園文化祭が始まるわけだ。

「三日間だろ? やってらんねぇな……」

「そう言うなって。代わりに二日目は働かなくて済むから」

 黄鶯学園文化祭では、被るような店の分散をするために、三日ある文化祭の内、一日は休みとなる。その休みが二日目なのだ。

「そうは言ってもな……」

「何かあるのか?」

「寝れないじゃん」

「結局それか! ホント寝るの好きだな!」

 それじゃただのサボリだろう。

「ほらほら二人とも! もう始まるよ!」

 北崎にたしなめられ、おとなしく着替えを始める。



「……と。こんな感じかな?」

 ウェイターの制服なんて着たことないんだがな……。ってバイト禁止だからみんなそうか。影でやってるならともかく。

「おー似合ってるじゃない。少なくとも予想以上だわ」

 北崎が着替えた俺を評価する。

「やっほーミソラとライカ」

「あ、椎名」

「おーひかりん復活か! 風邪は大丈夫か!」

 現れたのは椎名だった。

「あれ? 椎名は班とかないのか?」

「私生徒会長よ生徒会長。他の仕事で一杯よ」

「あーそうか。文化祭を動かさないとだしな」

「ミソラはホールなのね。変な格好」

「さらりと言うな!」

「うるせぇぞお前ら」

 そこへキリアが着替えてくる。

「おぉ……かっけー」

 北崎がそんなことを言う。

 キリアはもともと足が長いのでこういう格好はよく似合うのだろう。

「全体的に締まってる。うむ、キリアを選んで正解だったぜ!」

「うるせぇ。ったく……こんな目立つようなの着るもんじゃねぇぜ……」

「ミソラ、隠れなさい」

 椎名が突然そんなことを言い出した。

「え? 何で?」

「後悔するのは自分よ……」

「悪かったなホールで! そして俺が自ら入った訳じゃねぇ!」

「んーむ……セイラ遅いなぁー……。寝てんのかな」

 北崎は一人思案顔。

「いやそんなキリアじゃないんだし」

「どういう意味だ」

「……待たせた」

 丁度のタイミングで鳴神が戻ってくる。

「お、おかえりー。遅かったね」

「……装飾の最終調整をやってた」

「なるほどね。うむ。セイラもよく似合ってる。やはり私の目に狂いはなかった!」

「……余り着たこと無い」

 北崎がそう言いながら後ろを見たりしている。大方誰かに着付けてもらったのだろう。

「随分大きなリボンねー。重くない?」

「……余り気にならない」

 北崎の頭に黒い大きなリボンが付けられ、服装は上下黒、どちらかというとウェイトレスというよりはゴシック系の服だ。というか女子みんなそうだ。

「こんなんどこにあったんだ……」

「へっへー! 私が買った! 親に経費といって出してもらったけど」

「そこまでする事かよ……」

「だってー。ウェイターが黒だから合うのってこれじゃない?」

「纏めたかったと」

「そゆ事♪ はいみんな! もう間もなく来るんだから気ぃ引き締めな! 頑張っていこう!」

 北崎の号令と共に、開催の花火が鳴った。……流石に緊張するんですが。



 新たなお客さんが現れる。俺は極めて冷静に、営業スマイルとかいうやつで応対する。

「いらっしゃいませ。二名様でよろしいですか?」

「あ、はい」

「畏まりました。ではお席の方へご案内致します」

 そう言ってお客さんを空いている席へ案内する。……自分でもびっくりするぐらい丁寧な言葉だ。

 案内が一段落し、他のメンバーを見てみる。

 まずキリア。

「何人だ」

「えっと……三人です……」

 いらっしゃいませ飛ばした!? アンタどういう立場だよ!

「そうか。……席に案内する」

「はぁ……」

 最早接客とは言えない。ていうかあの人達先輩じゃないか!? 思いっ切りタメ口かよ!

 キリアの態度に戦慄しながら、今度は北崎の対応を見てみる。

「……いらっしゃいませ。二名?」

「いや、一人後で来るから三人だ」

「……そう。こっち」

 そう言ってお客さんを連れて空いている席に案内していた。

 ……こっちもこっちで最悪だ……。

 何なんだこいつらは。敬語を知らないのか。

 ここで既にやる気をなくす俺だが、呼び鈴がなったので慌てて向かった。

「お待たせしました。ご注文はお決まりですか?」

「あ、このチョコレートパフェを二つとブレンドコーヒーを二つで」

「畏まりました。ご注文の確認をさせて頂きます。チョコレートパフェを二つとブレンドコーヒーを二つ。以上でよろしいでしょうか?」

「大丈夫です」

「畏まりました。少々お待ち下さい」

 ……自分で言うのもなんだが、結構練習通り出来てる気がする。

 注文を調理班に持って行く。

 ……さて、問題なのはやっぱり……。

 キリアを見る。

「注文は決まったか?」

「あ、えーと特性サンドイッチを一つと、コーヒーを二つにアイスティーを一つ……」

「それでいいか?」

「え? あ、はい」

「そうか。……少し待ってろ」

 ダメだ。もう接客がどうこうじゃない。

 鳴神はここまで行かないような気もするけど……。

「……注文は?」

「おう。とりあえずアイスティーを二つだけくれ」

「……ん」

「ところでさ、君名前なんて言うの?」

 あ、なんかナンパされてる! 予想はしてたけど結局そうなるんだ!

 さあ鳴神はどう返すのだろうか……。なんか気になってきたぞ……。

「……鳴神清羅」

「清羅ちゃんねぇ……。彼氏とかいるの?」

「……いない。でも好きな人ならいる」

 え? それ初耳ですよ? そしてそれを見ず知らずの人に言っちゃう?

「ふぅーん……名前は?」

 言われた鳴神は辺りを見回し……俺と目が合った。

 しかしすぐに外し、お客さんに向き直る。いや、ナンパ野郎か。

「……言えない」

「てことはクラスメイトか……。まあいいや。じゃ注文頼んだよ」

「……ん」

 なんか普通に会話してたな……。まあいいのか。

「……おーいミソラー! これ四番テーブルに持ってってー!」

「あ、おう」

 北崎に呼ばれ、調理班の作った料理を運んでいく。



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